日本の都道府県名の由来:意外なルーツを探る
私たちが日常的に使っている「都道府県名」。その名前には、地形、歴史、伝承、文化などが深く関わっています。中には意外なルーツや、知られざる語源を持つ県名も少なくありません。本記事では、全47都道府県それぞれの名前の由来を、地方別にわかりやすくご紹介します。
都道府県名はどうやって生まれた?
江戸時代以前の「国名」からの継承
日本にはもともと「大和国」や「出雲国」など、古代から使われてきた「国名」が存在していました。明治時代の初期まで、行政区画として国名が使われていたのです。これらの名称は現在でも歴史的呼称として神社名や地名に多く残っています。
明治時代の廃藩置県と命名ルール
明治4年(1871年)、廃藩置県が行われ、日本全国の藩が廃止され「県」となりました。その際、県名は旧国名を参考にしつつ、新たに命名されたものもあります。「東京府」「大阪府」「京都府」などは当時の主要都市で、府として位置づけられました。
「道・府・県」の違いと意味
「都」は首都である東京にしか使われません。「府」はかつての中心都市である大阪と京都に、「道」は北海道のみに使われています。「県」はそれ以外の45地域に用いられており、現在の日本の行政区分の基本形です。
北海道地方
北海道
「北の海にある道(みち)」という意味。明治時代、探検家・松浦武四郎が「日高見道」「海北道」などの案から「北海道」を提案し採用された。アイヌ語由来の地名が多く、「カイ」は「カイナ(大地)」説もある。
東北地方
青森県
もともとこの地にあった「青い森」(松などの深い緑)の地形を由来とする説が有力。海から見える森の色が語源とも。
岩手県
古くからある伝説「鬼の手形」に由来。神社に鬼が岩に手形を残したという話があり、「岩の手」→「岩手」になった。
宮城県
「宮」は伊達政宗が築いた仙台城(別名:青葉城)に由来し、「城=宮」として「宮のある土地」という意味で名付けられた。
秋田県
「アキ」は「開けた土地(耕地)」を意味し、「タ」は「田んぼ」。つまり「開けた田」の意味から秋田とされた。
山形県
「山が多い形の土地」が語源という説がある。江戸時代以前から「山形郷」と呼ばれていた。
福島県
「福島城」に由来。「福」は吉兆、「島」は地形上の“浮島”のような場所を指すとされる。
関東地方
茨城県
古くは「いばらの木が多く生えていた土地」が語源とされる。読みは「いばらき」が正しく、濁らないのが特徴。
栃木県
地名「栃木郷」に由来。「トチ」はトチノキから来ているとされる。神名「トチギノカミ」が語源との説も。
群馬県
もともと「車郷(くるまごう)」と呼ばれていた土地が、「くるま」→「ぐんま」へ転訛したという説が有力。
埼玉県
古くは「埼玉郡」と呼ばれており、「さきたま」は「先(栄えた)霊(たま)」の意味を持つとの説がある。
千葉県
「千の葉」が語源とされるが、実際には地名「千葉郷」から取られた。千葉氏の拠点だった地域でもある。
東京都
かつての「江戸」が「東京(東の京)」となり、1943年に「東京都」として独立。都の称号は戦後も維持された。
神奈川県
「かんな川(神奈川)」という地名から。古くは「神の名に通じる川」として神聖視されていたとも。
中部地方
新潟県
かつての港町「新潟湊(にいがたみなと)」に由来。「潟」は砂州でできた入り江の意味で、新しい水路ができた場所という意味を持つ。
富山県
「豊かな山」に由来する説が有力。漢字は「富山」と書かれるが、古くは「布屋間」などさまざまな表記が存在した。
石川県
加賀国の「石川郡」に由来。そこを流れる石川という川の名前がもとになっている。
福井県
福井城の城下町に由来。「井」は井戸を意味し、「福の湧く井戸」という意味合いで名付けられたとされる。
山梨県
「山」は地形、「梨」は古語で“流れ”や“川”を指す。「山と川の土地」という意味との説がある。
長野県
「長野」はもともと善光寺周辺の地名。そこが県庁所在地となったため、県名として採用された。
岐阜県
織田信長が「岐山(中国の名山)」と「曲阜(孔子の故郷)」を合わせて命名したとされる。理想の政治を目指した意図が込められている。
静岡県
「静岡」は駿府城の別名「静岡城」に由来。明治初期に静岡藩が置かれた際に使われた地名。
愛知県
「愛知郡(あいちぐん)」に由来。古くは「阿伊知」「相知」とも書かれ、愛知川流域の地名が語源。
近畿地方
三重県
伊勢国の三つの郡(安濃・飯野・三重)を合わせた地域名に由来。「三つの重なり」とする説も。
滋賀県
近江国の地名「滋賀郡」に由来。古くは「志賀」とも表記され、「水が豊かな地」の意味を持つ。
京都府
「京の都」を意味する。「京都」は平安京に由来し、明治まで日本の首都機能を持っていた歴史的中心地。
大阪府
もともと「大坂」と表記されていたが、「坂」が「士が反(さか)らう」ことを連想させるため、明治初期に「大阪」と表記を改めた。
兵庫県
兵庫津(港)の名が由来。兵器などを貯蔵した「兵(つわもの)の倉」が語源ともされる。
奈良県
「平らな地=ならし地」が語源とされる。大和朝廷の中心地として、日本の歴史の原点ともいえる場所。
和歌山県
「和歌の浦」に由来。万葉集にも詠まれた景勝地で、自然と調和する美しさが名前に込められている。
中国地方
鳥取県
古代、鳥を捕る職業の人々が住んでいた「鳥取部(ととりべ)」に由来するとされる。
島根県
「島根郡」に由来し、「根」は“陸地・大地”の意。出雲神話の「国引き神話」にも登場する地名。
岡山県
「岡(おか)」は小高い丘を意味し、「山」はその周辺地形を含む。岡山城下にちなむ地名。
広島県
「広い島」または「広くて平らな土地」という意味。毛利氏の築いた広島城に由来する。
山口県
「山の入り口」に由来。古くは「山道の口」とされ、中国地方の要衝にあたる場所。
四国地方
徳島県
「徳のある島」ではなく、「徳島城下」に由来。阿波国の中心地であったことから。
香川県
古代の地名「香川郡」に由来。「香り立つ川」ではなく、川の名前そのものとされる。
愛媛県
「日本書紀」に登場する女神「愛比売(えひめ)」が語源とされる、美称的地名。
高知県
「高知城」に由来。もともと「河中(こうち)」と書かれていたが、後に「高知」へ転化した。
九州・沖縄地方
福岡県
黒田長政が故郷の備前国福岡(現在の岡山県)から命名。福を呼ぶ「福」の意味も込められている。
佐賀県
「嵯峨(さが)」から転じたとする説があり、地形的には「砂が多い地」に由来するとも。
長崎県
「長い岬(さき)」が語源。地形的特徴がそのまま県名となった。
熊本県
熊本城に由来。「熊」は霊獣、「本」は中心地・拠点の意味。「熊が住む地の本拠地」とも解釈される。
大分県
「大きく分かれた土地」が語源との説があり、「おおいた(多くの田)」とする説も併存。
宮崎県
「神々の坐す場所」とされる神話の地・日向国の中心。「宮のある崎(岬)」ともされる。
鹿児島県
火山島・桜島の古名「鹿児島(かごしま)」に由来。「鹿の群れる島」という意味合いとの説も。
沖縄県
「沖=海の遠く」「縄=漁の網」に由来し、「海の彼方の漁場」という意味合いもある。古称「ウチナー」。
まとめ
都道府県名には、それぞれの土地の自然・歴史・文化・人の営みが色濃く反映されています。中には漢字の印象と実際の意味が異なるものや、言い伝えと行政上の命名とが絡み合っているケースもあり、単なる地名ではなく“土地の記憶”をたどる手がかりとなるものです。知っているようで知らない県名のルーツ。あなたの出身地には、どんな由来があるでしょうか?