「水道水が飲める国」はどれくらいある?日本のインフラ教養

一般教養の話

「水道水が飲める国」はどれくらいある?日本のインフラ教養

世界の中で「蛇口から水が飲める国」は少数派

実は全体のわずか10〜15%ほどしかない

蛇口をひねって、そのまま水を飲む。日本ではごく当たり前の行動ですが、これは実は世界的に見るとかなり珍しいことです。世界保健機関(WHO)などの調査によると、国民全体が水道水を直接飲めるとされる国は、全体の10〜15%程度しか存在しないと言われています。

飲料水として安全とされる水を「ポータブルウォーター(potable water)」と呼びますが、この基準を満たす水道水を安定して供給できている国は限られているのが現実です。つまり、世界の大多数の国では、蛇口から出てくる水をそのまま飲むことは推奨されていないのです。

国名で見るとどこ?ヨーロッパ・アジアの意外な顔ぶれ

では、どの国が「水道水が飲める国」なのでしょうか?代表的な国を地域別に見てみましょう。

ヨーロッパでは、ドイツ、スイス、スウェーデン、オーストリア、イギリス、フランス(都市部のみ)などが該当します。特に北欧諸国は水質が高く評価されています。

アジアでは、日本とシンガポールが突出しており、韓国や台湾の一部地域でも飲用可能とされる場所があります。ただし、一般にはあまり推奨されていないことが多く、煮沸やミネラルウォーターの使用が推奨されるケースも多いです。

オセアニアではオーストラリアとニュージーランドが水道水飲用可能な国に含まれます。

一方で、アメリカカナダも地域によって水質に差があり、「飲める」とされながらも現地の人が念のためフィルターやボトル水を使用している例も多く、事情は一様ではありません。

日本の水道水はなぜそのまま飲めるのか?

世界でもトップレベルの浄水基準

日本の水道水が安全でおいしい理由のひとつが、「水道法」による厳しい水質基準です。日本の水道水は51項目もの厳しい水質基準に合格しなければならず、これはWHOの基準をも上回るレベルです。

加えて、塩素による消毒が義務づけられており、蛇口に届くまでの間も雑菌が繁殖しにくくなっています。この塩素消毒の習慣は、逆にヨーロッパの一部では「味が悪くなる」として嫌われる傾向もありますが、日本では「安全性」が最優先とされています。

実は地域差もある?日本国内でも「おいしさ」に差がある理由

「日本の水道水は飲める」とはいっても、味に関しては地域差があります。その差の大きな理由は「水の硬度(カルシウムやマグネシウムの含有量)」と「水源の違い」にあります。

たとえば、北海道や関西の一部では「軟水」でまろやかな味わいが楽しめる一方、関東の都市部ではやや「中硬水」寄りで、少しクセを感じる人もいます。また、地下水を使っている地域と、河川水を主に浄水している地域でも風味に違いが出るのです。

余談ですが、「東京の水はまずい」と言われていた時代がありました。これは高度成長期に水質汚染が進んだためで、現在では浄水技術の向上により改善されています。

外国の水道水はなぜ飲めないの?

発展途上国だけじゃない?先進国にもある「飲用不可」の理由

「水道水=飲めない」というイメージは、発展途上国の衛生環境の問題と思われがちですが、実はそう単純ではありません。先進国でも「水は飲まないほうがいい」とされる国は存在します。

例えばイタリアやスペインなどでは、水道のインフラが整っていても、配管の古さや地域差の影響により、住民はミネラルウォーターを日常的に使用しています。フランスでも、パリなどの都市部では飲用可とされていますが、地方に行くと注意が必要なことも。

また、現地の人は体が慣れていても、旅行者にとっては水に含まれる微生物や成分でお腹を壊すケースもあります。つまり、「その国の水道水が飲めるかどうか」は、技術的な問題だけでなく、習慣や体の耐性も関係しているのです。

パイプの古さ・水源の違い・殺菌文化など背景はさまざま

水道インフラが整っていても、水が通る「配管」が老朽化していたり、鉛やサビの問題があると、安全性は一気に下がります。また、水源が地下水か河川かによっても必要な浄水処理が変わります。

さらに、国によっては「消毒剤(塩素など)を加える文化がない」こともあります。ヨーロッパの一部では、「自然な水の味を大事にしたい」「必要以上に薬品を入れたくない」という意識が強く、日本のように強めの消毒処理がされていない場合もあるのです。

旅行で役立つ!水道水にまつわる豆知識

うっかり飲んだらどうなる?現地での対処法

旅行先でつい「いつものクセ」で水道水を飲んでしまうこと、ありますよね。たいていの場合、軽い腹痛や下痢で済みますが、地域によっては細菌性の胃腸炎になることも。

もし飲んでしまったら、まずは安静にして水分補給をしながら様子を見ましょう。整腸剤や下痢止めを持っておくと安心です。ひどい場合は、現地の医療機関を利用することになりますが、「飲んでしまった水道水」が原因と分かっていれば診断もスムーズになります。

「氷・生野菜・歯みがき用水」も意外なリスク

水道水を直接飲まなくても、油断できないのが「氷」と「生野菜」。氷はそのまま水道水で作られていることが多く、ジュースやカクテルに入っている氷が原因でお腹を壊すケースも。

また、サラダなどの生野菜も洗浄に水道水を使っている可能性があり、旅行中は加熱されたものを選ぶのが無難です。歯みがきのときのすすぎ水ですら注意が必要な国もあるため、ミネラルウォーターでのうがいを勧めるガイドブックも少なくありません。

日本の「水道水の味」はどこが一番おいしい?

名水の里vs都市部、味の決め手は「硬度」

「水道水が飲める」と言っても、その味は全国でさまざまです。水の味を左右する要因のひとつが「硬度(ミネラル分の量)」です。硬度が低い水は「軟水」と呼ばれ、まろやかで口当たりがよく、緑茶や和食にもよく合います。

たとえば、富山や長野の山間部、熊本などは豊富な地下水に恵まれ、「名水のまち」として知られています。逆に、東京や大阪などの都市部では河川水を多く使っているため、浄水処理の影響でややクセを感じる人もいます(とはいえ、安全性にはまったく問題ありません)。

水道水のおいしさランキングに出る地域とは

実は、全国の自治体の中には「おいしい水道水」を売りにしているところもあります。たとえば熊本市は、ほぼ100%地下水由来の水道水を使用しており、そのおいしさは高く評価されています。

また、「利き水コンテスト」や「水道水の試飲イベント」なども開催されており、水道水がひとつの地域PRになる時代です。「水道水に硬水・軟水の違いがある」ということ自体、日本人でもあまり知らない豆知識かもしれません。

まとめ:水道の話は身近な国際比較ネタになる

「水が飲める国」に行ったことがある人は少ない

海外旅行に行くと、「水道水を飲んでいいのか?」というのは地味に大事な問題です。実際、世界中を見渡しても「安全に水が飲める国」に行った経験がある人の方が珍しいかもしれません。

だからこそ、日本の水道事情はちょっとした雑談ネタにもなります。「自分の国では水道水をそのまま飲める」と話すと、驚かれることも多いのです。

飲めるだけじゃない、「どんな味か」も面白い視点

「飲めるかどうか」だけでなく、「水道水の味」まで比べてみると、さらに面白くなります。現地での水の味、食文化との相性、水ボトルの普及率など、視点を変えれば身近な水道にも無限の雑学が詰まっています。

知っていそうで知らない「水道水」の話。ちょっとした旅の前や豆知識として、覚えておくと便利なうえに話のネタにもなりますよ。