海外のユニークな食事マナー集
はじめに:そのマナー、世界では通じません
食事マナーは“文化の縮図”
テーブルマナーは単なるルールではありません。その国の歴史、宗教観、社会関係を色濃く反映した“文化の縮図”とも言える存在です。だからこそ、海外旅行や国際交流の際にうっかり“やってしまう”ことも多いのがこの分野。
日本の常識が通じない場面とは?
たとえば「音を立てない」「手を挙げて店員を呼ぶ」「きれいに食べきる」など、日本では当たり前とされるマナーが、世界の別の場所では真逆の意味を持つこともあります。本記事では、そんな“驚きのマナー”を国別にまとめてご紹介します。
インド・中東:右手・左手に絶対ルールあり
左手は不浄。食事は右手が基本
インドや中東諸国では、左手は“不浄”とされる文化的背景があり、食事や握手には基本的に右手を使います。左手で食べ物を取るのは非常に失礼にあたるため、注意が必要です。
手で食べるのはマナー、スプーンが無礼?
インドでは「右手で食べること」が礼儀であり、手を使うことは食材への感謝や五感を使った食の敬意とされます。スプーンやフォークを使う方がかえって形式的と見なされることも。
中国・韓国:音を立てるのは失礼?正解?
中国ではゲップも“満足の印”になることが
中国の一部地域では、ゲップは「満足した」「料理が美味しかった」というサインとしてポジティブに受け取られることがあります。ただし、都市部ではマナーとして控える人も増えています。
韓国では目上の人の前で飲むときに横を向く
韓国では、目上の人の前でお酒を飲む際に体を少しそらして飲むのが礼儀です。また、箸とスプーンを同時に持つのはマナー違反とされ、器を手に持ち上げるのもNG。
タイ・フィリピン:箸よりスプーン&フォーク
タイ料理は“スプーンで食べる”のが正解
タイでは、箸ではなくスプーンが主役。フォークは食材をスプーンに乗せる補助的な役割です。麺類以外で箸を使うのは、むしろ外国人観光客に多い誤解です。
フィリピンでは“手食”とカトラリーが共存
フィリピンでは、手で食べる“カマイ(kamay)”文化が根づいていますが、フォークとスプーンの組み合わせも広く使われています。手食の際は手を洗う「洗面ボウル」が用意されることも。
フランス・イタリア:パンとチーズにもマナーあり
パンは皿ではなく“テーブルに直接”が普通?
フランスでは、パンは専用のパン皿を使わず、テーブルクロスの上に直接置くのが普通です。また、バゲットはちぎって食べるのがマナーで、ナイフで切るのは少し無粋とされることも。
チーズにナイフを刺してはいけない理由
イタリアやフランスでは、チーズをカットするときにナイフを垂直に突き刺すのは無礼とされます。これは「攻撃的な行為」に見えるためで、側面から優しく切るのが正しい所作です。
アメリカ・カナダ:レストランでの“気配りマナー”
店員に手を挙げて呼ぶのはNG?
アメリカやカナダのレストランでは、店員に対して手を挙げて呼ぶのは失礼とされることがあります。基本的に店員が来るのを待つのがマナーで、必要な場合はアイコンタクトや軽いジェスチャーで呼びます。
チップ文化と“空気を読む”習慣
チップの支払いは義務ではありませんが、暗黙のマナーとして定着しています。良いサービスを受けたら15〜20%が相場で、出さないと「非常識」と見なされることも。
ドイツ・オーストリア:ナイフとフォークに厳格
“フォークは左、ナイフは右”が基本形
ドイツやオーストリアでは、ナイフとフォークの持ち方に厳格なルールがあります。基本は“コンチネンタルスタイル”で、切った後も持ち替えずにそのまま食べます。
パンを割る音すら礼儀に関係する?
音を立てない、カトラリーを乱暴に置かない、など“静かに食べる”ことも美徳の一つ。パンを割るときの音さえ気を使う場面もあります。
ロシア・ポーランド:乾杯文化の重み
乾杯の際には“全員と目を合わせる”
ロシアやポーランドでは、乾杯(ナズドローヴィエ)の際に全員としっかり目を合わせることがマナーです。視線をそらすと「誠意がない」と捉えられることも。
乾杯後に飲まないのは侮辱になることも
乾杯のあとにグラスに口をつけずに置くのは非常に失礼とされます。乾杯=合意の印であり、形だけの“カチン”はNGという考えです。
メキシコ・ブラジル:陽気でも“順序”は大事
メキシコでは“手づかみ”が正式な場もある
メキシコの伝統料理「タコス」などは手で食べるのが正式なスタイル。ナイフとフォークを使う方が形式ばっているとされることもあります。
ブラジルの“食べる順番”と一口目の作法
ブラジルでは、年長者や主催者が最初に食べ始めるまで手をつけないのがマナー。勝手に食べ始めるのは礼儀を欠く行為とされるため、周囲の様子をよく見る必要があります。
アフリカ諸国:分かち合うことがマナー
手で取る位置や順番に“敬意”が込められる
アフリカの一部地域では、1つの大皿から手で食べる文化があります。このとき、自分の手前から取るのが礼儀で、中央や他人の側に手を伸ばすのは無作法とされます。
客人は“最も良い部位”を与えられる文化
おもてなし文化が強く、来客には“魚の頭”や“肉の一番柔らかい部分”など、最上の部位を提供するのが習慣となっている地域もあります。
北欧・オセアニア:形式よりも“静けさ”や“分配”
北欧では“静かに食べる”ことが美徳
フィンランドやスウェーデンでは、食事中の会話は控えめが基本。賑やかに喋るよりも“食べることを楽しむ静寂”が重視される傾向があります。
ニュージーランドでは“シェア文化”が基本
家族や仲間内で料理を持ち寄る「ポットラック」が一般的。お皿に料理を分け合いながら楽しむスタイルが主流で、取り分け方や順番に配慮が求められます。
まとめ:マナーは“正解”ではなく“習慣”
その土地の“当たり前”を尊重する心
世界の食事マナーは、驚くほど多様で、時に日本の感覚とは真逆です。しかし、それぞれのマナーには文化的な背景や相手への配慮が込められています。
違いを知ることが、最高のマナーになる
国際的な場で大切なのは、“正しい作法”ではなく“違いを知ろうとする姿勢”。その土地のルールに敬意を払うことが、もっとも重要なマナーなのかもしれません。