「カフェを開く夢」には何が必要?—保健所と消防と税務のリアル

雑学・教養

「カフェを開く夢」には何が必要?—保健所と消防と税務のリアル

  1. 1. カフェ開業は「物件契約」より先にやることがある
    1. ・いきなり契約すると“通らない物件”を掴むリスク
    2. ・保健所・消防・用途地域の確認をまず行う
  2. 2. 飲食店営業許可を取るにはどうすればいい?
    1. ・2槽シンク/手洗い場/冷蔵設備などの基本設備
    2. ・平面図・給排水・衛生動線など審査の視点を知る
  3. 3. 消防署への確認:火器使用・内装工事は要注意
    1. ・ガス台・コンロを使うなら“防火管理”の対象に
    2. ・避難経路・消火器の設置・天井素材の制限など
  4. 4. 税務署への開業届出も忘れずに
    1. ・開業届と青色申告承認申請のタイミング
    2. ・屋号をつける場合の注意点と帳簿管理の基本
  5. 5. 工事・内装の前に「保健所へ図面を持ち込む」
    1. ・完成後にダメと言われる前に「事前相談」を
    2. ・【例】手洗いシンクの数が足りず再工事になったケース
  6. 6. 食品衛生責任者の講習を受ける
    1. ・資格がないと営業許可は出ない
    2. ・調理師・栄養士などがあれば講習は不要
  7. 7. 現地検査でよくあるチェックポイント
    1. ・排水の処理/衛生的な壁材/トイレの配置
    2. ・【例】ゴミ置場の場所で指摘を受けた事例
  8. 8. 看板・外装・近隣トラブルの意外な盲点
    1. ・屋外広告物条例に違反すると撤去命令も
    2. ・住居密集地での営業時間・騒音対策の配慮
  9. 9. カフェ開業にかかる費用の目安(東京都の場合)
    1. ・内装費/設備/申請費用/運転資金の基本ライン
    2. ・【試算】400円のコーヒーで元を取るには?
  10. 10. 好きな空間を実現するには「制度の理解」が近道
    1. ・法律を守ることは“自由に続ける”ための準備
    2. ・準備ができた人だけが「好きな店」を続けられる

1. カフェ開業は「物件契約」より先にやることがある

・いきなり契約すると“通らない物件”を掴むリスク

「空き店舗を見つけたから、すぐ契約して工事しよう」と思った人が、後から保健所や消防署に「この物件では営業許可が出せません」と言われるケースは少なくありません。
カフェはれっきとした「飲食店営業」に該当し、構造設備が法律で定められているため、**物件選びの前に制度を調べることが重要**です。

・保健所・消防・用途地域の確認をまず行う

営業を行うには、以下の3点を最低限チェックしておく必要があります:

– 保健所の営業許可が取れるか(設備構造)
– 消防法上の条件を満たすか(火気・通路)
– 用途地域として「飲食店可」か(都市計画上の制限)

2. 飲食店営業許可を取るにはどうすればいい?

・2槽シンク/手洗い場/冷蔵設備などの基本設備

飲食店営業許可を取るには、以下の設備が整っている必要があります:

– 2槽シンク(洗浄とすすぎ用)
– 手洗い専用シンク
– 冷蔵庫/冷凍庫(温度計付き)
– 防虫・防鼠対策済の窓や出入口
– 床や壁は水洗い可能な素材であること

・平面図・給排水・衛生動線など審査の視点を知る

「調理場とトイレが同じ動線になっていないか」「床材が吸水性でないか」など、保健所の視点は“衛生”がすべて。
店舗レイアウトを考える際には、**事前に保健所に図面を持ち込み、相談するのがベストです**。

3. 消防署への確認:火器使用・内装工事は要注意

・ガス台・コンロを使うなら“防火管理”の対象に

ガスコンロや電気調理器を使う場合、消防署への届け出が必要になります。
面積や席数によっては「防火管理者の選任」「火災報知器や誘導灯の設置」が求められるケースもあります。

・避難経路・消火器の設置・天井素材の制限など

– 消火器の設置(原則1台以上)
– 誘導灯の設置(10人以上の客席がある場合)
– 不燃材の内装材(天井・壁など)

とくに改装時に木材などを使っておしゃれに仕上げたい場合は、「不燃材でない」と指導が入る可能性があります。

4. 税務署への開業届出も忘れずに

・開業届と青色申告承認申請のタイミング

カフェを開業する場合は、開業日から1か月以内に税務署へ「個人事業の開業届出書」を提出します。
同時に「青色申告承認申請書」も出しておくと、後の税務処理で特典が受けられます。

・屋号をつける場合の注意点と帳簿管理の基本

開業届には「屋号」も記載可能です。これがそのまま領収書や契約書に使われることになるため、慎重に決めておきましょう。
また、開業後は**帳簿の保存義務が発生する**ため、収支の記録はきちんと管理する必要があります。

5. 工事・内装の前に「保健所へ図面を持ち込む」

・完成後にダメと言われる前に「事前相談」を

「工事がすべて終わってから保健所に見せたら、シンクの数が足りず再工事になった」…これは実際によくある話です。
図面や設計段階で一度保健所へ相談し、問題がないかチェックしてもらうことを強くおすすめします。

・【例】手洗いシンクの数が足りず再工事になったケース

客席側の手洗いをスタッフも使う設計にしていたところ、**「調理用と共用は不可」**とされ、シンクを1つ追加工事する羽目に。
小さなスペースでも、独立した手洗い設備が求められるのです。

6. 食品衛生責任者の講習を受ける

・資格がないと営業許可は出ない

カフェの開業には、店舗に最低1人「食品衛生責任者」が必要です。
資格がない場合は、1日講習(約6時間)を受けて修了証を取得します。

・調理師・栄養士などがあれば講習は不要

すでに調理師や管理栄養士の資格を持っている場合は、講習を受けなくても代替可能です。
証明書を提出すれば、そのまま「責任者」として登録できます。

7. 現地検査でよくあるチェックポイント

・排水の処理/衛生的な壁材/トイレの配置

保健所による立入検査では以下の点がチェックされます:

– シンクの数や位置
– 冷蔵庫の温度管理ができるか
– ゴミ置場が衛生的に管理されているか
– 調理場とトイレが明確に区分されているか

・【例】ゴミ置場の場所で指摘を受けた事例

調理場のすぐ外に設置したゴミ箱が「不衛生でニオイが流入する」と指摘され、**ゴミ収集エリアを再設計する必要に迫られた**例もあります。

8. 看板・外装・近隣トラブルの意外な盲点

・屋外広告物条例に違反すると撤去命令も

東京都では「屋外広告物条例」に基づき、**看板のサイズ・設置場所・デザイン**にも規制があります。
申請なしに大型看板や電飾を出すと、後に撤去命令が出ることも。

・住居密集地での営業時間・騒音対策の配慮

夜間営業や屋外BGMを流す場合は、近隣住民とのトラブルに配慮する必要があります。
「カフェだから静か」とは限らないため、**開業前に地域との調和も考えておくと安心です。**

9. カフェ開業にかかる費用の目安(東京都の場合)

・内装費/設備/申請費用/運転資金の基本ライン

東京都で10〜15坪ほどのカフェを開業する場合、おおまかな費用は以下のとおりです:

– 物件取得費(敷金・礼金・仲介料):80〜150万円
– 内装工事(厨房設備込み):150〜300万円
– 備品購入(家具・冷蔵庫・食器など):50〜100万円
– 申請費用(営業許可・講習費・消防申請など):2〜5万円
– 開業準備費(広告・試作・印刷物など):10〜30万円
– 運転資金(3か月分の家賃・仕入れなど):50〜100万円

💡**合計目安:350万〜600万円程度**

・【試算】400円のコーヒーで元を取るには?

仮に1杯400円のコーヒーで利益200円だとすると、
初期費用500万円を回収するには **25,000杯以上の販売が必要**。
開業は「勢い」だけでなく「継続できる収支計画」が鍵になります。

10. 好きな空間を実現するには「制度の理解」が近道

・法律を守ることは“自由に続ける”ための準備

制度に沿って開業することは、「面倒な手続き」ではなく、「安心して自由な店を続けるための準備」です。
好きなメニューや空間を安心して提供するためには、**最初に制度を味方につけることが不可欠**です。

・準備ができた人だけが「好きな店」を続けられる

カフェは「好き」を形にできる魅力的な仕事ですが、現実的な壁もたくさんあります。
でも、制度を理解していればそれらの壁は**越えられる準備になる**。
開業を考えているなら、まず一歩、調べることから始めてみてください。