ドロップスの起源と歴史 — 誕生の背景と豆知識まとめ

雑学・教養

ドロップスの起源と歴史 — 誕生の背景と豆知識まとめ

はじめに

懐かしの缶入り飴「ドロップス」ってどんなお菓子?

カラフルな缶を開けると、ころんとした小さな飴がいくつも転がる――そんな風景に、思わず子ども時代の記憶がよみがえる人も多いのではないでしょうか。ドロップスは、いわば「昭和レトロ」を象徴する存在とも言える定番お菓子です。

“飴”じゃないのに“ドロップ”と呼ばれる理由とは

ドロップスは飴に似ていながら、どこか別物のような印象も与えます。名前の響きもどこか洋風で、親しみと異国情緒が混在した不思議な存在。その由来や歴史をひもといてみると、意外な事実が見えてきます。

名前の由来・語源

「drop」=“一滴”が由来?形状から生まれた名前

「ドロップ(drop)」という英語には、“一滴”や“ぽたぽた落ちる”といった意味があります。19世紀の製法では、熱した糖液を一滴ずつ垂らして固めたことから、こう呼ばれるようになりました。今でも「ドロップ型」といえば、丸みを帯びた小さな粒の形を指します。

日本では「ドロップス」と複数形が一般化した理由

英語では単数形「drop」が一般的ですが、日本では缶に複数入っていることや語感の親しみやすさから、「ドロップス(drops)」という呼び名が広まりました。日本独特の“愛称化”による呼称の一例とも言えます。

起源と発祥地

19世紀イギリスの薬用キャンディがルーツ

ドロップスのルーツは19世紀のイギリスにあります。当時は喉の痛みを和らげるための薬用キャンディとして、ハーブやレモンの香料を加えた「ロゼンジ(lozenge)」や「ドロップ」が販売されていました。これがやがて“お菓子”として発展します。

日本では明治期に横浜で製造が始まる

日本で最初にドロップスが製造されたのは、明治時代の横浜。外国人居留地で伝えられた洋菓子文化の中で、砂糖を固めた「洋飴」として登場しました。当時は高級品であり、上流階級向けの贈答用として扱われていたそうです。

広まりと変化の歴史

文明開化とともに「舶来菓子」として普及

明治〜大正期には、文明開化とともにドロップスが全国に広まり、「ハイカラなお菓子」として人気を集めます。特にレモンやミントの香りは、従来の和菓子にない“西洋的爽快感”として新鮮に受け入れられました。

戦中・戦後の配給物資としての役割

第二次世界大戦中や終戦直後には、ドロップスは保存性の高い配給品や慰問物資としても重宝されました。甘味が貴重だった時代に、缶入りで長期保存できるこのお菓子は“心の支え”となった存在でもあります。

地域差・文化的背景

『火垂るの墓』で再注目された“記憶の味”

1988年公開の映画『火垂るの墓』では、主人公の節子がドロップ缶を大事そうに抱える姿が印象的に描かれました。これにより、「ドロップス=戦時の記憶」として日本人の心に再び刻まれることになります。

海外では見かけない?日本独自のドロップ文化

実は“缶入りドロップス”という形態は、海外ではあまり一般的ではありません。日本では「サクマ式ドロップス」などが長年親しまれてきましたが、欧米では飴は袋入りが主流であり、この“缶文化”はかなり日本的な風土の中で育まれたものです。

製法や材料の変遷

砂糖+香料+色素で作る、シンプルな配合

基本的な材料は、砂糖・水飴・香料・着色料。これを高温で溶かして型に流し、冷やし固めるという非常にシンプルな製法で作られます。味はレモン、イチゴ、グレープなど、フルーツ系が定番です。

型落とし成形による“あの丸み”の秘密

ドロップスの丸くてやや平たい独特の形は、“型落とし成形”という手法によるもの。液体状の糖液を型に流し込むことで、自然な丸みが生まれ、手触りにも懐かしさが宿る仕上がりになります。

意外な雑学・豆知識

なぜ缶入り?保存性とノスタルジーの共存

ドロップスが缶に入っている理由は、湿気を防ぎ、持ち運びやすくするため。さらに、缶のデザインや開け閉めの手触りが“記憶の道具”として人々に強く印象を残している点も見逃せません。

「途中でくっつく問題」はなぜ起きる?

保存状態によっては、ドロップ同士がくっついてしまう現象が起きます。これは糖分が空気中の湿気を吸収し、表面がわずかに溶けて再結晶するため。そのため、よく「缶を振ってから開ける」のがドロップ愛好家の間では定番です。

缶の音と“取り出す楽しさ”が重要な要素

ドロップ缶を振ったときに鳴る“カラカラ”という音。実はこれも、味覚とは別の“聴覚的ノスタルジー”を刺激する重要な要素とされます。目で見て、耳で楽しみ、舌で味わう。五感すべてに訴えるお菓子なのです。

国鉄・自衛隊との意外な関係も?

かつて国鉄の売店では「旅のお供に」としてドロップスが販売されていました。また、一部の自衛隊では長期保存可能な携行食として採用された例もあり、ドロップスは“実用菓子”としての側面も持っていました。

ドロップスを使った意外なアレンジ菓子

粉砕したドロップスをクッキーやキャンディアートに活用するレシピも登場しており、透明感あるカラフルな見た目が“映える”お菓子として注目されています。意外にもDIYスイーツ素材としても人気です。

現代における位置づけ

昭和レトロ菓子としての復権とブーム

近年は「昭和レトロ」ブームにより、ドロップスも再び脚光を浴びています。パッケージをあえて昔風にした復刻版や、“あの頃の味”を再現した限定フレーバーも登場し、懐かしさと新しさの共存が評価されています。

ノスタルジーだけじゃない、味と機能の再評価

シンプルな材料で作られるため、子どもでも安心して食べられ、保存性にも優れるドロップスは、災害備蓄や旅行用のおやつとしても再評価されています。昔ながらの姿の中に、現代的な機能性も光るお菓子なのです。

まとめ

ドロップスは“缶に詰まった時代の記憶”

たった一粒でも、世代や時代の記憶を呼び起こす力がある――ドロップスはそんな力を持った、特別な存在です。

その一粒に、歴史と文化と懐かしさが凝縮されている

口に入れると優しい甘さが広がり、缶を振ると懐かしい音が響く。ドロップスは、お菓子という枠を超えた“文化のかけら”として、今も多くの人の心に生き続けています。

 

 

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