お菓子を作って販売したいときに必要な「菓子製造業許可」とは?
1. 自宅で作ったお菓子は売っていいの?
・友達に配るのと、お金を取るのは別問題
「趣味で作ったクッキーをちょっと売ってみたいな」
「知人にマカロンを褒められて、フリマで売ってみようかな」
そんな気持ちが芽生えたこと、ありませんか?
しかし、「人に配る」と「販売する」は、法律上まったく別物です。
お金が絡むと、“食品を提供する責任”が発生します。つまり、趣味の延長であっても、一定のルールを守らなければならないのです。
・「販売」とみなされる行為とは?
お菓子の“販売”とは、たとえば以下のような行為を指します:
– 自作のクッキーをフリマアプリで売る
– ハンドメイドイベントに出店して焼き菓子を売る
– カフェに委託してパウンドケーキを販売してもらう
これらを行うには、「菓子製造業許可」が必要となる可能性があります。
2. 「菓子製造業許可」ってどんな制度?
・食品衛生法に基づく許可制度
菓子製造業許可とは、食品衛生法に基づく営業許可の一種で、「お菓子を製造・包装して販売する」ために必要なものです。
各都道府県の保健所が管轄し、施設や設備が衛生基準を満たしていることが条件となります。
・「製造」と「販売」は分けて考える必要がある
ここで注意したいのが、「その場で提供する」か「持ち帰り用に製造して売る」かで必要な許可が異なる点です。
前者は「飲食店営業許可」、後者は「菓子製造業許可」に該当します。
3. 許可が必要になる具体例と不要なケース
・自宅のキッチンで作って販売するのはNG?
原則、自宅の台所で作ったお菓子を販売するのはNGです。
家庭用キッチンは、構造的に食品衛生法の基準を満たしていないからです。
たとえば、調理中にペットがウロウロしていたら…それだけでアウトです。
・保健所が許可する“営業施設”とは?
許可を得るには、調理スペースが「営業専用」として区切られている必要があります。
シンクや調理台の材質、手洗い設備、照明、防虫防鼠対策など、細かな基準をクリアしなければなりません。
4. 許可を取るための施設要件とは
・自宅を改装する場合の基準
自宅を製造場所として使うには、「営業用キッチン」を新設または改装する必要があります。
たとえば、キッチンをまるごと2つに分けて、私用と業務用を明確にする例もあります。
・調理場と居住スペースを分ける必要性
たとえば、調理場のすぐそばで子どもが遊んでいるような構造では許可は下りません。
営業スペースは、あくまで“衛生管理された仕事場”でなければならないのです。
5. 菓子製造業許可と「飲食店営業許可」の違い
・その場で提供するか、包装して販売するか
「焼きたてのワッフルを店内で出す」→飲食店営業許可
「焼いたワッフルを袋詰めして販売」→菓子製造業許可
このように、目的や販売形式によって取得すべき許可が変わってきます。
・両方必要な業態もある?
カフェで自家製マフィンを提供しつつ、テイクアウト用にも販売する場合などは、両方の許可が必要になることがあります。
6. 申請の流れと必要な手続き
・保健所での相談から始めるのが基本
まずは地域の保健所に相談しましょう。
図面や設備の内容を見ながら、「この施設で許可が下りるか?」を確認するのが最初のステップです。
・必要書類・費用・審査までのスケジュール
提出する書類の一例:
– 営業許可申請書
– 図面(厨房・設備の配置)
– 食品衛生責任者の資格証明
– 水質検査結果(井戸水使用時)
費用は都道府県ごとに異なりますが、おおよそ**1~2万円台**が相場です。
審査から許可までの期間は、2週間〜1か月程度が一般的です。
7. 許可取得後に守らなければいけないこと
・衛生管理計画や記録の義務
2021年から、HACCP(ハサップ)に基づいた衛生管理が義務化されました。
とはいえ、小規模事業者は「簡略化された管理方法」で対応可能です。
たとえば「いつ何を作ったか」「温度管理のチェック」など、日々の記録を残す必要があります。
・年1回の保健所の立入検査も
営業許可を取得したら終わりではなく、年1回程度、保健所の立入検査があります。
衛生状態が悪ければ、営業停止や許可の取消もあり得ます。
8. ネット販売や委託販売のときの注意点
・製造場所の許可があればネット販売も可能?
基本的に、製造場所に菓子製造業許可があれば、ECサイトやハンドメイド販売サイト(BASEやminneなど)を通じて販売することも可能です。
・委託販売・イベント販売の際のルール
カフェや雑貨店などで委託販売する場合も、製造側が許可を持っていなければ違法とされる可能性があります。
また、イベント出店時は、別途「臨時出店届」などが必要になることもあります。
9. 実例で学ぶ:トラブル事例と成功例
・無許可販売でSNSから炎上した例
あるSNSユーザーが、自宅で作った焼き菓子を“ハンドメイド品”として販売したところ、「食品衛生法違反では?」と炎上し、販売中止に追い込まれた事例があります。
悪気がなくても、法律は容赦してくれません。
・自宅の一角を改装して成功した女性のケース
一方で、自宅の納戸をリノベーションして営業許可を取得し、ネット販売で人気となった例も。
地元の保健所と綿密にやりとりし、無理のない範囲で事業をスタートさせたことが成功につながっています。
10. 「ちょっと売りたい」人ほど注意が必要
・趣味とビジネスの境界線を超える瞬間
「ちょっとだけ」「少しのお小遣い稼ぎ」のつもりでも、法律上は「営業」とみなされることがあります。
これはスピード違反と同じで、「気づかずやってた」では済まない世界です。
・最初に制度を知っておくことが自分を守る
お菓子作りをビジネスにするのは、とても素敵な夢です。
その一歩目でつまずかないように、制度やルールを知っておくことは、クリエイター自身を守ることにもつながります。
「おいしい」だけじゃなく、「安心」も届けられるように、しっかり準備して始めましょう。