古物営業法はなぜ作られた?—盗品売買と防犯のための制度とは

雑学・教養

古物営業法はなぜ作られた?—盗品売買と防犯のための制度とは

  1. 1. 「古物」とは何か?まずは用語の理解から
    1. ・法律上の定義と「新品」との違い
    2. ・古物の13分類とは?時計・衣類・自動車など
  2. 2. 古物営業法とはどんな法律?
    1. ・正式名称と制定年(1949年)
    2. ・主な目的は「盗品の流通防止」
  3. 3. 古物営業法が生まれた歴史的背景
    1. ・戦後の混乱期における盗難品横流しの横行
    2. ・高度経済成長と中古市場の広がり
  4. 4. なぜ「警察」が窓口になっているのか?
    1. ・生活安全課が管轄する理由
    2. ・古物市場と防犯との直結性
  5. 5. 古物営業法の主な規制内容
    1. ・許可制度/台帳義務/本人確認など
    2. ・違反した場合の罰則(懲役・罰金)
  6. 6. 古物商の届出が必要になる代表的な取引
    1. ・中古スマホ販売、古着せどり、リサイクル家電など
    2. ・フリマ出品と“営利性”の線引き
  7. 7. 無許可営業が招くリスクと実例
    1. ・うっかり副業が脱法行為になるケース
    2. ・実際の摘発例とペナルティ
  8. 8. フリマアプリと古物営業法のグレーゾーン
    1. ・「不要品処分」と「仕入れ再販」の違い
    2. ・アプリ運営側のスタンスと責任の所在
  9. 9. なぜ“個人”にも義務があるのか
    1. ・副業時代に求められる“最低限の法知識”
    2. ・事業者とみなされる境界はどこにあるか
  10. 10. 古物営業法は“自分を守るため”の制度でもある
    1. ・知らずに関わると損をする理由
    2. ・安心して中古品を売買するための前提知識

1. 「古物」とは何か?まずは用語の理解から

・法律上の定義と「新品」との違い

古物営業法でいう「古物」とは、一度でも使用された物品や、新品でも使用のために取引された物(たとえば開封済みの未使用品など)を指します。
つまり、リサイクルショップやフリマアプリでよく見かける中古商品は、ほぼすべてが「古物」となります。

・古物の13分類とは?時計・衣類・自動車など

この法律では、古物を13のカテゴリに分類しています。代表例としては「衣類」「機械工具」「自動車」「事務機器類」「美術品類」などがあり、かなり幅広い分野がカバーされています。

2. 古物営業法とはどんな法律?

・正式名称と制定年(1949年)

正式には「古物営業法(昭和24年法律第108号)」といい、1949年に施行されました。
比較的古い法律でありながら、現代のネット社会においても重要な役割を担っています。

・主な目的は「盗品の流通防止」

この法律の最大の目的は、盗品や不正入手された物品が市場に流通しないようにすること。
つまり「誰が、いつ、どんな商品を売ったのか」という履歴を明らかにし、犯罪の抑止力とするための制度なのです。

3. 古物営業法が生まれた歴史的背景

・戦後の混乱期における盗難品横流しの横行

この法律が誕生した背景には、戦後の混乱期において盗難品の売買が横行していたという現実があります。
物資が不足し、人々が物を売って生計を立てる中で、盗品も紛れて流通するケースが多発したのです。

・高度経済成長と中古市場の広がり

その後、日本の経済が成長するとともに、中古市場も発展。時計や自転車など、転売目的の盗難事件も増えました。こうした流れから、古物取引の“透明化”が求められ、古物営業法は徐々に強化されていきました。

4. なぜ「警察」が窓口になっているのか?

・生活安全課が管轄する理由

古物営業法に関する手続きは、警察署の「生活安全課」が担当します。
これは、防犯を目的とした制度であるため。実際、古物商は警察に台帳を提出する義務があり、盗難届と照合されることもあります。

・古物市場と防犯との直結性

たとえば、自転車の盗難が発生し、古物商が台帳に購入記録を残していれば、犯人の特定や追跡につながるケースもあります。つまり、古物商は防犯システムの一部なのです。

5. 古物営業法の主な規制内容

・許可制度/台帳義務/本人確認など

古物商には、以下の義務が課されます:

– 営業開始前に「古物商許可」を取得
– 取引内容を台帳(帳簿)に記録
– 相手の本人確認(免許証などの提示)
– 標識の掲示(古物商プレート)

・違反した場合の罰則(懲役・罰金)

これらの義務に違反した場合、「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」という重いペナルティが科されることもあります。

6. 古物商の届出が必要になる代表的な取引

・中古スマホ販売、古着せどり、リサイクル家電など

たとえば以下のような行為が「古物営業」に該当します:

– 古着を安く仕入れてフリマで再販売
– 中古スマホをオークションで買って転売
– 不用品を集めてリサイクルショップを開業

・フリマ出品と“営利性”の線引き

家庭内の不要品を売るのはOKですが、仕入れて売る・継続的に販売しているとなると、営利性ありと判断され、古物商許可が必要です。

7. 無許可営業が招くリスクと実例

・うっかり副業が脱法行為になるケース

「趣味でせどりしてたら月10万くらい稼げるようになった」
→これ、仕入れて再販売している時点で「営業」とみなされ、古物商許可がないと法律違反です。

・実際の摘発例とペナルティ

実例として、中古ゲームソフトを繰り返し転売していた個人が「無許可営業」として書類送検された事案があります。
副業だからといって油断できないのが、古物営業の怖さです。

8. フリマアプリと古物営業法のグレーゾーン

・「不要品処分」と「仕入れ再販」の違い

一見同じように見えるフリマ出品でも、「押入れの片づけ」と「中古仕入れ→利益目的販売」では、法的な意味合いがまったく異なります。

・アプリ運営側のスタンスと責任の所在

メルカリやヤフオクなどのプラットフォームは、出品者が違法行為をしていないかまでは確認しません。
責任は出品者にあり、「知らなかった」では通用しません。

9. なぜ“個人”にも義務があるのか

・副業時代に求められる“最低限の法知識”

今や誰でもネットで物が売れる時代。だからこそ、「これは営業に当たるのか?」を判断できる知識が必要です。

・事業者とみなされる境界はどこにあるか

判断の基準は「営利性」「継続性」「反復性」。たとえば月に数回、仕入れて売っているなら“個人事業者”と見なされる可能性もあります。

10. 古物営業法は“自分を守るため”の制度でもある

・知らずに関わると損をする理由

古物営業法を知らずに副業を始めてしまい、後からトラブルに発展する例は少なくありません。
「届け出ておけば合法だったのに」というケースも多いのです。

・安心して中古品を売買するための前提知識

この法律は「規制」でもあり「安心」のためでもあります。
しっかり理解しておけば、堂々と中古品ビジネスができますし、不要なリスクから自分を守ることにもつながります。