無許可で「占い」や「カウンセリング」はできる?—グレーゾーンの判断
1. 占いは“誰でも始められる仕事”?
・「資格不要」「自由業」として広がる占いビジネス
「占い師」は国家資格がなくても名乗ることができ、店舗を構えずにSNSや通話アプリで活動する人も多くいます。
開業にあたって特別な許認可が不要なため、**個人でも始めやすい自由業の一つ**として知られています。
ただし、この“自由さ”には、**一定のルールと注意点も隠れている**のです。
・SNSやZoomでもサービス提供が当たり前の時代に
インスタやTikTok、占いアプリなどを使って活動する人が増え、形式もメール鑑定・電話相談・ライブ形式など多様化。
「無店舗・匿名・無資格」でもサービス提供できる時代ですが、そのぶん**法律の境界線が曖昧になりやすい**というリスクも生じています。
2. 占い師に“免許”は不要。ただしやり方次第でアウト
・職業選択の自由と「占いに資格はいらない」の真実
日本の法律上、占いそのものを行うことに資格は不要であり、占星術、手相、タロットなどの形式も自由です。
また、開業届も原則任意(※個人事業主として継続的に収入を得る場合は届出推奨)で、一定の自由度が認められています。
・無許可でもOKだが、内容によっては法に触れる
占いが「助言」や「アドバイス」の範囲にとどまる限りは基本的に合法です。
しかし、その内容や金銭の授受、表現方法によっては**詐欺・霊感商法・医師法違反などに該当する可能性がある**ため、注意が必要です。
3. 占いビジネスが“違法”とされる典型パターン
・【例1】開運グッズを数十万円で売りつけた霊感商法
「あなたには不運な運命がついている」「この壺を買えば運気が改善する」といったトークで高額商品を売りつける行為は、
**消費者庁や国民生活センターが繰り返し注意喚起**している典型的な「霊感商法」です。
・【例2】「悪霊が憑いている」と脅して祈祷料を請求
「放っておくと家族に不幸が起きる」「除霊には30万円かかる」などと不安を煽る手法は、
心理的支配を利用した**詐欺まがいの商法**として行政処分や訴訟に発展した事例もあります。
・【例3】返金保証もなく高額鑑定コースを契約させたケース
明確な説明がないまま、長期の高額サービスを契約させ、効果がなかったにも関わらず返金にも応じなかった——こうしたケースでは、
**特定商取引法違反(不実告知・誇大広告など)**に問われる可能性もあります。
4. 消費者庁が処分した実例に学ぶ“やりすぎ”の境界
・「除霊サービス」で数百万円請求し行政指導された事業者
2022年には、占いを装って「霊視」で不安を煽り、開運のためと称して壺や印鑑、祈祷セットなどを**100万円以上で販売した業者が行政指導**を受けました。
このような行為は、「宗教的儀式」を商売に転化し、消費者保護法規に抵触したと判断されました。
・開運グッズと占いサービスを“セット販売”した事例
鑑定と開運グッズを事実上の“抱き合わせ”で売り、キャンセル・返品ができないシステムになっていた場合も、
**景品表示法・特定商取引法・消費者契約法違反**に問われるおそれがあります。
5. 言い方しだいで法律違反になるフレーズとは?
・「あなたは病気です」「この占いで治る」はNG
「癌の可能性がある」「これで鬱は治る」といったフレーズは、**医師法・薬機法違反に該当する恐れ**があります。
無資格者が病名を告げたり、医療効果をうたうことは法律で禁止されています。
・「医師ではありません」「効果を保証しません」と書く工夫
実際の占い師の中には、「私は医師ではありません」「これは助言であり、効果を保証するものではありません」といった**免責文を明記することでトラブルを防止**している例もあります。
6. 医業類似行為との違いと注意点(占い師向け)
・“治す”と言ったら医師法違反になる可能性
「治す」「改善させる」と明言した時点で、医療行為・医業類似行為として法律に抵触するリスクが高くなります。
占いはあくまで“助言”“人生相談”としての位置づけを守る必要があります。
・心理的助言と医療的介入の線引きとは
「気分を前向きにするアドバイス」はOKでも、「うつ病を軽くできます」といった表現はNG。
医療行為を想起させる内容は控えるのが原則です。
7. カウンセリングやセラピーを名乗る場合の注意点
・心理士など国家資格との誤認を避ける工夫
「カウンセラー」「セラピスト」と名乗る場合でも、国家資格(臨床心理士、公認心理師)を持たない場合は、**資格名称と誤認されないように明記**する必要があります。
例:〇〇式カウンセラー(民間資格)/心理学勉強中 など
・「相談業」としての枠を意識することが重要
「話を聞く」「気持ちを整理する手助けをする」といった表現は許容される範囲です。
一方で「心の病気に効く」「トラウマを解消する」などは医療的介入と取られかねません。
8. 店舗営業や深夜営業には届け出が必要な場合も
・占い店舗が風営法の対象になるケース
実店舗で深夜営業・個室・密室・異性接客などがある場合、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」の対象になることがあります。
とくに占いバー、占いスナックなどの形態では、**風俗関連営業の届け出が必要な場合もあります。**
・無届けの深夜営業で摘発された実例も
バー形式の占い店舗が、風営法の営業時間制限を無視して営業を続けていた結果、**摘発された例もあります。**
「占いだから自由」と思い込まず、営業形態によっては**施設・業態に応じた届け出が必要**です。
9. トラブルを避けるために必要な準備とは
・免責事項・キャンセルポリシーの明記
鑑定に対して「効果を保証するものではありません」といった免責事項、
「キャンセルは〇日前まで/返金不可」などの明確なルール設定は、**双方のトラブル防止に有効です。**
・料金体系の明示・高額サービスへの同意確認
– 鑑定料は事前に明記(○分○円など)
– 高額コースを販売する際は契約書・同意書を用意
– 誇大表現・実績の水増しに注意(景品表示法違反)
10. 占い師が“自由”を守るには、ルールを知ること
・自由業でも信用はルールの上に成り立つ
「資格がなくてもできる=何をしてもいい」ではありません。
占いは**人の不安や希望に関わる仕事**だからこそ、ルールを理解することで「安心して相談できる存在」になれます。
・無許可でできる=無制限ではないという理解を
届け出不要・資格不要の自由業であっても、**他人の心・お金に関わるからこそ、責任の重さは軽くありません。**
線引きを知ることは、トラブルを防ぐだけでなく、あなた自身の仕事を守る知識でもあるのです。