デジタルコンテンツ販売に営業許可はいるの?—無形商品の法的扱い
1. デジタルコンテンツって何?どこまでが対象?
・LINEスタンプ/画像素材/PDFテンプレートなどが対象
「デジタルコンテンツ」とは、物理的な形を持たないデータ商品を指します。たとえば以下のようなものがあります:
– LINEスタンプ
– 音楽・効果音素材(MP3, WAVなど)
– 写真素材・イラスト素材(JPEG, PNGなど)
– PDFテンプレートや契約書フォーマット
– 動画講座やeラーニング教材
– noteなどでの有料記事
こうしたものはインターネット経由で販売・配布が可能なため、個人でも簡単に始められる分野として人気です。
・FantiaやCi-enなど「月額閲覧型サービス」も増加中
定額サブスクリプション型で、写真・音声・小説などのデジタル作品を提供するサービス(Fantia、PixivFANBOX、Ci-enなど)も増えています。
これらも広義のデジタルコンテンツ販売に含まれます。
2. 無形商品の販売に「営業許可」は基本不要
・食品営業や古物商のような許可制度は不要
物販ビジネスや飲食店などと異なり、**デジタルデータの販売には、営業許可(飲食業許可や古物商許可など)は不要**です。
「無形」であるため、衛生管理や盗品流通のリスクがないことが主な理由です。
・ダウンロード販売は「通信販売」として扱われる
法律上、こうしたデータ販売は「通信販売」または「役務の提供」に分類されます。
そのため、一定の条件を満たすと**特定商取引法の対象になることがあります。**
3. ただし“届出”や“契約条件”が必要な場合も
・特定商取引法の対象になる条件とは
以下の条件をすべて満たす場合、**特定商取引法による「通信販売業者」の義務**が発生します:
– 販売を反復・継続的に行っている
– 営利目的で販売している
– 不特定多数に向けて販売している
この場合、**販売者の氏名・住所・連絡先の表記**が義務になります(BOOTHなどの一部サービスでは、匿名販売をサポートする仕組みあり)。
・【例】LINEスタンプ販売者は「販売者情報」の開示が必要?
LINEスタンプは基本的にLINE Creators Market経由で販売され、販売者情報はLINE社が管理します。
そのため、個人情報の直接開示義務はありませんが、LINE社と売上契約を結ぶことになるため、**申請時には住所・口座情報などを提出する必要があります。**
4. どんなプラットフォームで売られているの?
・BOOTH/note/BASE/Gumroad/Fantia など
代表的なデジタルコンテンツ販売プラットフォーム:
– **BOOTH**:イラスト・音楽・同人系に強い。匿名販売サポートあり
– **note**:有料記事販売に特化。文章・PDF教材に向く
– **Gumroad**:英語圏向け/動画・音楽・テンプレなどに人気
– **Fantia・PixivFANBOX**:月額ファン型。写真・音声作品などを継続提供
– **DLsite**:成人向け・創作向け作品の販売に特化
・販売方法の違いで義務が変わることも
– 単品販売(PDFテンプレなど)→ 表示義務が明確
– 定額提供(Fantiaなど)→ サービス契約として「利用規約」が重要になる
– 受注型(Skebなど)→ 取引の履行トラブル防止に契約内容が問われる
5. 個人で売るときに必要な「開業届」の話
・【例】PDFテンプレを継続販売して月5万円 → 開業対象になる?
収益が継続しており、ある程度の経費が発生している場合、**税務署に開業届を出すことで「個人事業主」として扱われるようになります。**
たとえば:
– BOOTHでPDFテンプレを定期販売
– noteで月に数本の有料記事投稿
– LINEスタンプで月々継続収入
これらはすべて「事業」としての継続性が認められる可能性があります。
・青色申告や屋号登録のメリット
開業届を出しておくことで、**青色申告特別控除(最大65万円)**を受けたり、屋号名義で銀行口座を開設したりといった利点があります。
6. 著作権とライセンスの考え方
・【例】音楽素材や画像素材の「商用利用OK/NG」の明記
音楽や写真を販売する場合、購入者がどう使ってよいのかを明確にする必要があります。
– 「商用利用可」「加工OK」「SNS利用可」などライセンス範囲を明記
– 許可なく二次販売・再配布された場合の対応方法も決めておくと安心
・販売と「使用許諾」は別物という認識が大事
デジタルデータは「物の販売」ではなく、**著作物の使用許可=ライセンスの販売**であることが多く、著作権自体は販売者に残るケースがほとんどです。
7. 税金の扱いはどうなる?
・売上があれば確定申告が必要(雑所得 or 事業所得)
個人がデジタルコンテンツで収入を得た場合、**所得税の確定申告が必要**になります。
– 副業で少額 → 雑所得扱い
– 専業または事業的規模 → 事業所得扱い
・【例】LINEスタンプ・note売上・Fantia収入などの扱いの違い
– LINEスタンプ:分配金として所得扱い(クリエイターによる)
– note・BOOTHなどの販売:売上そのものが課税対象
– Fantia:月額収入として「継続性」が強く、事業所得に該当しやすい
8. 海外販売との違いとリスク
・SteamやGumroadで海外販売 → VAT(付加価値税)対象に
EU圏では、デジタル商品販売にも**VAT(付加価値税)**が課税されます。GumroadやItch.ioなどでは自動で処理されることもありますが、販売者が申告すべき場合もあります。
・翻訳や文化ギャップによるトラブル事例も
– 不適切な表現が文化的に問題視される
– 使用許諾の解釈が食い違い、二次配布トラブルになる
– 英語での免責・返品対応が求められる
9. よくある誤解と注意点
・「デジタルだから何してもOK」は危険な思い込み
ネット上には「無断転載された」「使用条件を無視された」などのトラブルが絶えません。
– 規約を設ける
– ライセンス文言を明記する
– トレーサビリティのある販売手段を選ぶ
これらの対策で「権利を守る姿勢」を示すことが大切です。
・【例】サブスクで配信した写真が無断転載 → 利用規約の明文化が鍵
Fantiaなどで写真集をサブスク提供していたクリエイターの作品が、無断転載サイトに流出した例があります。
**禁止行為・利用範囲をはっきり示す**ことで、事後対応がしやすくなります。
10. 自由だからこそ、制度を知って安心して売る
・無許可で売れるが、無申告・無対策では危ない
営業許可はいらなくても、**確定申告・販売者表示・著作権管理など、求められる責任はある**ことを理解しておきましょう。
・信用と継続のために、最低限の知識武装を
「個人でも商売ができる時代」だからこそ、制度や法律とのバランスが重要です。
**知っていれば守れる権利、避けられるリスクがあります。**
自由な創作を継続するためにも、制度の知識を味方につけましょう。