手作りアクセサリーにも「素材の表示義務」がある?—PL法と安全性の話

雑学・教養

手作りアクセサリーにも「素材の表示義務」がある?—PL法と安全性の話

1. ハンドメイドでも「販売」となると責任が生まれる?

趣味と商取引の線引き

手作りアクセサリーは「趣味の延長」と見られがちですが、販売を始めた瞬間から商取引のルールが関わってきます。友人にプレゼントする場合とは違い、第三者へ対価と引き換えに提供する行為は「製品の流通」に含まれ、一定の責任が発生します。

商品トラブル時の責任主体とは

販売後に「かぶれた」「壊れてけがをした」といった問題が起きた場合、製作者が責任を問われることがあります。個人であっても、製造者や販売者とみなされると法律の対象になります。

2. PL法(製造物責任法)とは何か

製造者責任のしくみと対象

PL法(製造物責任法)は、製品に欠陥があって損害が生じた場合に、製造者が損害賠償責任を負うと定めた法律です。欠陥には「設計ミス」だけでなく、「注意書きの不足」も含まれます。

個人販売でも適用される可能性

PL法は法人だけでなく、個人が製造・販売した商品にも適用されることがあります。規模にかかわらず、消費者に提供されるモノには一定の安全性が求められるためです。

3. 手作りアクセサリーが対象になる場合とは

素材選定・構造・使い方が問われる場面

手作りアクセサリーに使用される金具や塗料、接着剤などの素材が、肌に触れる際にアレルギーを引き起こす可能性があります。また、強度が不十分な作りで破損しやすい場合も、安全性に問題があると判断されることがあります。

例:金属アレルギーを引き起こしたケース

実際に、ニッケルを含んだメッキ素材で作られたピアスを購入した消費者が、数日後にかぶれの症状を訴えたケースが報告されています。製作者が素材について特に説明していなかったため、販売者に問い合わせや返金請求が発生しました。

4. 海外通販アクセに含まれる有害物質と国内の危機感

カドミウム・鉛などの検出事例(SHEIN・Temuなど)

近年、海外通販サイト(SHEIN、AliExpress、Temuなど)で販売されている低価格アクセサリーから、カドミウムや鉛などの有害金属が基準値を大幅に超えて検出されたとする報告が相次いでいます。たとえば2023年には、国内調査機関が一部商品から高濃度のカドミウムを検出したと発表しました。

ハンドメイド作品でも類似リスクがある理由

個人がハンドメイドアクセサリーを制作する際、インターネットや雑貨店で入手した素材を使用するケースが一般的です。これらのパーツが海外製である場合、含有物質の成分や安全性について明示されていないこともあります。製作者がそれらのリスクを知らずに使ってしまうことで、意図せず有害な素材を使用してしまう可能性があります。見た目に問題がなくても、肌に触れるパーツに重金属が含まれていることもあり、安全性の確認が難しい点が共通しています。

5. 表示義務が発生する場面は?

法律上の義務と自主的対応のちがい

アクセサリーの販売において、すべての素材を法律で表示義務として定めているわけではありません。ただし、安全性に関する注意喚起や使用素材の明記は、PL法の観点から「説明義務」として問われることがあります。

「安全性に関わる部分」は説明が求められる

とくに肌に直接触れる素材(金属・樹脂など)や、アレルギー反応を起こしやすい成分については、「アレルギー対応素材ではありません」などの文言を加えることで、一定の説明責任を果たすことができます。

6. 景品表示法との関係性

過剰な表現や誤解を招く表示は禁止

「絶対に安全」「肌に優しい」「アレルギー対応」などの表現は、裏付けがない場合、景品表示法違反となるおそれがあります。正確な根拠のない効能や効果を記載することは、消費者を誤認させるリスクがあります。

素材や原産国の記載に関する注意点

原産国表示や素材表記についても、誤記や省略が問題になるケースがあります。とくに輸入パーツを使用する場合、原材料の信頼性が不透明になりやすく、結果的に販売者が説明責任を問われることがあります。

7. トラブルになりやすい素材とは?

金属・塗料・接着剤などのリスク

ニッケルやカドミウムを含むメッキ素材、刺激の強い接着剤、人体に有害な塗料などは、アレルギーや健康被害の原因になり得ます。これらは低価格のパーツやノーブランド素材に多く見られ、手軽に手に入るぶん注意が必要です。

実際に発生した消費者クレーム事例

オンライン販売で購入したピアスに「アレルギー対応」と記載があったものの、使用後に耳が腫れたという苦情が寄せられた例があります。販売者が「自分で確認したわけではなかった」と答えたことが問題視され、返品対応と販売中止に至りました。

8. ネット販売やイベント販売での注意点

オンラインでもPL法の適用対象に

インターネット上で販売された商品であっても、PL法や景品表示法の適用対象となります。プラットフォームが個人取引を許可している場合でも、製作者が販売者として責任を負う点は変わりません。

説明文やタグの扱いで評価が分かれるケース

ネットショップやフリマアプリで、「素材:合金」「金属製」などと記載しているケースがありますが、これだけでは購入者にとって十分とは言えません。アレルギーや素材の詳細についてもう一歩踏み込んだ説明があるかどうかで、トラブルのリスクが変わってきます。

9. 表示は義務でなくても「推奨される」理由

購入者との信頼構築としての表示

すべての販売者に素材表示が義務付けられているわけではないものの、素材・使用上の注意・お手入れ方法などの情報を積極的に記載することは、購入者との信頼構築に大きく寄与します。

匿名性が高い取引ほど誤解が生まれやすい

フリマアプリやSNS経由の販売では、購入者との距離が遠くなりやすく、誤解やすれ違いが起こりがちです。素材表示はトラブル予防として有効な手段であり、販売規模に関係なく、一定の配慮が求められる場面が増えています。