電車のつり革、高さや形がバラバラなのはなぜか — 「手が届かない」をなくす鉄道会社の工夫

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満員電車で何気なく手を伸ばす「つり革」。よく見ると、同じ車内でも高さがバラバラだったり、丸い輪っかと三角形のものが混在していたりすることがあります。これは適当に並んでいるわけではなく、それぞれにちゃんとした理由があります。

つり革の高さと形、答えはこの4つ

まずは、この記事で分かることを表にまとめておきます。

なぜ高さがバラバラなのか 身長の低い人から「届かない」という声が多く、高低を交互に配置するようになったから
どのくらい高さが違うのか 会社によって最大約33cmの差がある
丸型と三角形があるのはなぜか 「つかみやすさ」の考え方が会社ごとに違うため
つり革は、いつから電車にあるのか 起源は1870年代のイギリスの馬車鉄道で、日本でも大正時代にはすでに丸型・三角形があった

ここから、それぞれの背景を詳しく見ていきます。

つり革の高さがバラバラなのは、「手が届かない」という声がきっかけ

小柄な人から「つり革に届かない」という声が多かった

つり革の高さは、もともと一定の基準で揺れに対応しやすいよう設計されてきました。ところが、身長の低い利用者からは「手を伸ばしても届かない」という声が以前から寄せられていたといいます。立っているときに何にもつかまれない状態は、揺れたときに転倒の危険にもつながります。

高いつり革と低いつり革を、交互に配置する会社もある

こうした声を受けて、東急電鉄や名古屋市交通局などでは、高さの異なるつり革を交互に配置しています。隣り合うつり革の高さが違うことで、身長に関わらずどちらかには手が届きやすくなる、という工夫です。

電車のつり革につかまる人たちのイラスト

会社によって、つり革の高さは最大33cmも違う

最も高いのは神戸市交通局、最も低いのは仙台市交通局

つり革の高さは鉄道会社ごとに基準が異なり、同じ「つり革」でもかなりの差があります。最も高いのは神戸市交通局の通路部分で約1850mm、最も低いのは仙台市交通局の優先席前で約1520mmとされ、その差は約33cmにもなります。

優先席の前は、低めに設定されることが多い

車内の場所によっても高さは変わります。多くの会社では、通路部分のつり革は高め、優先席前のつり革は低めに設定される傾向があります。優先席を利用することが多い高齢者や子どもの身長を考えると、低めの設定は自然な工夫といえそうです。

満員電車で吊り革につかまる会社員たちのイラスト

丸型と三角形、つり革の形にも会社ごとの違いがある

関西は丸型、関東は三角形が多い傾向

つり革の形にも、丸い輪っか型と三角形のものがあります。関西の鉄道会社では丸型が主流である一方、関東の鉄道会社では三角形を採用するところが増えており、地域によって見た目の印象が異なります。

「とっさに掴みやすい」か「力を入れやすい」か

この違いは、「つかみやすさ」をどう考えるかという基準の差から生まれています。JR西日本は、過去の調査で丸型のほうが通常時もとっさに掴むときも掴みやすいという結果が出たため、丸型を採用しているといわれています。一方、東急電鉄では、混雑時に1つのつり革を複数人で掴むこともあるため、面で支えられる三角形のほうが力を入れやすいとして採用しているとされています。

つり革は、いつから電車にあったのか

イギリスの馬車鉄道から始まった「つり革」

つり革の起源は、1870年代のイギリスの馬車鉄道にあるといわれています。立っている乗客が体を支えるための道具として考案され、その後、電車にもそのまま引き継がれていきました。日本では、明治40年(1907年)に撮影された車内の写真にも、すでにつり革が写っているそうです。

大正時代には、すでに丸型と三角形があった

「丸型と三角形のどちらが新しいか」と思う人もいるかもしれませんが、実はどちらも古くから存在していました。大正時代には、つり革の持ち手に藤(とう)などの素材が使われ、その形には丸型と三角形の両方があったとされています。今のようなプラスチック製になったのは、その後しばらく経ってからのことです。

なお、伊豆箱根鉄道など一部の鉄道会社では、車両に1本だけ持ち手をハート型にしたつり革が取り付けられていることもあります。見つけられたら、ちょっと得した気分になれるかもしれません。

同じ「つり革」という名前でも、高さや形には鉄道会社ごとの工夫が詰まっています。次に電車に乗ったときは、隣のつり革と高さや形を見比べてみると、いつもの通勤・通学が少し違って見えるかもしれません。