蚊に刺されやすい人がいるのはなぜか——「血液型」より効いている要因

生きものの話
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同じ部屋で過ごしているのに、自分だけ何か所も蚊に刺されて、隣の人は無傷。そんな経験はないでしょうか。「刺されやすいのはO型だから」とよく言われますが、蚊が実際に頼りにしているのは血液型ではありません。では何を手がかりに、蚊は「刺す相手」を選んでいるのでしょうか。

蚊のイラスト
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蚊が頼りにしている手がかりは、この3つ

蚊は人を探すとき、いくつもの信号を順番にたどって近づいてきます。なかでも効き目が大きいのが次の3つです。血液型は、研究はあるものの、この3つに比べるとずっと弱い手がかりにとどまります。

手がかり蚊にとっての役割効き目
二酸化炭素(吐く息)遠くから人の居場所を察知する引き金最重要
体温と湿気近づいた相手が「生きている標的」だと確認する大きい
汗と皮膚のにおい体のどこに着地して刺すかを決める大きい
血液型差を示す研究はあるが理由は不明小さい・不確か

つまり蚊は、まず吐く息の二酸化炭素で「人がいる」と気づきます。そこから体温とにおいで標的を絞り込み、最後に肌のにおいで刺す場所を選ぶという段取りです。刺されやすさを左右するのは、この一連の信号をどれだけ強く出しているかにかかっています。

二酸化炭素と体温が「人がいる」と教える

吐く息の二酸化炭素が探索のスイッチになる

蚊にとって、人の吐く息にふくまれる二酸化炭素は「近くに血を吸える相手がいる」という最初の合図です。この合図を受け取った蚊は探索モードに入り、においや熱といった手がかりへの感度も高まります。数メートル先からでも届くため、人を見つけ出す最初の段階で最も強く働く信号です。

息に二酸化炭素が多く混じる人ほど、この合図を強く発します。体が大きい人、よく動いて代謝が上がっている人は呼吸量が多く、結果として蚊に見つかりやすくなります。

蚊に刺されて腕が腫れた人のイラスト

体温と湿気で「生きている標的」だと確かめる

二酸化炭素をたどって1メートルほどまで近づくと、今度は体から立ちのぼる熱と湿気が次の手がかりです。蚊はこの温かさで、相手が生きた動物だと最終確認して着地します。体温が高めの人や、汗をかいて肌が湿っている人が刺されやすいのは、この段階で目立つからです。

妊娠中の女性が蚊に好かれやすいことも、この仕組みで説明できます。アフリカのガンビアで行われた研究では、妊婦は妊娠していない女性のおよそ2倍も蚊を引き寄せたという結果でした。これは、お腹まわりの体温が高く、皮膚から出る揮発性の成分も増えるためでしょう。

お酒を飲むと刺されやすくなる、という話にも根拠があります。ビールを飲んだあとに蚊の着地回数が有意に増えたという報告があり、体温の上昇や汗の変化が関わっているとみられます。

においと皮膚の常在菌が「刺す場所」を決める

汗の乳酸や肌のにおいが着地をうながす

汗にふくまれる乳酸などの成分は、蚊が着地する場所を選ぶときの目印です。ごくわずかな量でも反応し、複数のにおい成分の組み合わせやバランスで「刺しやすさ」を判断しているとされています。汗を多くかく人が刺されやすいのは、水分そのものより、こうしたにおい成分を強く放っているからです。

足首やくるぶしが狙われるのは常在菌のしわざ

蚊に足元ばかり刺された記憶はないでしょうか。足の裏や指の間には皮膚の常在菌が多く、それが分解した独特のにおいが蚊を引き寄せます。素足やサンダルで過ごす夏に足首やくるぶしを刺されやすいのは、このにおいが届きやすいからです。靴下を脱いだ足のにおいに蚊が強く反応した、という実験報告もあります。

においの強い足のイラスト

逆に、皮膚にすむ菌の種類が豊かな人は刺されにくい傾向も報告されています。どんな菌をどれだけ持っているかという肌の個性が、刺されやすさに表れているわけです。

「血液型で決まる」はどこまで本当か

O型が刺されやすいとした2004年の研究

「O型は刺されやすい」という話のもとには、実際の研究があります。2004年に発表された実験では、蚊が着地した割合がO型で83.3%、A型で46.5%という差が出ました。数字だけ見れば、O型はA型の1.8倍ほど刺されやすかったことになります。

O型のキャラクターのイラスト

それでも血液型は決め手にならない

ただし、この研究をもって「血液型で刺されやすさが決まる」とまでは言えません。なぜ差が出たのか理由がはっきりせず、蚊が血液型の物質そのものを感じ取っているわけでもないからです。実験の規模も小さく、これだけで結論づけるには弱いとされています。

刺されやすさ全体で見れば、双子を比べた研究から、その6割ほどが遺伝で決まるという報告もあります。とはいえ、その中身は血液型ではなく、汗のにおいや代謝といった体質の集まりです。「O型だから」の一言で片づけるより、二酸化炭素や熱やにおいなど複数の要因が重なって決まると考えるほうが、実態に近いといえます。

服の色でも刺されやすさは変わる

蚊は暗い色に寄っていく

意外に効くのが服の色です。2022年の研究で、蚊は赤・オレンジ・黒といった色に強く引き寄せられ、緑・青・白はほとんど無視することがわかりました。黒など暗い色は背景とのコントラストがはっきりして、蚊の目に標的として映りやすいのです。

夏の屋外で黒い服を着ていると刺されやすいのには、こうした理由があります。明るい色の服を選ぶことは、自分でコントロールできる数少ない対策の一つです。

血液型は生まれつきのもので変えられません。けれど蚊が本当に頼りにしているのは、吐く息や体温、汗のにおいや服の色といった「その場の条件」です。刺されやすい体質を嘆くより、できることは案外あります。汗をこまめにふく、足元を清潔にする、明るい色の服を選ぶ。蚊との距離は、思っているより自分の手で縮められるはずです。