スマートフォンの指紋認証や、事件の捜査で使われる指紋。私たちの指先にあるあの模様は、一人ひとりちがうといわれます。
しかも、同じ遺伝子を持つ一卵性の双子でさえ、指紋はぴたりとは一致しません。なぜ、これほどまでに人によって違うのでしょうか。
指紋が人それぞれ違う理由
はじめに、ポイントを一覧で見ておきます。
| 問い | 答え |
|---|---|
| いつできる? | おなかの中にいる胎児のうち |
| 何で決まる? | 遺伝に加えて、胎内での偶然の条件 |
| 双子でも違う? | 遺伝子が同じでも、育つ環境の差で別になる |
| 一生変わる? | 基本的に一生変わらない |
くわしく見ていきましょう。

指紋は「おなかの中」で作られる
妊娠中の数か月でできあがる
指紋のもとになる指先の凸凹は、母親のおなかの中にいる時期に作られます。だいたい妊娠の10週から16週ごろにかけて、皮膚がもり上がり、隆線(りゅうせん)と呼ばれる細かな模様ができあがります。生まれたときにはすでに完成していて、その後はほとんど変わりません。

遺伝だけでは決まらない
この模様は、半分ほどは遺伝で決まるといわれます。渦巻き型か流れるような形かといった大まかなタイプは、親から受けつぎやすいのです。けれど細かい線の流れまでは、遺伝子だけでは決まりません。
残りは「偶然」が決めている
胎内での小さな条件で変わる
細かいパターンを最終的に決めるのは、おなかの中での偶然ともいえる条件です。指が成長する速さ・羊水(ようすい)の流れ・指が子宮の壁に触れるタイミングといった、ごくわずかな違いが模様を左右します。だから、同じ設計図を持っていても、できあがる模様は一つひとつ異なるのです。

だから双子でも一致しない
遺伝子が同じでも別の指紋になる
このしくみは、一卵性の双子を考えるとよくわかります。一卵性の双子は遺伝子がほとんど同じですが、それでも指紋はぴたりとは一致しません。おなかの中で過ごした環境が、わずかにちがっていたからです。指紋が遺伝だけで決まらない、何よりの証拠といえます。

一生変わらないから役に立つ
表面が削れても元どおりになる
指紋には、もう一つ大きな特徴があります。一度できた模様は、一生をとおしてほとんど変わらないことです。指先の表面が多少すりむけても、その下の層に模様が刻まれているため、治ればまた同じ指紋がもどってきます。
だから本人確認に使える
「人によって違う」「一生変わらない」という二つの性質のおかげで、指紋は本人を見分ける手がかりになります。スマートフォンのロック解除から犯罪捜査での照合まで、指紋が広く使われているのはこのためです。世界に同じ指紋を持つ人はまずいない、と考えられています。

豆知識——コアラの指紋は人間そっくり
おもしろいことに、指紋を持つ動物は人間だけではありません。チンパンジーやゴリラなどの霊長類のほか、コアラにも指紋があります。コアラの指紋は人間のものとよく似ていて、専門家でも見分けるのが難しいといいます。

何気なく目にする指先の模様は、おなかの中で過ごしたほんの数か月の偶然がつくった、世界に一つだけの印なのでしょう。生まれたその日から、私たちは誰とも重ならない模様を指先にたずさえているわけです。


