マンホールのふたはなぜ丸いのか、四角だと穴に落ちてしまうわけ

マンホールのふたのイラスト 身近な科学の話
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マンホールのふたが丸いのは、どの向きにずれても穴の中へ落ちないからです。円は向きを変えても幅が同じなので、ふちに引っかかって止まるのです。四角いふたは対角線が一辺より長く、斜めに立てるとすとんと落ちてしまう形。ほかにも転がして運べる・向きを気にせずはめられる・欠けにくいといった利点があり、丸は理にかなった形といえます。

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いちばんの理由は「穴に落ちない」こと

円のイラスト

円はどの向きでも幅が同じ

円は、どこで測っても直径が変わらない図形です。ふたを立てても傾けても、穴を通ろうとする幅はいつも直径のまま。だから少しずれたくらいでは、ふたが穴をすり抜けることがありません。熊本県大津町の下水道課も、丸いふたは「どんな向きにしても穴に落ちない」と説明しています。

ふたは穴よりひとまわり大きい

しくみをもう少しくわしく見ると、ふたは穴そのものより少し大きく作られ、穴のまわりの枠にのっています。穴の幅がふたの直径より小さいので、どう回しても通り抜けられません。この「少し大きいふたを枠にのせる」という単純な仕掛けが、円という形と組み合わさって初めて確実に働きます。

四角いふたはなぜ落ちる?

三角定規のイラスト

対角線は一辺の約1.4倍

正方形のふたには弱点があります。対角線の長さは一辺の約1.4倍(√2倍)で、いちばん短い幅は一辺です。ふたを縦に立てて斜めに向けると、一辺の短い幅が穴の対角線の方向へ入りこみ、そのまま下へ落ちてしまいます。枠を少し小さくしても、この差は埋まりません。

落ちたら道路に穴があく

ふたが中に落ちると、道路にはぽっかり穴が残ります。東京都の「虹の下水道館」の展示では、歩いている人が落ちたり車のタイヤがはまったりして、とても危険だと説明されています。そのため下水道用のマンホールとふたは丸い形にして、ふたが落ちないようにしているのです。

重いふたを運びやすい形

工事作業員のイラスト

直径約60cmで重さ約40kg

マンホールのふたは、溶かした金属を型に流しこんで固めた「鋳物(いもの)」です。一般的なのは鉄を主な原料にした鋳鉄製で、虹の下水道館の展示によると、直径約60cmのもので重さは約40kgあります。大きさは小さいもので約30cm、大きいものでは約90cmや約120cmのふたもあるそうです。

立てればころころ転がせる

40kgの鉄の板を持ち上げて運ぶのは、作業員にとって大きな負担です。丸いふたなら縦に立てて、車輪のように転がして動かせます。四角いふたは引きずるか持ち上げるしかありません。点検のたびに開け閉めする現場では、この差がそのまま作業の楽さにつながります。

向きを合わせずにはめられる

ふたを元に戻すときも、丸ならどの向きのままでも枠にはまります。四角いふたは、枠の角とふたの角をきっちり合わせなければなりません。重いふたの向きを少しずつ回して調整するのは手間がかかります。大津町の説明でも、向きを選ばずにはめられることが丸い理由のひとつです。

車の重さにどう耐えている?

道路と車のイラスト

角がないから欠けにくい

車道のふたの上を、乗用車もトラックも通っていきます。丸いふたには角がないため欠けにくく、どの方向から重さがかかっても同じように受け止めやすい形だとされる点も強み。四角いふたは角に力が集まりやすく、そこから傷みやすいと考えられます。壊れにくさも、毎日踏まれる道具には欠かせない条件です。

「T-25」は耐えられる重さの印

東京23区のふたをよく見ると、「T-25」「T-14」のような文字が入っています。これはそのふたが耐えられる最大の重さを、トン単位で示したものです。大型車が通る車道には重さに強いふた、歩道には軽めのふたというように、置く場所に合わせた使い分けです。

車道のふたは約15年で交換

どれほど丈夫でも、ふたはいずれすり減るもの。虹の下水道館の展示では、歩道のふたの耐用年数は約30年、車道のふたは約15年とされています。東京23区だけでふたは48万8,403個(令和6年度末時点)。マンホールの中だけでなく、ふたそのものの点検も欠かさず続けられています。

四角いふたもあるのはなぜ?

電線が地中に埋められた街並みのイラスト

人が入らない「ハンドホール」は四角

歩道では、四角いふたを見かけることもあります。多くは電気や通信のケーブルを点検するための「ハンドホール」で、人が中へ入らず、手を入れて作業する小さな穴です。中の機器やケーブルの配置に合わせて四角いほうが使いやすく、人が落ちる心配より使い勝手が優先されていると考えられるでしょう。

※ ハンドホールとは、地中のケーブルや配管を点検するために設けられた、手だけを入れて作業する小型の穴のことです。人が出入りする穴はマンホール(人孔)と呼ばれます。

大小2枚を重ねた「親子蓋」

丸いふたの中に、さらに小さな丸いふたが入っているものも見かけます。「親子蓋(おやこぶた)」と呼ばれるしくみで、小さな子蓋からは人が出入りし、大きな親蓋は点検の機械を出し入れするときに開ける使い分けです。東京・お台場海浜公園駅の近くにも設置されています。形だけでなく大きさも、中で何をするかで決まっているわけです。

落ちない形は丸だけではない

コンパスのイラスト

入社試験に出た「なぜ丸い?」

「マンホールのふたはなぜ丸いのか」は、かつてIT企業の入社試験で出された問題としても知られています。答えの定番は、この記事で見てきた「穴に落ちないから」。ただ、この問いには落とし穴がひとつあり、数学の連載でも取り上げられました。丸以外にも、落ちない形があるのです。

おにぎり形の「ルーローの三角形」

「落ちない形は円だけ」と思われがちですが、数学者の芳沢光雄さんは反例を紹介しています。正三角形の各頂点を中心に、一辺と同じ半径の弧を描いてできる「ルーローの三角形」です。おにぎりのようにふくらんだこの形は、どの方向で測っても幅が同じ。ふたにしても、円と同じく穴に落ちません。

三つの条件を満たすのは円だけ

ルーローの三角形のふたは、落ちないかわりに、はめるときは枠の向きに合わせる必要があります。転がしても中心が上下に揺れるため、円ほどなめらかには動きません。落ちない・向きを選ばない・転がせる。この三つをまとめて満たすのは円だけで、だからこそ街のふたは丸くそろっているのでしょう。

ふたの小さな穴とキャップの色

街に激しい雨が降るイラスト

穴はふたが吹き飛ばないため

ふたの表面に小さな穴が並んでいるものがあります。汚れた水と雨水をいっしょに流す「合流式下水道」の上に多いふたで、激しい雨で管の中の空気の圧力が急に上がったとき、ふたが吹き飛ばないように逃がす役目があります。穴がさらに多い「圧力開放型」のふたもあるそうです。

キャップの色で分かること

東京23区のふたは、2000年のモデルチェンジで中央に小さなキャップが埋めこまれました。キャップが黄色なら汚水や合流の管、青色なら雨水の管が下を通っています。数字は下水道管を設置した年を表し、青地に「13」なら2013年です。足もとのふた1枚が、地下の地図の目印にもなっているのです。

ご当地マンホールとマンホールカード

カラーマンホールのイラスト

都の花・木・鳥を描いた23区のふた

丸いふたは、その土地を描くキャンバスにもなっています。東京23区のデザインマンホールには、東京都の花・木・鳥であるソメイヨシノ・イチョウの葉・ユリカモメが描かれています。全国の自治体でも名所や名産、キャラクターをあしらった「ご当地マンホール」が作られ、写真を撮って回る人も増えました。

2016年に始まったマンホールカード

マンホールの拓本をとる人のイラスト

ご当地のふたを紹介する「マンホールカード」は、2016年(平成28年)4月1日に配布が始まりました。指定の場所へ足を運ぶと、原則1人1枚を無料でもらえます。2026年7月31日には第29弾の46種が加わり、累計は783自治体・4団体の1,311種になりました。

毎日なにげなく踏んでいる丸いふたは、落ちない・運べる・壊れにくいという三つの条件を一つの形で満たしています。円という図形の性質が、そのまま道路の安全を支えているのです。

参考

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