結婚式は「大安」、葬式は「友引」を避けるのはなぜか——「六曜」のしくみ

一般教養の話
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結婚式はなるべく大安に、葬式は友引を避けて。そんな日取りの気づかいを、見聞きしたことはありませんか。

この大安や友引のもとになっているのが、「六曜(ろくよう)」という暦の決まりです。じつは仏教とも関係がなく、その根拠も、思っているより不確かなものでした。

結婚式の新郎新婦のイラスト
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六曜とは何か

まず、六曜の正体を要点からつかんでおきましょう。

問い答え
六曜とは何か暦に書かれた6種類の吉凶の目印
大安・友引の根拠は中国伝来の占いがもと。科学的な裏づけはない
仏教との関係は無関係。「仏滅」などは当て字
いつ広まったのか一般化したのは戦後。意外に新しい

ひとつずつ、ほどいていきます。

六曜の6つの意味

6つの吉凶を一覧で見る

六曜は、先勝から赤口まで6種類あります。それぞれの読みと意味を、まず表で見てみましょう。

六曜読み意味とされること
先勝せんしょう急ぐと吉。午前が吉、午後が凶
友引ともびき祝い事は吉。葬式は避けられる。昼が凶
先負せんぷ急がず控えめに。午前が凶、午後が吉
仏滅ぶつめつもっとも縁起が悪いとされる。終日凶
大安たいあん何ごとも吉。もっとも縁起がよい
赤口しゃっこう正午前後だけ吉。火や刃物に注意

カレンダーでは、この6つが日ごとに順番に割りふられています。

順番はどう決まるのか

六曜は、占いというわりに決め方は機械的です。旧暦の月と日の数を足し、それを6で割った余りで、その日の六曜が決まります。だから旧暦のついたちが来るたびに並びがリセットされ、ときには同じ六曜が続いたり飛んだりします。日替わりの吉凶というより、暦のうえの計算で割りあてられているのです。

カレンダーのイラスト

なぜ結婚式は大安、葬式は友引を避けるのか

では、冒頭の疑問にもどりましょう。なぜ祝い事と弔い事で、選ばれる日がはっきり分かれるのでしょうか。

「友引」と葬式の関係

ポイントは、六曜の名前から連想される語呂合わせにあります。

「友を引く」という語呂合わせ

友引は、もともと「共引」、つまり勝負がつかない引き分けの意味でした。それが「友を引く」と読みかえられ、お祝いごとには「友を呼ぶ」縁起のよい日とされます。反対に葬式では、「友をあの世へ引き連れていく」と連想され、避けられるようになりました。

火葬場が休みになる日

この連想は、いまも実際の習慣に残っています。友引の日を定休日にしている火葬場は多く、葬儀の日程そのものが六曜に左右されることもあります。語呂合わせから生まれた言いつたえが、社会のしくみにまで根を張っているわけです。

「大安」と祝い事の関係

いっぽう大安は、一日じゅう吉とされる六曜です。そのため結婚式や入籍、開店の日として好まれ、式場や予約が集中しやすくなります。逆に縁起が悪いとされる仏滅は人気がなく、その分、式場の料金が安く設定されることもあります。日取りの好みが、値段にまで表れているわけです。

そもそも六曜は中国の「時間占い」だった

もとは時刻の吉凶を占うものだった

六曜のルーツは、古代中国の占いにあります。もともとは「六壬(りくじん)時課」という、一日の時刻ごとの吉凶を占う方法でした。そこから、日の吉凶を見る「小六壬」が派生したと考えられています。つまり六曜は、はじめは「良い時間・悪い時間」を選ぶための道具だったのです。

占い師・易者のイラスト

日本で広まったのは意外に最近

日本に伝わったのは鎌倉時代とされますが、長く広くは使われませんでした。庶民のあいだに定着しはじめたのは幕末以降のことです。そして、いまのようにカレンダーで当たり前に見かけるようになったのは、太平洋戦争のあと。古くからの伝統に見えて、その普及はずいぶん新しいのです。

「仏滅」は仏教と関係ない

もとは「物滅」だった

「仏滅」という字面から、仏教と関わりが深いと思われがちです。けれども六曜と仏教には、もともと何のつながりもありません。仏滅はかつて「物滅」、つまり物が滅する日と書かれていました。明治以降に暦の業者が「仏」の字をあてたことで、仏教と結びつくイメージが広まったとされています。

お坊さんのイラスト

明治政府は「迷信」として禁止した

六曜は、一度は国に否定された歴史ももっています。明治のはじめに暦が新しくなったとき、政府は六曜などの吉凶を迷信とみなし、暦に載せることを禁じました。それでも「あったほうがよい」という声は根強く、こっそりと使われ続けます。やがて戦後のカレンダーで堂々と復活し、今では多くの暦に印刷されているのです。

豆知識——根拠はないのに、なくならない

六曜には、科学的な裏づけはありません。大安に何かをしたから成功する、仏滅だから失敗する、という証拠はどこにもないのです。それでも、結婚式や葬儀の場面では、いまも当たり前のように意識されています。

なぜ消えないのでしょうか。理由のひとつは、「みんなが気にするから、自分も気にしておく」という安心感にあります。本当に縁起をかついでいるというより、まわりと日取りの感覚をそろえるための、共通のものさしになっているのです。

六曜は、科学ではなく文化です。当たるかどうかではなく、人と人が日取りの感覚をゆるやかに分け合うための、昔ながらの目安といえるでしょう。由来を知ったうえでなら、大安に少し背中を押してもらうのも、悪くないものです。