コカ・コーラが世界で最初に販売されたのは1886年のこと。誕生のきっかけは、薬剤師が頭痛薬として調合した液体でした。その液体に炭酸水を混ぜたところ予想外に評判となり、以来140年にわたって世界で飲まれ続けています。
コーラの歴史——年表
薬から大衆飲料へと変わっていった歩みを、主な出来事で追います。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 1886年 | アメリカ・ジョージア州アトランタで薬剤師のジョン・ペンバートンがコカ・コーラの原液を開発。当初は薬局で販売 |
| 1888年 | ペンバートンの死後、エイサ・グリッグス・キャンドラーが商標・レシピを買収し本格的な商業展開を開始 |
| 1893年 | ノースカロライナ州でカレブ・ブラッドハムが「ペプシコーラ」の原型となる飲料を開発 |
| 1899年 | ボトリング・フランチャイズシステムが始まり、コカ・コーラが全米各地で瓶入り販売されるようになる |
| 1919年 | コカ・コーラ社がニューヨーク証券取引所に上場 |
| 1950年代 | 日本に駐留する米軍基地経由でコーラが広まり始める。国内販売は1957年から本格化 |
| 現代 | コカ・コーラは200以上の国と地域で販売。1日あたりの消費量は20億本以上とされる |
薬局の一角で生まれた飲み物が、1世紀以上かけて地球規模の飲料になった歴史です。
発祥——薬として生まれた炭酸飲料
ジョン・ペンバートンの発明(1886年)
コカ・コーラを作ったのは、南北戦争に従軍した元軍医の薬剤師ジョン・スティス・ペンバートン(John Stith Pemberton)です。1886年、彼はアトランタの薬局で頭痛・疲労に効くシロップとして「コカ・コーラ」を開発しました。最初は炭酸水で割らずに飲まれていましたが、薬局の店員が水の代わりに炭酸水で割って提供したところ評判となり、炭酸入りが定着したとされています。
ペンバートンはその後まもなく1888年に亡くなります。レシピの権利を購入したのが実業家のエイサ・グリッグス・キャンドラーで、彼が積極的な広告展開と全国販売を推進したことで、コカ・コーラは薬から大衆飲料へと変わっていきました。
名前の由来——コカとコーラ
「コカ・コーラ」という名前は、原料に由来します。「コカ」はコカの葉(コカイン植物)、「コーラ」はコーラナッツ(カフェインを含む西アフリカ原産の木の実)を指しています。19世紀末の段階では、コカの葉から抽出した成分(微量のコカイン)が含まれており、それが活力増進の効果をもたらすと信じられていました。
1903年以降、コカインを取り除いたコカの葉エキスに切り替えられ、現在は風味付けのみに使われています。コーラナッツも現在の配合では天然カフェインの主な供給源ではなく、別途添加されたカフェインが使われています。「コカ・コーラ」という名前だけが、当初の成分の記憶を留めているのです。
世界への広がりと日本上陸
ボトリングシステムで一気に普及
コカ・コーラの普及を加速させたのが、1899年に始まった「ボトリング・フランチャイズ」の仕組みです。コカ・コーラ社が原液(シロップ)を製造・供給し、各地の契約業者(ボトラー)が炭酸水と混ぜて瓶に詰めて販売する分業体制で、この仕組みにより全米各地へ急速に広がりました。現在も基本的には同じフランチャイズモデルで世界展開しています。
日本にはいつ来た?
日本でのコーラ普及は、第二次世界大戦後の占領期に遡ります。在日米軍基地の兵士向けに輸入されたコーラが、基地周辺の日本人にも広まっていきました。国内での本格的な販売は1957年からで、東京オリンピックが開かれた1964年前後にテレビCMが広がり、若者を中心に一気に定着しました。
当初は「薬臭い」「甘すぎる」と敬遠する声もあったといいます。それでもファストフードの普及とともに食卓での存在感を高め、今では日本の炭酸飲料市場を代表する飲み物になっています。

豆知識——コーラにまつわる話
「秘密のレシピ」は金庫で管理されている
コカ・コーラの製造方法(フレーバーの調合)は「メロドラム7X」(Merchandise 7X)とも呼ばれ、100年以上にわたって厳重に秘匿されてきました。かつてはアトランタの銀行の金庫に保管されていたとされ、知る社員は限られた数人だけとも言われています。現在はコカ・コーラ本社のある「ワールド・オブ・コカ・コーラ」ミュージアム内の専用金庫に移されており、観光スポットにもなっています。
ライバル・ペプシコーラの始まり
コカ・コーラの7年後、1893年にノースカロライナ州の薬剤師カレブ・ブラッドハムが「ブラッドの飲み物」という炭酸飲料を開発しました。1898年に「ペプシコーラ」と改名し、こちらも全国展開を始めます。ペプシという名前は消化酵素「ペプシン」と「コーラナッツ」に由来するとされています。20世紀を通じてコカ・コーラとの激しいシェア争いが繰り広げられ、この競争は「コーラ戦争」と呼ばれてきました。
薬局の一角で生まれた飲み物が、秘密のレシピを守りながら140年かけて世界中のテーブルに広がった——コーラの歴史は、偶然の発見と商業的な工夫が重なった物語です。次にコーラを口にするとき、コカの葉とコーラナッツを混ぜた薬剤師の実験室を、少し思い浮かべてみてください。


