コロッケの起源と歴史——フランスの宮廷料理が肉屋の惣菜になるまで

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コロッケはフランス料理の「クロケット(croquette)」が明治時代に日本に渡り、独自の変容を遂げた料理です。フランスの高級料理だったクロケットが、日本ではじゃがいもを使った庶民の惣菜に生まれ変わりました。

コロッケの歴史——年表

フランスから日本へ、そして家庭の惣菜になるまでの流れを整理します。

時期できごと
18世紀・フランスフランスで「クロケット」が宮廷・上流階級の料理として確立。ベシャメルソースと肉を揚げたもの
明治初期西洋料理として「クロケット」が日本の洋食屋に登場。当初は肉・ソースを使った高級料理
1900年前後じゃがいもを主材料とした日本式コロッケが登場。安価で腹持ちがよく、庶民の惣菜として普及
大正〜昭和初期肉屋の揚げ物として定着。「コロッケ」という呼称が一般化。コロッケの歌(1917年)が流行
戦後〜1960年代食料難が落ち着くとともに復活。スーパー・惣菜店の揚げたてコロッケが定番に
現代クリームコロッケ・カレーコロッケ・かにクリームなど多様化。冷凍食品としても普及

フランスの宮廷料理が日本の肉屋の店頭に並ぶまでに、どんな変容が起きたのかを見ていきます。

発祥——フランスのクロケットから日本のコロッケへ

フランス・クロケットの原型

コロッケの原型は、フランス料理の「クロケット(croquette)」です。「サクサクと音がするもの」を意味するフランス語の「croquer(クロケ)」に由来し、18世紀のフランス宮廷料理として確立されました。本来のクロケットはベシャメルソース(バターと小麦粉を牛乳で溶かしたホワイトソース)に鶏肉・えびなどを混ぜて成形し、パン粉をつけて揚げたものです。

日本には明治維新後の洋食ブームで伝わりましたが、当初は輸入食材のベシャメルソースを使う高価な料理でした。日本でコロッケが「庶民の食べ物」になる転換点は、主材料がじゃがいもに変わったときです。

じゃがいもコロッケの誕生と普及

1900年前後に、ベシャメルソースの代わりにじゃがいもを使った日本式コロッケが登場します。じゃがいもは安価で栽培しやすく、ひき肉と混ぜて成形する調理法は家庭でも再現できました。明治末から大正にかけて肉屋が店頭で揚げて販売するスタイルが広まり、安くて腹持ちのよい惣菜として全国に定着していったのです。

1917年に「コロッケの歌」という流行歌が大ヒットしたことも普及を後押ししました。「今日もコロッケ、明日もコロッケ」という歌詞から、当時の庶民がコロッケを毎日のように食べていた様子が伝わります。

日本のコロッケとフランスのクロケットの違い

同じ「揚げ物」でも、フランスと日本では中身がまったく異なるのです。

項目日本のコロッケフランスのクロケット
主材料じゃがいも+ひき肉が基本ベシャメルソース+肉・えびなど
食感外はサクサク、中はほくほく外はサクサク、中はとろっとクリーミー
価格帯安価な惣菜(1個数十円〜)レストランの一品料理として提供されることが多い
食べ方ソースをかけてそのまま・コッペパンに挟む・弁当コース料理の一皿として提供

フランスのクロケットは現在も「料理」の一品ですが、日本のコロッケは「惣菜」として完全に別の文化圏の食べ物になっています。

かにクリームコロッケのイラスト

豆知識——コロッケにまつわる話

「コロッケそば・うどん」は日本だけ

コロッケをそばやうどんの上にのせた「コロッケそば」「コロッケうどん」は、日本独自のファストフードです。揚げたコロッケが熱いつゆで溶けてトロッとした食感になる一杯は、関東のそば文化と惣菜コロッケが合体して生まれたスタイルといえます。フランスのクロケットがこういう食べ方をされると聞いたら、フランス人は驚くかもしれません。

クリームコロッケとかにクリームコロッケ

日本には「クリームコロッケ」という、ベシャメルソースを中身にした種類も存在します。これはフランスのクロケットに近い調理法で、じゃがいもコロッケとは別系統の料理です。「かにクリームコロッケ」はその発展形で、かにの風味とクリームを合わせた高級惣菜として定番化しています。日本のコロッケは「じゃがいも系」と「クリーム系」の二系統に分岐し、それぞれが独自の進化を遂げてきました。

フランスの高級料理として渡ってきたクロケットが、日本では肉屋の店頭で揚げられる十円惣菜になった。その変容の大胆さこそ、日本の洋食文化が持つ最大の特徴のひとつです。