満腹でも「別腹」でデザートが入るのは本当か——脳と食欲のしくみ

からだの話
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お腹はもういっぱい——そう思っていたのに、デザートが運ばれてくると不思議と食べられてしまう。「別腹」とはよく言ったものですが、これは食いしん坊の言い訳なのでしょうか。じつはこの現象には、脳と胃のれっきとしたしくみが関わっています。本当に「別の腹」があるのか、体の中で何が起きているのかを見ていきます。

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「別腹」は実在する——ただし第二の胃があるわけではない

先に答えを言うと、別腹という現象そのものは本物です。ただし、デザート専用の胃がもう一つあるわけではありません。満腹でも甘いものが入るのは、主に二つのしくみが重なって起きています。一つは胃に物理的な「すき間」ができること、もう一つは脳が「同じ味」に飽きることです。

しくみ体の中で起きること
胃にすき間ができる好物を見ると胃がゆるみ、中身が先送りされて空間が生まれる
脳が同じ味に飽きる食べた味への食欲は下がるが、違う味への食欲は残っている

どちらも「気のせい」ではなく、体と脳で実際に起こる反応です。順番に見ていきましょう。

デザートを食べる人のイラスト

しくみ①——好物を見ると、胃に「すき間」ができる

「オレキシン」が胃をゆるめる

好きな食べ物を目にしたり、香りをかいだりすると、脳の中で「オレキシン」という物質が分泌されます。オレキシンは食欲や覚醒に関わる物質で、これが出ると胃の動きが活発になります。満腹で張りつめていた胃が、好物の刺激でふっとゆるむわけです。

オレキシンとは、脳の視床下部でつくられる物質です。食欲を高めたり、眠気をおさえたりする働きを持ちます。

胃の中身が先送りされ、空間が生まれる

胃がゆるんで動き出すと、それまで胃にたまっていた食べ物が、次の消化器官である十二指腸へと送り出されていきます。その分、胃の中には新しい食べ物を受け入れるスペースが空きます。これが「別腹」の正体の一つです。気持ちのうえだけでなく、胃そのものが物理的に余地をつくっていたわけです。

胃のイラスト

しくみ②——脳は「同じ味」に飽きてしまう

食べ続けた味だけ、食欲が落ちる

満腹感には、じつは「味ごと」の側面があります。同じ料理を食べ続けると、その味に対してだけ食欲が下がっていく。これは「感覚特異的満腹感」と呼ばれる脳の働きです。焼肉をたっぷり食べてもう肉は見たくない、という状態でも、それは肉への食欲が下がっただけなのです。

違う味なら、食欲はまだ残っている

そこに甘いデザートが出てくると、脳にとっては「まだ飽きていない新しい味」に映ります。肉の食欲は満たされていても、甘味への食欲は手つかずのまま残っています。だからデザートはすんなり入るのです。バイキングでつい食べすぎてしまうのも、次々と違う味が出てきて、脳が満腹を感じにくくなるためだと考えられています。

バイキングのイラスト

豆知識——別腹は、生き延びるための名残かもしれない

なぜ人間にこんなしくみが備わっているのでしょうか。一つの見方として、食べ物がいつ手に入るか分からなかった時代の名残ではないか、と言われています。手に入るときにいろいろな栄養をとっておくことが、生き延びるうえで有利だったという考え方です。違う味のものを「まだ食べられる」と感じる性質は、栄養のかたよりを防ぐのにも役立ったのかもしれません。

もっとも、食べ物があふれる現代では、この本能が裏目に出ることもあります。スナック菓子やファストフードは、味や食感を次々と変えることで、わざと「飽きさせない」ように作られているものが少なくありません。別腹のしくみを知っておくと、つい手が伸びる場面で少し立ち止まれるかもしれません。

食べ過ぎのイラスト

「デザートは別腹」は、ただの言い訳ではありませんでした。好物を前にゆるむ胃と、新しい味を求める脳。その二つが重なって、満腹のあとにもうひと口分のスペースを生んでいたのです。次に別腹が発動したときは、自分の体がせっせと準備をしてくれていると思うと、最後のひと口がもう少し愛おしく感じられるかもしれません。

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