乾電池の「単3」「単4」、あの「単」は何の意味か

モノと道具の話
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リモコンや時計、おもちゃに入っている「単3形」の乾電池。毎日のように使っているのに、あの「単」が何の略なのかを、すぐに答えられる人は意外と少ないかもしれません。単独の「単」だろうか、単位の「単」だろうか——。じつはここには、電池のしくみと、戦時中までさかのぼる命名の歴史が隠れています。「単」の正体から番号とサイズの不思議な関係、海外での呼び名まで、順にのぞいてみましょう。

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「単」は「単電池」の単——中身が一つのセルでできた電池

先に答えを言うと、「単」は単電池(たんでんち)の「単」です。電池の中身が一つの部屋(セル)でできていることを表しています。まずは単1から単5までの全体像を、海外での呼び名や容量とあわせて表にまとめます。

日本の呼び方海外(米・国際規格)大きさ容量の目安
単1形D最も大きい約12,000〜17,000mAh
単2形C大きい約5,700〜7,700mAh
単3形AA(ダブルエー)標準約2,000〜2,700mAh
単4形AAA(トリプルエー)小さい約850〜1,300mAh
単5形N最も小さい約650〜900mAh

表を見ると、いくつか「言われてみれば不思議」な点に気づくはずです。番号が大きいほど電池は小さくなり、海外ではアルファベットで呼ばれている。容量はばらばらなのに、じつは電圧はどれも同じです。一つずつほどいていきましょう。

いろいろな乾電池のイラスト

「単電池」と「組電池」——一つか、組み合わせか

「単」がある以上、「単ではない電池」も存在します。電池には、一つのセルでできた単電池と、複数のセルを組み合わせた組電池(くみでんち)があります。単3や単4は前者、つまりセル一つぶんの電池です。だから「単」がつくわけです。

わかりやすい組電池の例として、四角い「9V形(角型)」があります。煙感知器やギターのエフェクターなどに使われるあの電池は、中を開けると小さなセルが六つ直列に並んでいます。1.5ボルトのセルが六つで9ボルト、という構成です。一つのセルで完結する「単」電池とは、成り立ちからして違っているのです。

角型を含むいろいろな乾電池のイラスト

なぜ番号が大きいほど、電池は小さくなるのか

番号と大きさが逆になっているのは、命名された順番に理由があります。日本でこの呼び名が定められたのは、戦時下の1942年でした。当時使われていた電池を大きいものから順に並べ、いちばん大きいものを「単1形」、次を「単2形」と番号をふっていったのです。出発点では「番号=大きさの順位」でした。

その後、技術が進んで、より小さな電池が次々と作られていきます。新しく登場した小型の電池には、続きの番号として単3・単4・単5が割り当てられました。結果として「番号が大きいほど、あとからできた小さい電池」という並びができあがったわけです。逆に見えるのではなく、大きい順に古いものから番号をふった名残といえます。

海外では「AA」「AAA」——アルファベットの理由

「単」という呼び方は、じつは日本だけの通称です。海外では単3を「AA(ダブルエー)」、単4を「AAA(トリプルエー)」と呼びます。なぜアルファベットなのか、そしてなぜAが重なるのか。これにも順番の物語があります。

もともと電池には「A形」「B形」といったサイズが先にありました。そこへA形より小さい電池が登場したとき、「Aより小さいA」という意味で「AA形」と名づけられます。さらに小さいものが「AAA形」です。日本の「番号を足す」やり方と、海外の「Aを重ねる」やり方。発想は違いますが、どちらも「あとから小さいものが増えていった」歴史を映している点では同じです。

※ 電池のサイズは、国際電気標準会議(IEC)という国際機関の規格でも定められています。たとえばアルカリ単3形は「LR6」という記号で、世界共通で通じます。パッケージの「LR6」「LR03」といった表記が、その国際名です。

電池を選ぶイラスト

豆知識——大きさが違っても、電圧はみんな同じ

違うのは「容量」、長持ちのしやすさ

意外に思われがちですが、単1から単5まで、マンガンやアルカリの乾電池の電圧はすべて1.5ボルトで同じです。大きさが違うのに電圧が同じなら、何が違うのか。答えは「容量」、つまり取り出せる電気の総量です。大きい電池ほどたくさんの材料を詰め込めるので、その分だけ長く電気を送り続けられます。

懐中電灯やラジオなど、長時間つけっぱなしにする道具に単1形が使われるのは、このためです。逆にリモコンのように少ない電力で済むものは、小さな単4形で十分まかなえます。電圧という「勢い」は同じでも、容量という「持久力」が違う、と考えるとわかりやすいかもしれません。

乾電池を実用化したのは日本人だった

最後にもう一つ。持ち運べる「乾いた電池」を世界に先がけて実用化した一人が、日本人の屋井先蔵(やいさきぞう)です。それまでの電池は液体を使っていて、こぼれる・凍るといった欠点がありました。屋井は1880年代にこれを乾いた形に改良し、寒い冬でも止まらない電池を生み出します。いま手のひらに乗る単3形の便利さの原点には、こうした工夫の積み重ねがあったのです。

発明のイラスト

「単3形」のたった一文字に、これだけの背景が詰まっていました。中身が一つのセルであること、大きい順に番号がふられたこと、海外ではAを重ねて呼ぶこと。次に電池を買うときは、パッケージの「単3/LR6/AA」という並びを見比べてみてください。同じ電池が、国をまたいで三つの名前で呼ばれている様子が見えてきます。

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