乾電池の「単3」の「単」は、「単位電池」の頭の一字です。何個かをまとめた電池ではなく、1つで使える電池だという意味になります。この呼び名が正式になったのは1942年です。そのとき大きい電池から順に1・2・3と番号をふりました。数字が増えるほど小さくなるのは、この並べ方の名残です。寸法の比べ方や海外の呼び名もあわせて見ていきます。
「単」は単位電池の「単」

1つで使える電池という意味
電池メーカーの業界団体である電池工業会は、「単」を「単位電池」の単だと説明しています。いくつかの電池を組み合わせたものではなく、それ1本で電池として働くもの。単1から単5までの呼び名は、この「単」に大きさの順番を表す数字を足して作られました。「単独」や「単純」の単と思われがちですが、出どころは電池の形そのものにあったわけです。
昭和の初めはまとめた電池が主流
わざわざ「1つの電池」と名乗るのには理由があります。電池工業会によると、昭和10年(1935年)前後までは、何個かの電池を1つにまとめて力の強い電池を作っていました。平たい電池を直列に積み重ねた「積層乾電池」のように、高い電圧を得るための形です。その後、1個ずつの電池を機器に入れて使う形が広まり、まとめた電池と区別する呼び名が必要になりました。
正式な呼び名になったのは1942年
「単1」「単2」が正式な呼び方として使われ始めたのは1942年、太平洋戦争のさなかでした。電池工業会は、この呼び方を使っているのは日本だけだとも書き添えています。80年以上たったいまも店頭のパッケージに残っているのですから、よほど覚えやすい名前だったのでしょう。
数字が増えると小さくなるのはなぜ?

大きい電池から順に番号をふった
番号は「大きさの順位」としてつけられました。いちばん大きいものが単1形で、そこから単2・単3・単4・単5と小さくなります。1位がいちばん大きいという並びなので、数字が増えるほど電池は細く短くなっていく。数字を「量」ではなく「順番」と考えると、逆さまに見えた関係がすっきり読めます。
単1から単5の寸法を並べた表
実際の大きさは日本産業規格(JIS)と国際規格で決まっています。電池工業会が載せている最大寸法を並べると、次のとおりです。
| 日本の呼び方 | 高さ | 直径 | 米国の呼び方 | 国際規格の記号 |
|---|---|---|---|---|
| 単1形 | 61.5mm | 34.2mm | D | R20 |
| 単2形 | 50.0mm | 26.2mm | C | R14 |
| 単3形 | 50.5mm | 14.5mm | AA | R6 |
| 単4形 | 44.5mm | 10.5mm | AAA | R03 |
| 単5形 | 30.2mm | 12.0mm | N | R1 |
※ JIS(日本産業規格)とは、工業製品の形や性能について国が定めている規格のことです。
単3は単2より0.5ミリ背が高い
表をよく見ると、順番どおりに縮んでいない箇所があります。高さだけなら単3形の50.5mmは、単2形の50.0mmをわずかに上回っています。単5形も直径12.0mmで、単4形の10.5mmより太い。番号が表しているのは「全体の大きさ」の順で、高さと直径がそろって小さくなるわけではないのです。
大きさが違っても電圧は同じ?

どの形も約1.5ボルト
単1形も単4形も、マンガン乾電池とアルカリ乾電池の電圧は約1.5ボルトです。電圧は電池の中で起きる化学反応の組み合わせで決まり、入れ物の大きさでは変わりません。小さな単4形を2本入れるリモコンも、大きな単1形を2本入れる懐中電灯も、かかる電圧はほぼ同じ3ボルトになります。電池工業会は、高い電圧が要る機器には直列つなぎ、電圧が低くても長い時間使う機器には並列つなぎが用いられると説明しています。本数とつなぎ方で、機器に合う電圧と持ちを作っているのです。
違うのは材料の量と長持ちのしやすさ
電池工業会の説明では、同じ種類の乾電池なら単1形でも単2形でも使う材料は同じです。違うのは詰めこめる材料の量で、いちばん大きい単1形が取り出せる電気の量(容量)も、一度に流せる力も大きくなります。電気をたくさん使う大型ライトやラジオに単1形が選ばれてきたのは、このためです。
マンガンとアルカリは同じ形で入れ替えられる
マンガン乾電池とアルカリ乾電池は中身の材料が違いますが、寸法は同じ規格にそろえてあります。そのため同じ単3形どうしなら、どちらを選んでも同じ電池ボックスに収まる仕組みです。アルカリ乾電池は二酸化マンガンと亜鉛を多く使うぶん長持ちしやすく、モーターを回すおもちゃなど電気をよく使う機器に向いています。
四角い9V形は「単」がつかない電池

中には1.5ボルトの電池が6つ
単1から単5のほかに、四角い「9V形」の電池があります。電池工業会によると、中には1.5ボルトの電池が6つ入っていて、合わせて9ボルトです。マンガン乾電池ではチューインガムのような平たい電池が6枚重なり、アルカリ乾電池では単4形より細い電池が2列で6本並ぶものもある、という中身です。
まとめた電池の生き残り
9V形は、昭和の初めに主流だった「何個かを1つにまとめた電池」と同じ考え方でできています。だからこそ「単」の名前はつかず、形を表す「9V形」「角形」と呼ばれます。いまの出番は煙感知器や楽器のエフェクターなど、少ない本数で高い電圧がほしい機器です。
海外ではなぜAA・AAAと呼ぶの?

「単」は日本だけの呼び方
海外の店で「単3」と言っても通じません。アメリカでは単3形を「AA(ダブルエー)」、単4形を「AAA(トリプルエー)」と呼びます。単1形は「D」、単2形は「C」、単5形は「N」。旅行先で電池を買うときは、このアルファベットを覚えておくと迷いません。
Aを重ねた名前の由来は諸説ある
アメリカ式の名前はもともと大きさを区別する記号で、A・B・C・Dと文字を当てていたと言われています。そこへA形より小さな電池が加わったとき、Aを重ねて「AA」「AAA」と名づけたという説明がよく知られています。ただし古い名づけの経緯には別の説もあり、はっきりした記録で裏づけられた定説とまではいえません。
パッケージの「LR6」は世界共通の名前

記号は種類・形・寸法の順
乾電池のパッケージには、「単3形」のほかに「LR6」のような記号も印刷されています。これは国際電気標準会議(IEC)とJISが定める名前で、国が違っても同じ電池を指せます。記号の並びは、前から電池の種類・形・寸法の順。「R」は円形、そのあとの「6」が単3形の寸法を示す番号です。
※ IEC(国際電気標準会議)とは、電気や電子の製品について世界共通の規格を作っている国際機関です。
マンガンはR6、アルカリはLR6
先頭の文字を見れば、電池の中身も分かります。アルカリ乾電池には「L」がつき、単3形なら「LR6」、単4形なら「LR03」です。マンガン乾電池は種類の文字を省くので、単3形はただの「R6」になります。記号の頭に数字がつく場合、それは直列につながっている電池の数を表す決まりです。
乾電池を実用化した屋井先蔵

時計店の職人が1887年に作った乾電池
乾電池の歴史には日本人の名前が出てきます。時計店で働いていた屋井先蔵(やいさきぞう)は、1885年に「連続電池時計」を作りました。ところが時計に使った輸入電池は薬品が染み出し、金具を腐らせてしまいます。屋井は炭素棒にパラフィンを染みこませてこれを防ぎ、1887年に「屋井乾電池」を完成させました。
ドイツのガスナーより1年早い発明
国立公文書館の資料によると、液のこぼれない乾電池はドイツのガスナーらが1888年に発明しました。屋井の乾電池はその1年前です。屋井乾電池は帝国大学がシカゴ万博に出品した地震計に使われて注目を集めましたが、屋井が特許を取ったのはその翌年でした。その後、日清戦争で軍用に使われて性能が認められ、国内外に広まっていきます。
「単3」の一文字には、まとめた電池から1本ずつの電池へ移った時代の変化が刻まれています。数字は大きさの順位で、海外ではAAとLR6。同じ1本が、日本とアメリカと国際規格で三つの名前を持っている。リモコンの電池ボックスに並ぶ小さな円筒は、思いのほか多くの言葉で呼ばれているのです。
参考
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