ミルクレープの起源と歴史 — 西麻布のカフェで生まれ、ドトールが全国に広めた「層」のスイーツ

雑学・教養
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薄く焼いたクレープを何層にも重ね、間にクリームを挟んだ「ミルクレープ」。美しい断面としっとりした食感で、多くの人に愛されるスイーツです。洋風の見た目をしていますが、実は日本生まれという点も興味深いところ。その誕生には、ある喫茶店のシェフのひらめきと、コーヒーチェーンによる全国展開という意外な物語が隠れています。誕生の背景から現代での広がりまでをたどってみましょう。

ミルクレープが歩んできた道のり

東京の小さな喫茶店から、どのようにして全国区の人気スイーツへと育っていったのか。主な流れを年表にまとめました。

時代できごとポイント
1978年の西麻布洋菓子店「ルエル・ドゥ・ドゥリエール」が開業ミルフィーユ発祥の店として知られる
1988年の同店シェフの関根俊成氏がミルクレープを考案クレープとラザニアからの発想だった
1996年の日本ドトールコーヒーが許可を得て全国販売大ヒットし全国に広まるきっかけになった
1990年代以降の日本カフェ・コンビニ・家庭にも普及家庭向けレシピ本でも紹介されるようになった
現代のアジア韓国・台湾などでも人気スイーツにSNSで断面が「映える」と話題になっている

ここからは、それぞれの時代に何があったのかを詳しく見ていきます。

「ミルクレープ」誕生の物語

クレープとラザニアから生まれた発想

ミルクレープが生まれたのは1988年のこと。東京・西麻布にあった洋菓子店「ルエル・ドゥ・ドゥリエール」のシェフ、関根俊成氏が考案したとされています。同店は1978年に開業し、ミルフィーユ発祥の店として知られていました。「喫茶のみの利用者にも満足してもらえるもの」を作ろうと考えた関根氏は、当時流行していたクレープと、層を重ねるラザニアから発想を得たといわれています。スイーツ専門の修行をしてこなかったからこそ、型にとらわれない発想が生まれたとも語られています。

「ミル=千」の名前に込められた意味

「ミルクレープ(mille crêpes)」は、フランス語の「mille(千)」と「crêpe」を組み合わせた造語です。直訳すると「千枚のクレープ」となりますが、実際には12〜20枚ほどのクレープを使うことが多いとされています。「無数に重なっているように見える」という比喩的な意味合いで名付けられたと考えられ、見た目の印象を重視した日本らしいネーミングといえそうです。

ドトールが起こした全国ブーム

1996年、全国販売で大ヒット

1996年、ドトールコーヒーが「ルエル・ドゥ・ドゥリエール」から許可を得て、ミルクレープを全国の店舗で販売しました。この販売が大ヒットとなり、ミルクレープは一気に全国区の知名度を獲得します。一軒の喫茶店で生まれたお菓子が、コーヒーチェーンを通じて広まったというのは、なかなか珍しい経緯です。

カフェ・コンビニ・家庭への広がり

1990年代には、さまざまなカフェや洋菓子店がミルクレープを提供するようになり、コンビニスイーツとしても定着していきました。家庭向けのレシピ本や料理番組でも紹介され、層を重ねるだけというシンプルな構造が、家庭でも手作りされるきっかけになったようです。

知っておくと面白い豆知識

切り口が命、層の均一さを保つコツ

ミルクレープは断面の美しさが命ともいわれるお菓子です。クレープの厚みやクリームの量を均一にし、冷却時間を十分に取ってからカットすることで、層がきれいに揃った断面に仕上がります。一枚一枚は薄くても、重ね方ひとつで見た目の印象が大きく変わるのです。

名前の「千」と実際の層数のギャップ

「ミル=千」という名前から想像すると、実際の層数とのギャップに驚く人も多いかもしれません。中には20層以上のものも存在しますが、層を増やすほど食感は柔らかくなる一方で、形を保つのが難しくなります。見た目と食感のバランスを取る層数選びは、職人の腕の見せ所といえるでしょう。

アジア圏でも人気の「映える」スイーツ

日本発祥のミルクレープは、近年では韓国や台湾などアジア圏でも高級スイーツとして人気を集めています。ナイフを入れるたびに現れる層の美しさは、SNS時代のビジュアル感覚にもよく合うようです。抹茶やティラミス風など、地域ごとのアレンジも生まれ続けています。

西麻布の小さな喫茶店から始まったミルクレープは、ドトールコーヒーの全国展開を経て、家庭やアジア圏にまで広がりました。シンプルに重ねるという発想ひとつから、こんなに大きな広がりが生まれたのは驚きです。

次にミルクレープの断面を眺めるときは、その層の数だけ積み重ねられた歴史にも、少し目を向けてみると面白いかもしれません。

 

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