綿菓子の起源と歴史 — 歯医者が生んだ「妖精の糸」が、日本で「電気飴」と呼ばれるまで

雑学・教養
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見た目はふわふわの雲のよう、口に入れるとすぐに溶けてしまう「綿菓子(わたがし)」。お祭りや縁日で見かける定番のお菓子で、子どもから大人まで懐かしさを感じさせる存在です。シンプルに見えるこのお菓子ですが、実は19世紀末のアメリカで生まれた近代的な発明品でした。発明者の意外な顔ぶれから、日本での呼び名の変遷までをたどってみましょう。

綿菓子が歩んできた道のり

砂糖を糸状にする機械が、どのように発明され、世界へ広がっていったのか。主な流れを年表にまとめました。

時代できごとポイント
1897年のアメリカ歯科医と菓子職人が綿菓子製造機を発明テネシー州ナッシュビルでの発明だった
1904年のアメリカセントルイス万博で「フェアリー・フロス」を出展1箱25セントで6万8655箱売れた
明治後半〜大正の日本米国から伝来し「電気飴」として急速に普及製造機が全国各地に広まった
1950年の日本画家・谷内六郎が「電気飴」という作品を描く当時の呼び名が作品名に残っている
戦後以降の日本縁日文化と結びつき定着西日本「綿菓子」・東日本「綿飴」と呼び名が分かれた

ここからは、それぞれの時代に何があったのかを詳しく見ていきます。

「妖精の糸」を生んだ意外な発明者

歯科医と菓子職人が組んだ1897年の発明

綿菓子のもとになる機械は、1897年にアメリカ・テネシー州ナッシュビルで発明されました。考案したのは、菓子職人のジョン・C・ウォートンと、歯科医師のウィリアム・モリソンです。砂糖を加熱して液状にし、遠心力で糸状に飛ばすという仕組みは、それまでの菓子作りにはなかった発想でした。虫歯予防に関わる立場の歯科医が、甘いお菓子の機械を生み出したというのは、なんとも不思議な巡り合わせです。

1904年、セントルイス万博での大ヒット

1904年、この機械で作られたお菓子は「フェアリー・フロス(妖精の糸)」という名前でセントルイス世界博覧会に出展されました。1箱25セントという当時としては高価な値段でしたが、6万8655箱もの売上を記録したといわれています。糸のようにふわふわとした見た目と、口の中で溶けてしまう感触は、当時の人々にとって魔法のような新体験だったようです。

日本では「電気飴」として広まった

明治後半〜大正、急速に広がった新しいお菓子

綿菓子は、明治時代後半から大正時代にかけて日本にも伝わりました。アメリカから持ち込まれると、その目新しさから人気が急速に広がり、製造機が全国各地に普及していったようです。当時はモーターで動く機械を使った菓子という意味で、「電気飴」という名前で呼ばれていました。

谷内六郎の絵に残る「電気飴」と、東西で違う呼び名

1950年には、画家の谷内六郎が「電気飴」という作品を描いており、当時この呼び名が広く使われていたことがうかがえます。その後、戦後の縁日文化と結びついて定着していく中で、呼び名にも地域差が生まれました。現在では西日本で「綿菓子」、東日本で「綿飴」と呼ばれることが多いとされています。

知っておくと面白い豆知識

綿菓子の正体は、ほとんどが「空気」

ふわふわに見える綿菓子は、実はその大部分が空気から成り立っているのです。100gほどの砂糖からでも、できあがる綿菓子の体積は数十倍にまで膨らみます。カロリーは使った砂糖の量とほぼ同じですが、見た目のボリュームに対して食べ応えが軽いのは、この空気の多さによるものです。

ピンクや青、レインボーまで。色と香りの工夫

砂糖だけで作る綿菓子は本来白色ですが、色付き砂糖を使えばピンクや青、レインボーカラーまで作られています。色によってイチゴやソーダなどの香料が加えられることもあり、見た目と香りの両方で楽しめるよう工夫されています。

キャラクター綿菓子やインスタ映えで再注目

近年では、動物やキャラクターの形に成形した綿菓子を専門に作るお店も登場するようになりました。巨大なサイズの綿菓子をインスタ映えスイーツとして提供するスタイルも人気を集めており、昔ながらの縁日のお菓子が、新しい形で注目を集めるようになりました。

歯科医と菓子職人の発明から始まった綿菓子は、アメリカの万博で人気を集めたあと日本へと渡っていきます。「電気飴」という名前で親しまれた時代を経て、今の姿になっています。ふわふわの一片に、こんなに長い旅路が詰まっているとは驚きです。

次に綿菓子を手にするときは、その軽やかな甘さの向こうにある歴史にも、少し思いを向けてみると面白いかもしれません。

 

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