「親指を立てる」は世界共通じゃない?——同じジェスチャーが真逆の意味を持つ文化の話

身近な心理と行動の話
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親指を立てて「いいね!」のつもりで示したら相手が怒った——中東や西アフリカを訪れた旅行者が経験するこの戸惑いは、「ジェスチャーは万国共通のはず」という思い込みから生まれます。言葉が通じなくても身振り手振りで伝わるとよく言われますが、実際には同じ動作が真逆の意味を持つ文化が世界中に存在するのです。

同じジェスチャーでも意味が逆になる例

親指を立てる「サムズアップ」

日本・欧米・東アジアの多くの地域では「OK・良い・賛成」を意味するサムズアップですが、イランやイラク・アフガニスタンなどでは性的な侮辱のジェスチャーとして受け取られます。西アフリカの一部でも同様に否定的な意味を持つとされています。起源については諸説あり、古代ローマの剣闘士に対する「殺せ」のサインだったという説もありますが、確証はありません。

「OKサイン」と「Vサイン」も要注意

親指と人差し指で輪を作る「OKサイン」は、日本では「お金」「良い」の両方の意味で使われます。欧米でも「OK・問題なし」を意味しますが、ブラジルでは侮辱的です。フランスでは「ゼロ・価値なし」、ギリシャでは卑猥な意味を持ちます。

日本人が写真撮影でよく使う「Vサイン(ピースサイン)」も、イギリスでは手の甲を相手に向けると侮辱的なジェスチャーになります。手のひらを相手に向ける「ピースサイン」と手の甲を向ける「逆Vサイン」では意味がまったく異なるのです。

ジェスチャー日本・欧米での意味別の意味を持つ地域
サムズアップOK・良い侮辱(イラン・西アフリカなど)
OKサインOK・問題なし侮辱(ブラジル)、ゼロ(フランス)
逆Vサインピース・勝利侮辱(イギリス)
手招き(手の甲上)こちらに来て人を呼ぶのに失礼(フィリピン等)

「うなずき」と「首振り」——実は例外がある

「縦振りはYes・横振りはNo」が世界標準と思われがちですが、ブルガリアでは歴史的に逆(縦がNo・横がYes)の慣習があることが知られています。近年は欧米の影響で変わりつつあるものの、年配の人や農村部では依然として従来のパターンが見られるとされています。また南インドの一部では「首を左右に傾ける」動作(いわゆるインド・ヘッドボブル)が同意のサインで、日本人には首を傾けているようにしか映らないことも珍しくありません。

日本独自のジェスチャーが海外で通じない場面

日本では「自分」を示すとき鼻を指さすことが多いですが、欧米では胸(心臓の辺り)を指すのが一般的です。また日本式の手招き(手のひらを下に向けてパタパタ動かす)は、欧米では犬を呼ぶ動作と似ており、人に対して使うと失礼に映ることがあります。欧米式の手招きは手のひらを上に向けて指を手前に曲げる動作です。

豆知識——なぜジェスチャーは文化で違うのか

ジェスチャーの意味が文化によって異なる理由は、言語と同じく「後天的に学習・定着するもの」だからです。同じ動きでも、その社会で何を意味すると教わるかによって意味が決まります。例えばサムズアップは、古代ローマの剣闘士にまつわる諸説や各地の歴史的経緯を経て、地域ごとに異なる意味を持つようになったとされています。

ジェスチャーが万国共通でないと知っているだけで、海外での誤解はかなり減らせるものです。言葉以上に「意図が伝わりやすい」と感じるジェスチャーほど、解釈が食い違ったときのトラブルも大きくなりがちです。旅先で何気なく使う手のサイン、一度立ち止まって考えてみる価値はあるでしょう。