秋になると、隣の家の柿の実が自分の庭にポトリと落ちてくる——もう自分の敷地にあるのだから食べてもいい、と思いがちです。ところが実はこれ、勝手に食べると法律上はトラブルになりかねません。意外と知らない「落ちた果実」のルールを整理します。
※ この記事は一般的な法律の考え方の解説です。実際のご近所トラブルでは状況により判断が分かれ、最終的には弁護士などの専門家への相談が必要になります。
結論——「自分の庭に落ちた=自分の物」ではない
木の実・枝・根では、それぞれ扱いがまったく違います。まずは典型的なケースを表にまとめました。
| ケース | あなたができること |
|---|---|
| 隣の木の実が自分の庭に落ちてきた | 勝手に食べるのは避けたい(持ち主のものとする見方が有力) |
| 越境して伸びてきた「枝」 | 2023年の民法改正で、一定の条件なら自分で切れる |
| 越境して入ってきた「根」 | 以前から、自分で切ってよい |
| 枝になっている実をもいで取る | はっきりNG(明確に他人の物) |
「落ちてきた実」と「伸びてきた枝・根」で対応が分かれるのが、このテーマのややこしいところです。

落ちた果実は、なぜ自分のものにならないのか
枝についた実は、明確に「木の持ち主」のもの
木になる実のような「天然果実(てんねんかじつ)」は、原則としてその木を持っている人のものと考えられています(民法89条の考え方)。枝についたままの実は、境界を越えて隣に伸びていても、はっきり木の所有者のものです。だから手を伸ばしてもぐのは、明確にアウトになります。
ところが「落ちた実」は、はっきり決まっていない
やっかいなのは、地面に落ちた実のほうです。実は、落ちた果実が誰のものになるかを直接定めた条文はありません。法律家のあいだでも「木の持ち主のまま」とする見方と「越境をがまんしている側のもの」とする見方に分かれています。白黒つけにくいからこそ、黙って食べると思わぬ角が立ちかねないのです。
気になるときは「庭に落ちていたので、いただいてもいいですか」と一声かけてしまうのがいちばんです。法律論を持ち出すより、よほど早く丸くおさまります。

枝と根は切っていい?2023年に変わった民法
根は昔から自分で切ってよい
隣の木の「根」が自分の敷地に入り込んできた場合は、以前から自分で切り取ってよいとされてきました(民法233条)。地中の根は気づきにくいものの、建物の基礎や配管に影響することもあるため、自分の側で対処できる扱いになっているのです。
枝は改正で「条件付き」で切れるようになった
一方で越境してきた「枝」は、長らく勝手に切ることができませんでした。持ち主に切ってもらうよう求めるのが原則だったのです。これが2023年4月に施行された改正民法で見直されました。
新しいルールでは、次のどれかに当てはまれば、越境された側が自分で枝を切れるようになりました。
- 持ち主に「枝を切って」と求めたのに、相当の期間(目安は2週間ほど)内に切らないとき
- 持ち主が誰なのか、またはどこにいるのかが分からないとき
- 倒れそうなど、急いで対処すべき事情があるとき
とはいえ、いきなり切ってよいわけではありません。まずは相手に伝えるのが基本という考え方は、改正後も生きています。
※ 天然果実とは、果物や野菜、家畜の乳のように、物から自然に生み出されるもののことです。法律では、原則として元になる物(ここでは木)の所有者に帰属すると考えられています。

豆知識——ご近所の「みどり」をめぐる話
落ち葉の掃除は誰の責任?
隣の木から大量の落ち葉が舞い込んでくると、掃除の手間にうんざりすることがあります。ただ、落ち葉の清掃費用を当然に隣家へ請求できるとは限らず、現実には自分で片づけているケースが大半です。落ち葉も枝も、こじれる前の「声かけ」が結局いちばんの近道になります。

実が「うちの木」と確実に言えるか
そもそも、その柿が本当に隣家の木のものか判然としない場面もあります。古くからある木では、誰が植えたのか、境界のどちら側に幹があるのかで持ち主が変わるからです。境界線の上に幹がある木は共有とみなされることもあり、見た目以上に権利関係は複雑なのです。
「落ちてきたんだから自分のもの」と思える柿一個にも、意外なほど細かなルールが隠れています。とはいえ多くのご近所づきあいは、法律を持ち出す前のひと言で丸くおさまるもの。ルールを知ったうえで、まずは笑顔で声をかけてみるのがよさそうです。
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