公園の前や企業の駐車場で見かけるキッチンカーは、飲食業界への参入障壁が低い業態として注目が広がっています。ただし、「車を買えばすぐ始められる」というわけではなく、複数の手続きが必要です。
キッチンカーで食品を販売するために最低限必要なのは、保健所への食品営業許可と食品衛生責任者の資格です。出店場所によっては道路使用許可なども加わります。
キッチンカー営業に必要な許可・手続き
必要な手続きを一覧で確認しておきます。
| 手続き | 申請先 | 概要 |
|---|---|---|
| 食品営業許可 | 保健所 | 食品を販売・製造する事業者に必要 |
| 食品衛生責任者の選任 | 保健所へ届出 | 講習修了者または有資格者を1名配置 |
| 道路使用許可 | 警察署 | 公道・歩道での停車営業に必要 |
| 出店場所の契約 | 土地所有者・自治体 | 私有地・公有地での出店には別途許可が必要 |
食品営業許可(保健所)
食品営業許可は、キッチンカー営業を始めるための最初の関門です。2021年の食品衛生法改正以前は「露店営業」として別区分だったキッチンカーも、改正後は「飲食店営業」などの一般的な許可区分に統一されつつあります。
申請先は、車両の保管場所または仕込み場所を管轄する保健所です。許可の取得には食品衛生責任者の選任が必要で、費用は自治体によって異なりますが1万円〜2万円程度が目安となっています。
道路使用許可と出店場所の確保
公道・歩道に停車して営業する場合、道路使用許可(警察署への申請)が必要です。ただし、企業の駐車場や商業施設などの私有地・管理地で営業する場合は、道路使用許可は不要です。
出店場所の確保こそが、キッチンカー経営の最大の課題になっています。公有地(公園・道の駅など)は自治体との契約が必要で、私有地は土地所有者との直接交渉が基本です。近年はキッチンカー専用の出店場所マッチングサービスも活用されています。
車両と設備の要件
車両の基準と設備確認
キッチンカーの車両は、一般の自動車と同じく車検の対象ですが、それとは別に保健所による施設確認も受ける必要があります。保健所が確認する主な基準は以下の通りです。
- 給水タンク(容量は自治体によって基準が異なる)と排水タンクの設置
- 食品専用の調理器具・保管スペースの確保
- 手洗い設備(専用シンク)の設置
- 食品を適切な温度で保管できる冷蔵設備
給水タンクの容量は自治体ごとに異なるため、申請前に保健所への確認が必要です。ガスの使用に関しては、設備が適切に設置されているかどうかの安全確認も行われます。
仕込み場所の確保
キッチンカーの車内だけで完全調理を完結させることが難しい場合、仕込み場所(下処理・仕込みを行う許可営業所)の確保が求められます。保健所の許可を持つ飲食店を間借りするか、シェアキッチンを利用するのが一般的な解決策です。
仕込み場所と車両の保管場所は、許可を受ける「営業所」として保健所に登録が必要になります。複数の都道府県で営業する場合は、それぞれの自治体の保健所への申請が原則です。
豆知識 — 複数自治体での営業と法改正の影響
2021年の食品衛生法改正で注目されたのが、複数自治体での営業に関するルールの整備です。改正前は「都道府県ごとに許可が必要」が原則で、隣の県に移動するたびに許可を取り直す必要がありました。
改正後も自治体によって対応は異なりますが、「国が示した基準を満たす施設なら他都道府県の許可でも認める」という方向での整備が進んでいます。急増するキッチンカーに対応するため、多くの自治体がガイドラインを更新しているのです。
開業前に「どの保健所に申請すべきか」「仕込み場所はどこで確保するか」「出店したい場所への交渉はどう進めるか」の三点を整理しておくことが、スムーズな開業準備になります。
キッチンカーの魅力は、初期投資が固定店舗より低く、出店場所を試しながら方向性を決められる点です。その柔軟さを活かすためにも、許可や手続きの基本を事前に押さえて、自分のペースで開業準備を進めるのが得策でしょう。
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