モノと道具の話

言葉と論理の話

「束子」は意味のわからない当て字だった——「たわし」という呼び名を全国に広げたのは、明治40年に生まれた「亀の子」のほう

「たわし」という言葉の語源は、いまも決まっていません。辞書は「束ねたもの」という説と「手藁(てわら)」という説を並べたうえで、どちらとも決めかねる、という書き方をしています。ところが、あとから付いた「亀の子」のほうは事情が違います。誰が、い...
モノと道具の話

歯ブラシの元になる道具は、5000年以上前からあった——日本人の8割が1日2回みがくようになったのは、ここ50年

「歯ブラシはいつから使われているのか」という問いには、ひとつの年号で答えられません。木の枝の先をほぐしたものを含めれば5000年以上前にさかのぼり、柄に毛を植えたブラシに限れば中国の唐の時代まで下ります。今わたしたちが手に持っているナイロン...
歴史と変遷の話

割り箸の根元がつながっているのは、「まだ誰も使っていない」の印だった——江戸の鰻飯屋が、洗う手間の代わりに選んだ形

割り箸の根元がつながっているのは、「この箸はまだ誰も使っていません」と目で見せるためだったと説明されています。江戸の鰻飯屋(うなぎめしや)が、洗う手間の代わりに思いついた形だという見方です。言われてみれば、二本を最後までつなげておく理由は他...
からだの話

耳の中の皮膚は、出口へ向かって動いている——耳垢は運ばれて出ていくので、綿棒が要るのは入口の1センチまで

耳垢(みみあか)は、放っておいても外へ出ていきます。外耳道の皮膚そのものが、鼓膜のほうから出口に向かってゆっくり動いているためです。運ばれてくる耳垢を入口で受け止めるのが、綿棒の本来の持ち場ということになります。ところがその綿棒は、耳のため...
言葉と論理の話

「万年筆」の「万年」は、fountain(泉)を訳した言葉ではない——直訳の「泉筆」は明治のうちに消えた

万年筆を英語で言うと fountain pen、直訳すれば「泉のペン」です。fountain は泉や噴水を指す語で、そこに「万年」にあたる意味はどこにもありません。では日本語の「万年」は、どこから来たのでしょうか。じつは直訳にあたる「泉筆(...
モノと道具の話

最初のストローは、飲みやすくするための道具ではなかった——ビールの浮きかすをよけた5000年前と、「酔いやすい」を調べた研究

英語の「straw」は、麦の穂を刈り取ったあとに残る茎、つまり麦わらそのものを指す言葉です。飲み物を吸うあの管の意味は、あとからついてきました。しかも記録に残るいちばん古い使い方は、飲みやすくするためのものではなかったようです。約5000年...
言葉と論理の話

爪楊枝の頭が黒いのは、焦げてしまった切り口だった——1961年、その焦げをこけしの髪に見立てて溝が刻まれた

爪楊枝の持ち手側にある黒い部分は、着色でも焼き印でもありません。製造の途中で切り口が焦げてしまい、その焦げが落ちなかった跡です。困ったのは作り手のほうでした。黒ずんだ楊枝は売り物として見栄えがしません。そこで刻まれたのが、あの何本かの溝です...
歴史と変遷の話

腰に印籠を下げている人は、いまも土俵の上にいる——水戸黄門が掲げるあの箱は、もともと薬入れ

印籠(いんろう)は、薬などを持ち歩くための小さな容器です。テレビの中で高々と掲げられ、その場の全員がひれ伏す、あの箱。本来の中身は権威ではなく、腹痛や切り傷に備えた常備薬でした。そして、いまも本物の印籠を腰に下げて仕事をしている人がいます。...
モノと道具の話

教室のリコーダーは、いちど歴史から消えた楽器だった——18世紀に忘れられ、20世紀に「安くて誰でも鳴る」笛として戻ってきた

小学校の学習指導要領に、「リコーダーを使いなさい」という一文はありません。書かれているのは、第3学年と第4学年で取り上げる旋律楽器について「リコーダーや鍵盤楽器、和楽器などの中から児童や学校の実態を考慮して選択すること」という一文だけです。...