カルピスの起源と歴史 — モンゴルの発酵乳から生まれた「初恋の味」

身近な食文化
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カルピスが初めて発売されたのは1919年7月7日、七夕の日でした。モンゴルで発酵乳と出会った日本人実業家が「乳酸菌飲料」という新ジャンルを日本に持ち込み、独自の甘酸っぱさを生み出した飲み物です。100年以上にわたって親しまれてきたカルピスの歴史を辿ります。

カルピスの歴史——年表

カルピスがどのように生まれ、日本の定番飲料になったかを追います。

時期できごと
1902年頃三島海雲(みしまかいうん)がモンゴルを旅し、遊牧民の発酵乳「酸馬乳(さんばにゅう)」を飲んで健康効果を体感
1915年三島が「カルピス商会」を設立し、乳酸菌飲料の研究・開発を開始
1919年7月7日「カルピス」発売。七夕を記念した日に、白地に水玉模様の包装で登場
1973年希釈タイプから缶入り・ペットボトルの「カルピスウォーター」へ展開が始まる
1990年「カルピスウォーター」発売。希釈不要の手軽さが若い世代に人気を博す
2012年アサヒグループホールディングスがカルピス株式会社を子会社化
現代「初恋の味」のキャッチフレーズとともに、日本を代表するロングセラー飲料として定着

モンゴルの草原で飲んだ発酵乳が日本の夏の定番飲料になるまで、20年近くの歳月がかかりました。

発祥——モンゴルの発酵乳から生まれた

三島海雲とモンゴルの発酵乳

カルピスを生み出したのは、僧侶出身の実業家・三島海雲(1878〜1974)です。20世紀初頭、中国・モンゴルで仏典の販売をしていた三島は、旅先でモンゴルの遊牧民が飲む「酸馬乳(さんばにゅう)」を口にしました。馬のミルクを発酵させたこの飲み物を飲んだところ、体調が著しく改善したと伝えられています。

帰国後、三島はこの経験をもとに乳酸菌飲料の商品化を決意します。ただし馬乳ではなく牛乳を原料に用い、乳酸菌で発酵させてから酸を調整する製法を開発しました。その後、研究と試作を重ねて1919年についに「カルピス」として発売にこぎつけます。

名前と包装デザインの由来

「カルピス」という名前は、サンスクリット語で「牛の最上の味」を意味する「サルピス(sarpis)」と、カルシウムの「カル」を組み合わせたものとされています。仏教に縁のある三島らしい命名といえるでしょう。

発売当初から続く白地に水玉模様のパッケージは、天の川をモチーフにしたデザインです。七夕(7月7日)の発売日に合わせたもので、星が点在する夜空を白と青で表現しています。このデザインは現在も受け継がれており、カルピスのブランドアイデンティティとなっています。

カルピスの特徴——乳酸菌飲料の仕組み

カルピスは脱脂乳を乳酸菌と酵母で発酵させた乳酸菌飲料です。発酵によってたんぱく質が分解され、独特の甘酸っぱい風味が生まれます。もともとは約4〜5倍の水で希釈して飲む濃縮タイプでしたが、1990年に発売された「カルピスウォーター」がそのまま飲める手軽さで大ヒットし、ラインナップが広がりました。

製品タイプ特徴登場時期
カルピス(原液)水や牛乳で希釈して飲む。濃さを自分で調整できる1919年〜
カルピスウォーター希釈不要でそのまま飲める。ペットボトル・缶で販売1990年〜
カルピスソーダ炭酸水で割った爽快感のあるタイプ1973年〜

近年はカルピスを使ったアイスクリームやゼリー、乳酸菌を活かした健康食品など、飲料以外への展開も続いています。

乳酸菌飲料を飲む男性のイラスト

豆知識——カルピスにまつわる話

「初恋の味」はなぜ生まれた?

「カルピスは初恋の味」というキャッチフレーズは、1922年に公募で選ばれた表現です。甘くて少し酸っぱく、後を引く飲み口を「初恋」に例えたもので、100年以上たった今もブランドコピーとして使われています。食品のキャッチフレーズとしてこれほど長く使われ続けているものは珍しく、日本の広告史にも名を残してきました。

海外では別名「カルピコ」

カルピスは海外でも販売されていますが、英語圏では「Calpico(カルピコ)」という名前が使われています。「カルピス」という発音が英語で不適切な言葉に聞こえることを避けるための変更で、アメリカ・カナダ・オーストラリアなどでこの名称が採用されています。日本国内では長く「カルピス」のまま販売が続いており、名前の差異は海外展開の際に生じたマーケティング上の対応です。

モンゴルの発酵乳との出会いから始まったカルピスは、日本の気候と嗜好に合わせて独自の形に進化しました。七夕の日に生まれ、「初恋の味」という言葉とともに100年以上愛され続けているのは、シンプルな甘酸っぱさが世代を超えて受け入れられてきた証かもしれません。