ハンバーグの起源と歴史——ドイツの港町料理が「和風おろし」になるまで

身近な食文化
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ハンバーグの名前はドイツの港湾都市「ハンブルク」に由来します。18世紀のハンブルクで生まれた肉料理がアメリカへ渡り、「ハンバーガー」と「ハンバーグステーキ」に分岐した後、日本に伝わってさらに独自の進化を遂げました。

ハンバーグの歴史——年表

ハンバーグがどのようにして日本の食卓に根付いたかを振り返ります。

時期できごと
18世紀・ドイツハンブルクの港町で牛肉を細かく刻んで固めた「ハンブルクステーキ」が労働者の食事として広まる
19世紀・アメリカへドイツ系移民がアメリカに「Hamburg steak」を持ち込む。ニューヨークのドイツ人街で人気に
1904年セントルイス万博でパンに挟んだ「ハンバーガー」が登場したとされる(諸説あり)
明治〜大正日本に「メンチカツ」「ミンチカツ」として揚げ物バージョンが先に広まる
1960年代洋食屋・ファミリーレストランの普及とともに「ハンバーグステーキ」が日本に定着
1970〜80年代「デミグラスソースのハンバーグ」が洋食の定番に。ファミリーレストランチェーンで広く提供される
現代煮込みハンバーグ・和風おろしハンバーグなど日本独自スタイルが確立。専門店も全国展開

ドイツ→アメリカ→日本という旅路を経て、日本のハンバーグは「和風おろし」や「煮込み」など日本にしかないスタイルへと進化しました。

発祥——ハンブルクの港町から世界へ

ドイツのハンブルクステーキ

ハンバーグの原型は、18世紀のドイツ・ハンブルクで食べられていた「ハンブルクステーキ(Hamburger Steak)」です。当時のハンブルクは国際貿易港として栄え、船乗りや港湾労働者に向けた安価で腹持ちのよい食事として、牛肉を細かく刻んで固めた料理が広まったとされています。玉ねぎや香辛料を混ぜた点は現在のハンバーグと共通しますが、当初はパン粉や卵を加えない素朴なものだったようです。

アメリカ経由で日本へ

19世紀にドイツからの移民がアメリカへこの料理を持ち込み、ニューヨークのドイツ人街で「Hamburg steak」として広まっていったのです。その後パンに挟む「ハンバーガー」と、皿に盛るソースがけの「ハンバーグステーキ」に分岐します。日本には戦後の洋食ブームを経て、後者の「ハンバーグステーキ」が洋食メニューとして定着していきました。

興味深いのは、日本では揚げた「メンチカツ」が先に広まっていたことです。明治時代に「ミンスミートカツレツ(みじん切り肉のカツ)」として登場し、庶民の間に広く浸透していたのです。「焼く」ハンバーグが主役の座に就くのは戦後まで待つことになります。

日本のハンバーグとアメリカのハンバーグの違い

日本とアメリカでは「ハンバーグ」のイメージがかなり異なります。

項目日本のハンバーグアメリカのハンバーガーパティ
食べ方皿に盛りソースをかけて食べる(ナイフ・フォーク)バンズに挟んで手で食べる(ハンバーガー)
つなぎパン粉・卵・玉ねぎを混ぜる。ふっくらした食感牛肉100%が多い。シンプルで肉の味重視
ソースデミグラス・和風おろし・煮込みなど多様ケチャップ・マスタード・チーズなどトッピング
サイズ120〜180g前後。薄めが多い大きめ・厚めが好まれる傾向

「ハンバーグ」という単語自体、アメリカではほぼ使われず、日本で独自に定着した呼び名です。

和風ハンバーグのイラスト

豆知識——ハンバーグにまつわる話

「和風おろしハンバーグ」は日本にしかない

大根おろしとポン酢をかけた「和風おろしハンバーグ」は、完全に日本独自のスタイルです。洋食の料理にだしやおろしを組み合わせる発想は、日本の食文化が洋食を「自分たちのもの」として再解釈した典型例といえます。現在では「和風」「デミグラス」「チーズ」など複数のソースが選べる専門店も多く、バリエーションの豊かさは本場ドイツやアメリカの比ではありません。

煮込みハンバーグが生まれた理由

「煮込みハンバーグ」はトマトやデミグラスソースで長時間煮込む日本のスタイルです。洋食屋が「焼いた後に残ったハンバーグをソースで煮込んで提供したのが始まり」という説があり、余り物の活用から生まれた料理とされています。煮込むことで肉がやわらかくなり、ソースの旨みが全体にしみ込むため、今では「煮込み」専門のスタイルとして確立されています。

ハンブルクの港町料理が地球を半周して日本にたどり着き、「和風おろし」「煮込み」「デミグラス」と三つに分化した。外来の料理が日本の食文化と混じり合うとき、必ず「日本にしかない形」が生まれるのは、ハンバーグでも例外ではありませんでした。