指をポキッと鳴らすあの音。「骨が鳴っている」と思っている人も多いのではないでしょうか。
でも、あの「ポキッ」は骨そのものの音ではありません。正体は、関節の中で起きるちょっとした現象にあります。
「ポキッ」の正体は?
まず、ポイントを一覧で整理しておきましょう。
| 問い | 答え |
|---|---|
| 骨の音? | いいえ、骨が鳴っているわけではない |
| では何の音? | 関節内の液体にできる「気泡」に関わる音 |
| なぜ続けて鳴らせない? | ガスがもとに戻るのに時間がかかるから |
| 関節炎になる? | 直接の原因とする確かな証拠はない |
中身を順にたどります。

鳴っているのは「骨」ではない
関節は液体で満たされている
まず押さえておきたいのは、ポキッの音が骨どうしのぶつかる音ではない、ということです。骨と骨のつなぎ目である関節は、「滑液(かつえき)」という液体で満たされ、なめらかに動くようになっています。音の正体は、この液体のほうにあるのです。

正体は関節内の「気泡」
圧力が下がって気泡ができる
指を引っぱったり曲げたりすると、関節の中の空間が急に広がり、圧力が下がります。すると滑液に溶けていた気体が、いっきに小さな気泡となって生まれるのです。この気泡ができる瞬間に出るのが、あの「ポキッ」だと考えられています。

2015年、MRIで瞬間をとらえた
長らく「気泡がはじける音」と考えられてきましたが、近年その見方が見直されています。2015年にカナダの研究チームがMRIで関節の中を撮影したところ、音と同時に気泡が「できる」様子がとらえられました。はじける音ではなく、生まれる瞬間の音だという説が有力になっています。
なぜ一度鳴らすとしばらく鳴らないのか
ガスが溶けて戻るまで待つ
ポキッと鳴らした直後に、もう一度鳴らそうとしても鳴りません。一度あらわれた気体が、ふたたび滑液に溶けこむまでに時間がかかるからです。その間は気泡ができず、だいたい20分ほどたつとまた鳴らせるようになります。

「関節炎になる」は本当か
60年続けた自己実験
「指を鳴らすと関節炎になる」とよくいわれますが、これを否定する有名な実験があります。あるアメリカの医師は、左手の指だけを60年間毎日鳴らし続け、右手とくらべました。その結果、左右の手で関節炎の起こりやすさに差は見られなかったと報告しています。

ただし「ほどほど」に
とはいえ、鳴らすこと自体がよいわけではありません。頻繁にくり返すと手がはれたり、握る力が弱くなったりするおそれを指摘する研究もあります。クセになっている人は、ほどほどにしておくのがよさそうです。
豆知識——首や背中の音も同じしくみ
同じことは、指だけでなく首や背中にもあてはまります。体をひねったときに鳴る「ポキッ」も、多くは関節の中の気泡によるものです。ただし首は神経や血管が集まる場所なので、自分で無理に鳴らすのは避けたほうが安心です。

何気なく鳴らしている指の「ポキッ」は、骨ではなく、関節の中に生まれる小さな気泡の音でした。体の奥で起きているささやかな物理現象だと知ると、いつもの何気ないクセも、少し違って感じられるかもしれません。


