フジツボは貝ではありません。エビやカニと同じ甲殻類の仲間です。岩に貼りついて石灰の殻にこもる姿はどう見ても貝ですが、殻の中には背中を下にしたエビのような体が入っています。
正体を明かした決め手は、大人の姿ではなく赤ちゃんのころの姿でした。卵からかえったフジツボは、エビと同じ形の幼生として海を泳ぎます。1830年にこの観察が発表されるまで、学者たちもフジツボを貝と同じ軟体動物に分類していました。
フジツボはなぜ貝に見えるのか?

貝に見える理由は、暮らし方が貝とそっくりだからです。石灰の殻をまとい、一度くっついた場所から一生動かない。見た目の条件だけを並べれば、岩場のカキと区別がつきません。
フジツボの殻は何枚の板でできているか
富士山のような円すい形の殻は、一枚の器ではありません。何枚もの板を組み合わせた、いわば石灰の組み立て住宅です。
側面は6枚の板のつなぎ合わせ
海洋生物環境研究所の解説によると、よく見かける種類では側面の殻が6枚の板でできています。板の左右には「のりしろ」にあたる部分があり、隣どうしが重なり合って筒になる仕組みです。いちばん幅の広い板が体の前側、いちばん細い一対が後ろ寄りに並びます。
てっぺんのふたは2対の板
火口にあたる穴は、2対の小さな板でふさがれています。三角定規のような形の板と、移植ゴテのような形の板が前後につながったものです。3対の筋肉がこのふたを上下させ、開け閉めを細かく操ります。潮が引いている間はここを固く閉じて、乾燥と外敵から身を守っているのです。
殻を足して大きくなる育ち方も貝と同じ
フジツボの殻は、脱いで作り直すものではありません。貝と同じように、縁に炭酸カルシウムを付け足しながら大きくなります。
扇形の板が少しずつ広がる
6枚の板はどれも扇のような形をしています。扇の弧の部分と左右の辺に新しい石灰が分泌されると、半径が少し伸びて開き具合も少し広がる。これが6枚で同時に起こるので、殻全体が高く太く育っていきます。てっぺんは最初にできた薄い部分なので、波に削られて口がだんだん大きくなる傾向もあるそうです。
似ているのは「同じ答えにたどり着いた」から
殻の育て方が貝と同じなのは、親戚だからではありません。硬い殻を大きくするには付け足すのがいちばん理にかなっていたため、別々の生きものが同じ方法を選んだと考えられています。こうした現象を生物学では収斂(しゅうれん)と呼びます。似た暮らしが似た形をつくり、学者の目までだましていたわけです。
リンネもキュビエも軟体動物に分けた
生物に学名をつける仕組みをつくったリンネも、比較解剖学の大家キュビエも、フジツボを貝と同じ軟体動物の側に置いたとされます。当時の分類で重視されたのは、殻があるかどうかと、体に節があるかどうかです。
殻があって体に節が見えない
エビやカニの体は、はっきりした節に分かれています。ところが大人のフジツボは殻に隠れていて、節のある体がよく見えません。見える特徴だけで判断すれば、殻を持つ軟体動物と考えるのは自然な結論でした。
カキと同じ岩で見つかる
フジツボは船底や岩のほか、アサリの殻にまでくっついていることがあります。カキやイガイと並んで岩を埋めつくす姿も、貝の一種という印象を強めてきました。今でも「岩にくっついている貝の仲間」と思っている人は少なくありません。
フジツボが甲殻類だと分かったのはいつか?

フジツボが甲殻類だと示されたのは、1830年のことです。きっかけは大人の体の解剖ではなく、海の中を漂う小さな幼生の観察でした。学界で正式に甲殻類として扱われるようになったのは、19世紀の中ごろとされます。
イギリス陸軍の軍医トンプソンの観察
謎を解いたのは、本職の学者ではありませんでした。ジョン・ヴォーン・トンプソンはイギリス陸軍の軍医で、軍務のかたわら海の生きものを調べていた人物です。
アイルランドの湾で引いたプランクトンネット
アメリカのリンダ・ホール図書館の紹介によれば、トンプソンはアイルランドのコーク湾を渡る船の上から、目の細かい網を海に流してプランクトンを集めました。そのなかにいた小さな幼生を海水に入れて飼い続けると、やがて岩にくっついてフジツボの姿に変わったのです。
幼生はエビやカニの子どもにそっくりだった
決定的だったのは、その幼生の形です。節のある体に脚を備え、甲殻類の幼生とよく似ていました。トンプソンは1830年にこの観察を発表し、フジツボは甲殻類だと主張します。軟体動物から節足動物へ、動物界の枝をまたいだ大移動でした。
決め手になったノープリウス幼生
トンプソンが見た幼生は、ノープリウスと呼ばれる形をしていました。これが甲殻類の「家紋」のような役割を果たしています。
3対の付属肢だけを持つ甲殻類の原型
ノープリウスは、第1触角・第2触角・大あごの3対の付属肢だけを持つ幼生です。甲殻類のなかでもっとも原始的な幼生とされていて、ミジンコに近いカイアシ類やオキアミだけでなく、クルマエビもこの形で卵からかえります。フジツボの赤ちゃんとクルマエビの赤ちゃんは、並べると見分けるのに苦労するほど似ているのです。
フジツボの幼生だけにある一対の角
ただしフジツボのノープリウスには、ちょっとした目印があります。体の前方に、前側角(ぜんそくかく)と呼ばれる一対のとがった突起が伸びているのです。甲殻類の共通点と、フジツボならではの特徴。その両方を幼生が一度に見せてくれたことになります。
ダーウィンが8年かけたフジツボ研究
甲殻類へ移ったフジツボの分類を、一から整理し直したのがチャールズ・ダーウィンです。『種の起原』を書く前、ダーウィンは8年ほどをフジツボの研究に費やしていました。
1846年から4冊のモノグラフ
国立国会図書館のレファレンス協同データベースにまとめられた回答によると、研究を始めたのは1846年10月。現生のエボシガイ類とフジツボ類、それぞれの化石種について、1851年と1854年に計4冊の研究書を出しました。知られていた現生種をすべて記載したこの仕事は、今もフジツボの分類学で基本文献として参照されています。
「歯ぎしりをして種を呪った」
作業はダーウィン本人にとっても骨が折れるものでした。ダーウィン書簡プロジェクトは、分類の難しさに彼が「歯ぎしりをして種を呪った」と書き残したことを紹介しています(筆者訳)。種ごとのわずかな違いを延々と見比べたこの経験が、のちの進化論を支える材料になったとも言われます。
フジツボの分類が動いた順を年表にすると、次のようになります。どの段階でも、決め手は「殻の外から見えないもの」でした。
| 時期 | できごと | フジツボの扱い |
|---|---|---|
| 18世紀〜19世紀初め | リンネ・キュビエが分類 | 殻を持つ軟体動物 |
| 1820年代 | トンプソンがコーク湾で幼生を採集し飼育 | 幼生が甲殻類に似ていると気づく |
| 1830年 | トンプソンが観察を発表 | 甲殻類へ移る |
| 1846〜1854年 | ダーウィンが研究し計4冊を刊行 | 甲殻類として分類を整理 |
| 現在 | 世界で約1000種が知られる | 甲殻類の蔓脚類(まんきゃくるい) |
殻の中の体はエビとどこが同じ?

殻を外して中身を見ると、甲殻類であることは大人の体からも読み取れます。関節のある脚、二またに分かれた脚、そして脱皮。どれもエビやカニと共通する特徴です。
背中を下にして寝ころんだエビ
フジツボは殻の中で、あおむけに暮らしています。海洋生物環境研究所の加戸隆介氏は、その姿を「腹部のないエビが背中を下にして殻の中に隠れている様」と表現しました。
口も脚も上を向いている
口と脚がどちらも殻の出口のほうを向いているので、腹側が海に面していることになります。頭にあたる部分には、エビやカニと同じく口・消化管・生殖巣が収まっています。はっきりした目は失われていますが、光の強い弱いは感じ取れるそうです。
エビの尾にあたる腹部は退化した
エビで言えば「身」として食べる腹部が、フジツボではほとんど残っていません。一生を一か所で過ごすので、泳ぐための腹部は必要なくなったと考えられます。体は頭の部分と胸の部分、それを包む外套(がいとう)という膜でほぼできています。
蔓脚は関節のある二またの脚
殻のすき間から出てくる羽根のようなものは、触手ではなく脚です。アサガオのつるが巻くように見えることから、蔓脚(まんきゃく、つるあし)と呼ばれています。
6対の脚が付け根で2本に分かれる
蔓脚は左右に6対あり、1本ずつが付け根で内側と外側の2本に分かれています。片側で12本、左右合わせて24本。関節のある脚が二またに分かれるのは、クルマエビが海底を歩く胸の脚と同じつくりです。口に近い3対は短く、後ろの3対は長いという役割分担もあります。
剛毛を広げて扇形の網にする
蔓脚には細かい毛がびっしり生えていて、広げると扇子のような網になります。これを殻の外へ伸ばしては引き込み、海水に漂う植物プランクトンなどをかき集めて口へ運ぶ。水槽で観察した研究者はこの動きを、手で「おいで、おいで」と招いているようだと書いています。
殻は脱がないのに体は脱皮する
「殻を脱がないなら貝と同じでは」という反論には、フジツボ自身が答えを持っています。殻の内側の体は、エビと同じように脱皮をくり返して大きくなるのです。
海面に浮かぶフジツボの抜け殻
フジツボの体はクチクラという薄い外皮に覆われていて、成長に合わせてこれを脱ぎ捨てます。抜け殻には蔓脚や生殖器、えらまでが形そのままに残っているそうです。こうした抜け殻は海面によく浮いていて、プランクトンを採る網にかかることも多いといいます。
石灰の殻を外皮の外側につくる
カニの甲羅は、クチクラの中に炭酸カルシウムをためて硬くしたものです。フジツボはそのクチクラの外側に石灰を分泌して、別の家を建てました。家は住み続け、中の体の皮だけを着替える。ここがほかの甲殻類と違う点であり、貝とも違う点です。
貝とフジツボを項目ごとに並べてみると、似ているのは殻まわりだけだと分かります。
| 比べる点 | 貝(軟体動物) | フジツボ(甲殻類) |
|---|---|---|
| 殻の材料 | 炭酸カルシウム | 炭酸カルシウム |
| 殻の育て方 | 縁に付け足す | 縁に付け足す |
| 脚 | 関節のない筋肉の足 | 関節のある二またの蔓脚が6対 |
| 脱皮 | しない | 殻の内側の体が脱皮する |
| 幼生 | 貝の仲間に特有の幼生 | エビと同じノープリウス幼生 |
フジツボの赤ちゃんはどう暮らしている?

動けない大人に代わって、住む場所を広げる役目を背負っているのが幼生です。フジツボは一生のうちに、泳ぐ時期と家を探す時期という二つの幼生時代を過ごします。
ノープリウスはプランクトンを食べて漂う
親の殻の中でかえった赤ちゃんは、ノープリウスの姿で海へ出ていきます。この時期の仕事は、食べて育つことと遠くへ散らばることです。
5回の脱皮で第6期まで育つ
かえったばかりの第1期は何も食べず、短い時間で脱皮して第2期になります。そこから植物プランクトンを食べ始め、1日から数日おきに脱皮して、5回目の脱皮で第6期に達します。水槽で育てるときは、脱皮のたびにえさの藻の大きさを口に合わせて変えないとうまく育たないそうです。
カイアシ類にはじき飛ばされる泳ぎ
泳ぎの腕前はあまり高くありません。プランクトンを採集した標本の中で、すばやいカイアシ類が動くたびにフジツボの幼生が脇へはじき飛ばされる様子が何度も観察されています。一生を漂って暮らす競争では勝ち目がなく、岩に定住する道を選んだのではないか。加戸氏はそう推測しています。
キプリスは何も食べずに家を探す
第6期のノープリウスは脱皮して、キプリスと呼ばれる姿に変わります。二枚の甲に包まれた、紡錘形の小さな体です。フジツボの仲間にしかない幼生で、その任務は一生を過ごす場所を選ぶことだけ。
口の器官がなく油のお弁当で動く
キプリスは食べるための触角やあごが退化していて、えさをとれません。動く力は、ノープリウスの時代にためた油だけ。加戸氏はこれを、行きの食料だけを積んで新大陸を目指した大航海時代の開拓者にたとえています。お弁当がつきる前に、良い土地を見つけなければならないのです。
触角の吸盤で歩いて下見する
キプリスは吸盤のような第1触角で岩の上を歩き、場所を下見します。光を感じる目と、泳ぐための6対の脚も備えています。気に入れば仮にくっつき、最後に触角から接着物質を出して永久に固定する。一時付着から永久接着へと、段階を踏んで決めるのです。
仲間がいる場所を選んでくっつく
キプリスが好むのは、すでに同じ種類の大人が暮らしている場所です。仲間が育っているなら、えさの流れも悪くないという目安になります。
先に歩いた幼生の足あとをたどる
キプリスが歩いたあとには、化学物質の「足あと」が残ります。後から来た幼生はその足あとをたどって進むため、カルガモのひなのように連なって歩く光景が見られるそうです。ある実験では、キプリスが足あとをつけた面には、つけていない面の70倍もの幼生が集まったと紹介されています。
クジラやウミガメにしか付かない種類も
岩や船底を選ぶ種類ばかりではありません。クジラの皮膚だけ、ウミガメののどだけ、イルカの歯だけに付く種類までいると紹介されています。体長わずか1ミリほどのキプリスが、宿主の出す物質を手がかりに広い海でその相手を探し当てると考えられています。
フジツボはなぜびっしり群れて付くのか?

岩一面を埋めつくすほど密集するのは、子孫を残すためです。動けないフジツボにとって、隣との距離がそのまま繁殖の成否を分けます。
甲殻類では珍しい雌雄同体
多くのフジツボは、1匹の体に精巣と卵巣の両方を持っています。エビやカニのほとんどがオスとメスに分かれているのとは対照的です。
隣がオスでもメスでも相手になれる
もしオスとメスが分かれていたら、隣にいるのが同じ性の個体だった時点で子孫を残せません。どちらも両方の性を持っていれば、片方がオス役、もう片方がメス役になれば済みます。精子を渡す側を機能的雄、受け取る側を機能的雌と呼ぶそうです。
深海には小さなオスを連れた種も
仲間の少ない深海などでは、オスとメスが分かれていて、メスの殻の口近くに小さなオスがくっついている種類もいます。ダーウィンがフジツボ研究で驚いたのがこの矮雄(わいゆう)でした。雌雄同体からオスとメスが分かれていく途中の段階を示すものとして、彼の関心を強く引いたとされます。
体の大きさに対して動物界最大級の生殖器
動けない者どうしが交尾するために、フジツボは長く伸びる雄性生殖器を持っています。体の大きさに対する長さの割合は、動物界でいちばんとも言われるほどです。
殻の直径の数倍まで伸びる蛇腹
生殖器はアコーディオンのような蛇腹になっていて、殻の直径の数倍まで伸びます。これを隣の個体の殻の中へ差し入れて、精子を渡すのです。殻の中に水をためた空間があるので、受け取った側はそこで卵と受精させます。
届く範囲に隣がいないと子孫が残せない
いくら長く伸びても、届かない距離にいる相手とは交尾できません。密に付いているほど交尾の成功率が上がり、多くの子孫を残せる。キプリスが仲間のそばを選ぶのも、びっしり群れて見えるのも、この事情が大きな理由とされています。
フジツボは人の暮らしとどう関わる?

フジツボは船を持つ人にとっては厄介者です。一方で、地域によっては高級食材として待ち望まれ、接着の研究では手本にもなっています。
船の燃費を落とす厄介者
船底にフジツボなどがびっしり付くと、水の抵抗が増えて船は遅くなります。同じ速さで走ろうとすれば、そのぶん燃料を余分に食う。
防汚塗料なしなら燃費が4割悪化
船底塗料メーカーの中国塗料は、生物の付着を防ぐ塗料を塗らずに航行した場合、燃費が40%悪化すると言われていると説明しています。発電所の冷却水を取り込む管や養殖の設備にも付くため、フジツボは「汚損生物」の代表として扱われてきました。
船底が赤いのは銅の塗料
大きな船の喫水線より下が赤く塗られているのも、フジツボなどへの対策です。国立国会図書館のレファレンス協同データベースには、赤い色の正体が亜酸化銅(あさんかどう)という赤褐色の粉末だとする回答があります。銅が海の生きものの付着を防ぐ働きを利用したものです。
青森では夏のごちそう
フジツボは食べられます。青森県では、ホタテの養殖かごや船に付く大型のミネフジツボが昔から食べられてきました。
カニのような風味のミネフジツボ
ミネフジツボは直径がピンポン玉ほどになる寒い海の大型種で、青森県の海産物の選りすぐり「七子八珍(ななこはっちん)」の一つです。みなと新聞によれば、ゆでると「カニをゆでたような風味」があり、琥珀色の濃いだしがとれます。青森市の中央卸売市場では、8月の最需要期に大サイズがキロ4,000円で取引された年もありました。
板の上に並べて育てる養殖の研究
天然物は数が限られるため、養殖の研究も進んでいます。八戸学院の研究プロジェクトは、水槽で育てた幼生を人工の板の上に整列させて付着させる技術で特許を取りました。試験養殖では1年半から2年で食用サイズに育つことを確かめています。ただ、幼生を水槽で安定して育てる技術には課題が残り、研究が続いているそうです。
水の中で固まる接着剤の手本
フジツボが岩から剥がれにくいのは、自分で分泌する接着物質のおかげです。フジツボの研究者たちは昔からこれを「セメント」と呼んできました。
海水中でも固まり分解されにくい
人間の接着剤の多くは、水にぬれると十分に効きません。フジツボのセメントは海水の中で固まり、細菌にも分解されにくいとされます。キプリスが最初にくっつくときの幼生セメントと、大人が殻の底から出すセメントの2種類があることも分かってきました。
医療用の接着剤をめざす研究
ぬれた場所でもくっつき、生きものに害が少ない。この性質を人工的に再現できれば、歯や骨をつなぐ医療用の接着剤などに使えると期待されています。世界の研究者が挑んでいますが、フジツボの技術にはまだ追いつけていないそうです。
フジツボの名前と「ひざに生える」うわさ

最後に、フジツボにまつわる小さな話をいくつか。名前の書き方から都市伝説まで、正体を知ったあとで見るとまた違った景色になります。
「藤壺」と「富士壺」二つの書き方
フジツボは漢字で「藤壺」とも「富士壺」とも書きます。壺のような殻の口から、藤のつるに似た脚が伸びる姿。あるいは富士山のような円すい形の殻。どちらの書き方も見た目にちなんだものと説明されることが多く、決定的な由来ははっきりしていません。
「ひざの中でフジツボが増えた」は作り話
海岸で転んでひざをすりむいたら、傷の中でフジツボが増えていた。そんな話を聞いたことがある人もいるかもしれません。フジツボを研究していた高島麗氏は、これを「ばかばかしい作り話」と一蹴しています。フジツボの幼生は植物プランクトンを食べて海で育ち、キプリスは固い物の表面に付く生きものです。人の体の中で育つ仕組みはありません。
カメノテも同じ仲間で世界に約1000種
フジツボの仲間は世界に1000種を超え、大きさは数ミリから30センチほどの大型種まであります。磯の岩のすき間に亀の手のような姿で並ぶカメノテも、筋肉の柄を持つフジツボの仲間です。殻で直接岩に付く「無柄類」と、柄で付く「有柄類」に分けられ、カメノテやエボシガイは後者にあたります。
貝に見えるのは、動かない暮らしが貝と同じ殻を選ばせたから。エビの仲間だと分かったのは、赤ちゃんが親とまるで違う姿で海を泳いでいたから。フジツボの正体は、大人をいくら眺めても出てこない場所に隠れていました。
磯の岩に並ぶ小さな富士山の中では、あおむけのエビが今日も脚を広げて、流れてくる食べ物を招いています。
参考
- 海洋生物環境研究所 加戸隆介「フジツボ(前篇)不思議な体の造りとその理由」MERI NEWS 138号、2018年
- 海洋生物環境研究所 加戸隆介「フジツボ(後篇)不思議な体の造りとその理由」MERI NEWS 139号、2018年
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「ダーウィンのフジツボ研究」
- Darwin Correspondence Project「Darwin’s study of the Cirripedia」
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