「一日」を「ついたち」と読むのはなぜか——暦と言葉の関係

言葉と論理の話
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カレンダーの最初の日、「1日」を、わたしたちは「ついたち」と読みます。けれど数字の1は、ふつう「いち」のはずです。

なぜ「いちにち」ではなく「ついたち」なのでしょうか。その理由をたどると、夜空にうかぶ月と、昔の暦にいきあたります。

カレンダーのイラスト
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「ついたち」の正体

はじめに、この読み方のなりたちを、ざっと整理しておきます。

問い答え
ついたちの由来は「月立ち(つきたち)」が変化した言葉
なぜ月と関わるのか旧暦では新月が月の始まり=1日だった
漢字では「朔(さく)」とも書く
ほかの日の読みはふつか・みっかなども古い和語の数え方

では、ひとつずつ見ていきましょう。

「ついたち」は「月立ち」だった

月が「立つ」日

「ついたち」のもとの形は、「月立ち(つきたち)」です。ここでの「立つ」は、現れる・始まるという意味です。つまり月立ちとは、新しい月が始まる日を指していました。それが言いやすく変化して、「ついたち」になったのです。

月とうさぎのイラスト

旧暦では1日が新月だった

なぜ「月の始まり」が1日になるのか。それは、昔の暦が月の満ち欠けを基準にしていたからです。新月から次の新月までを、ひとつの月と数えました。月がまったく見えなくなる新月の日が、その月の1日だったのです。だから昔は、1日の夜空に月はほとんど見えませんでした。

ほかの日にも残る古い数え方

ふつか・みっかは大和言葉の数え方

古い数え方が残っているのは、1日だけではありません。月の前半の日付には、いまも和語の読みがいきています。

日付読み
二日ふつか
三日みっか
四日よっか
五日いつか
六日むいか
七日なのか
八日ようか
九日ここのか
十日とおか

ひと・ふた・み……という大和言葉の数に、「か(日)」がついた形です。

「二十日」と「晦日」のなりたち

ひとけたの日にち以外にも、古い読みは残っています。二十日(はつか)の「はつ」は、二十を表す「はた」が変化したものです。月末をいう晦日(みそか)は、もともと三十日のことでした。一年の最後の晦日が、大晦日(おおみそか)です。

「一日」のいろいろな読み方

「ついたち」と「いちにち」

同じ「一日」でも、読み方で意味が変わります。月の最初の日を指すときは、「ついたち」。朝から晩までの24時間や、まる一日をいうときは、「いちにち」と読みます。文章のなかでどちらの意味かは、前後の流れで読み分けているのです。

「いっぴ」と読むこともある

もうひとつ、「いっぴ」という読み方もあります。請求書や契約書など、日付をかっちり示したい場面で、「1日」を「いっぴ」と読むことがあるのです。事務的なやりとりで耳にする、少しあらたまった言い方です。

豆知識——暦に住む「月」の言葉

新月をあらわす「朔(さく)」に対して、満月は「望(ぼう)」と呼ばれます。十五夜の丸い月は、この望のことです。月のかたちの変化が、そのまま日付や暦の言葉になっているわけです。

お月見・十五夜のイラスト

一年の終わりにくる大晦日や、夜空を見上げる十五夜の行事にも、暦と月のつながりが息づいています。何気なく使う日付の言葉は、月を見て時を数えていた時代の名残でもあるのです。

「ついたち」という何気ない読み方には、夜空の月が、いまもひっそりと隠れています。それは、昔の人が月を見上げて時を数えていた、遠い記憶のかけらなのです。