日本一短い川はどのくらい短いのか、13.5メートルでも川と呼べるわけ

川が流れる風景のイラストと「ぶつぶつ川」の文字 日本の地理と自然
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日本一短い川は、和歌山県那智勝浦町(なちかつうらちょう)を流れる「ぶつぶつ川」です。長さはわずか13.5メートル。大人なら十数歩で歩き切れてしまいます。それでも川と呼べるのは、2008年に和歌山県が河川法にもとづく二級河川に指定したからです。川かどうかを決めるのは長さではなく、法律による指定なのです。

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日本一短い川は和歌山県の「ぶつぶつ川」

巻き尺(メジャー)のイラスト

全長13.5メートル・川幅は最大1メートルほど

和歌山県によると、ぶつぶつ川の長さは13.5メートル。和歌山県観光連盟の案内では、川幅は最大でも1メートル程度とされています。25メートルプールの半分ほどの長さしかなく、またいで渡れそうな細さです。日本でいちばん長い信濃川が367キロメートルあることを思うと、同じ「川」という言葉でくくるのが不思議に感じられます。

名前は「ふつふつ」と湧く水から

ちょっと変わった川の名前の由来は、水の湧き方。川底から気泡をともなって清水が沸々(ふつふつ)と湧き出す様子から名づけられ、「ふつふつ」がなまって「ぶつぶつ」になったと言われています。和歌山県の河川課のページも観光連盟のページも、同じ由来を紹介しています。

場所は那智勝浦町の粉白(このしろ)地区

川があるのは、那智勝浦町の粉白(このしろ)という地区です。地区の名前と同じ粉白川(このしろがわ)の支流にあたり、県の資料では「二級河川 粉白川水系 ぶつぶつ川」と書かれています。熊野エリアの海に近い集落の中にあり、最寄りはJRきのくに線の下里(しもさと)駅です。

13.5メートルでも「川」と呼べるのはなぜ?

六法全書のイラスト

2008年10月21日に二級河川となった

ぶつぶつ川が正式な川になったのは、平成20年(2008年)10月21日です。この日に和歌山県が二級河川として指定しました。県のページでは、それ以来「日本一短い法指定河川」とされていると紹介しています。日本一という肩書きは、地元の言い伝えではなく行政の手続きから生まれたものです。県のページを作っているのも、二級河川を受け持つ県土整備部河川下水道局の河川課。観光案内より先に、川を管理する部署がこの川を紹介しているわけです。

川かどうかは長さでなく「指定」で決まる

河川法には「何メートル以上なら川」という決まりはありません。国や都道府県が指定した水の流れが、法律のうえの河川になります。指定されると管理する役所が決まり、堤防や護岸の整備・水の使い方の許可などを、その役所が受け持つようになります。だから13.5メートルでも、指定を受ければ堂々と川を名乗れるのです。

もっと短い小川は全国にある

ぶつぶつ川より短い水の流れなら、田んぼの水路や庭先の小川など各地にいくらでもあります。ただし、それらは国や県の指定を受けていません。「日本一短い川」は正確には「法律で指定された川のなかで日本一短い」という意味です。見た目の短さだけで競えば、きりがなくなってしまいます。

川の区分はどう分かれている?

市役所の建物のイラスト

一級・二級・準用・普通の4種類

国土交通省の案内では、日本の川は管理する役所の違いで4つに分かれます。並べると次のとおりです。

区分管理するところ河川法
一級河川国(国土交通省)または都道府県適用される
二級河川都道府県適用される
準用河川市町村一部が準用される
普通河川市町村適用されない

ぶつぶつ川は二級河川なので、和歌山県が管理しています。一級河川や二級河川でも、札幌市・名古屋市・大阪市など政令指定都市の中を流れる区間は、その市が管理を受け持つ場合もあるのです。

一級と二級の違いは「水系」

一級河川と二級河川の差は、川の大きさというより水系の重要度で決まります。水系とは、本流とそこに流れ込む支流をひとまとめにした呼び方です。河川法では、国土を守るうえや経済のうえで特に重要な水系を政令で決め、その中の川を国土交通大臣が指定したものを一級河川としています。それ以外の水系で都道府県知事が指定した川が二級河川です。ぶつぶつ川は粉白川水系の一員として二級河川になりました。

準用河川と普通河川は市町村の川

一級にも二級にも入らない川のうち、市町村長が指定したものが準用河川です。河川法の一部が当てはめられ、市町村が管理します。どこからも指定されていない川は普通河川と呼ばれ、河川法は適用されません。ぶつぶつ川が「日本一短い法指定河川」と言われるのは、県による指定という一段上の扱いを受けているからです。

源は雨ではなく湧き水

湧き水のイラスト

多くの川は雨を集めて長くなる

多くの川は、山に降った雨や雪どけ水が谷に集まってできます。支流を合わせながら下流へ進むうちに、川はどんどん長くなります。雨や雪を集める範囲を「流域」と呼び、流域が広いほど川は長く大きくなるのが普通です。信濃川の流域面積は1万1,900平方キロメートルあり、全国の一級水系で3番目の広さです。

ぶつぶつ川は泉から生まれる

ぶつぶつ川の水源は、地面から湧き出る泉。和歌山県のページも「湧水が水源」と説明しています。雨を広く集めて流れ下るのではなく、地下を通ってきた水が一か所から出てくる仕組みです。集める範囲がほとんど無いため、川が長く育つ余地もありません。

湧いてすぐ粉白川に合流する

湧き出た水は、すぐ近くを流れる粉白川へ注ぎます。泉から合流点までの距離が、そのまま13.5メートルという長さになりました。粉白川はそのあと玉の浦海水浴場のある海へ流れ出ます。ぶつぶつ川は、海へ向かう粉白川にほんの少しだけ水を足す、小さな枝のような存在です。

区分ごとの「日本一短い川」はほかにもある

日本地図のイラスト

以前の最短は北海道のホンベツ川

ぶつぶつ川が指定されるまで、法指定の川で最短とされていたのは北海道島牧村(しままきむら)のホンベツ川でした。長さは20メートルとされています。2008年の指定でぶつぶつ川がこれを6.5メートル下回り、日本一の座が北海道から和歌山へ移りました。「日本一短い川」は、指定ひとつで入れ替わる記録でもあるわけです。

一級河川の最短は静岡県の柿田川

一級河川に限ると、最短は静岡県清水町の柿田川(かきたがわ)だとされています。国土交通省の資料での長さは約1.2キロメートル。富士山に降った雨や雪が地下を通り、湧き水となって流れ出す川で、湧水の量は1日あたり約100万トンにのぼります。ぶつぶつ川と同じく湧き水の川ですが、水の量はけた違いです。

準用河川では山形県の東町塩野川

市町村が指定する準用河川では、山形県真室川町(まむろがわまち)の東町塩野川(ひがしまちしおのがわ)が最短とされ、長さは15メートルと紹介されています。ぶつぶつ川とは1.5メートルの差です。区分を分けて見ると、日本一短い川は一つではなく、区分ごとにそれぞれの「いちばん」があることが分かります。

信濃川と比べると約2万7千分の1

山と川と田んぼの風景イラスト

日本一長い信濃川は367キロメートル

国土交通省北陸地方整備局の資料によると、信濃川の長さは367キロメートル。全国109の一級水系のなかで1位です。長野県内では千曲川(ちくまがわ)と呼ばれ、犀川(さいがわ)や魚野川(うおのがわ)を合わせながら越後平野を流れて日本海へ注ぎます。長野・新潟の2県を貫く大河です。

同じ「川」でも長さは2万倍以上の差

367キロメートルを13.5メートルで割ると、約2万7千倍になります。ぶつぶつ川を1ミリの線で描くと、信濃川は27メートルを超える線になる計算です。これほど差があっても、どちらも河川法のもとで役所が責任を持って守る川であることに変わりはありません。

訪ねるなら地元への気配りを

和歌山県観光連盟の案内では、下里駅から歩いて約30分です。川そのものに専用の駐車場は無く、近くの玉の浦海水浴場の駐車場を使う人が多いようです。住宅のそばを流れる小さな川なので、大人数で押しかけたり長く立ち止まったりするのは控えたいところ。湧き口をのぞけば、名前の由来になった泡がふつふつと上がる様子が見られます。

13.5メートルの流れが日本一になれたのは、水が湧いてすぐ隣の川へ注ぐ地形と、県が川として認めた手続きの両方がそろったからでした。長さで負けても、川としての格は信濃川と同じ。ぶつぶつ川は、小さくても胸を張れる「本物の川」です。

参考

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