虹はなぜ7色なのか——国が変われば色の数も変わる

虹のイメージ 身近な科学の話
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「虹は何色?」と聞かれたら、日本ではまず「7色」と答えが返ってきます。赤・橙・黄・緑・青・藍・紫。子どものころから、そう教わってきました。

ところが、この「7色」は世界共通ではありません。国や文化によって、虹は6色にも4色にも、ときに3色にもなります。そもそも虹には「本当の色数」など存在しないのです。この記事では、その意外な事情をたどっていきます。

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虹の色数・世界地図

7色の虹

世界の「虹の色数」を、ひとつの表に並べてみました。同じ空の現象なのに、これだけ数え方が割れています。

地域・文化虹の色数
日本7色
現代の欧米6色(藍を抜く)
アメリカ先住民ズニ族5色
ロシア・中国・イスラム圏4色とすることがある
ショナ人(アフリカ南部)3色

そもそも虹に「色の境目」はない

空にかかる虹

色数がこれほどバラバラなのには、はっきりした理由があります。虹には、そもそも区切りが存在しないからです。

虹は連続したグラデーション

光の波長は切れ目なく続く

虹は、太陽の光が水滴で分かれて、波長の違いが順に並んだものです。赤から紫まで、色はなめらかに移り変わっていきます。赤と橙のあいだに、どこで線を引くべきか——そんな客観的な境目は、どこにもありません。

だから「何色か」は人が決める

切れ目のないグラデーションに、いくつの名前をつけるか。それを決めるのは自然ではなく、見る人の言葉と文化です。虹の色数とは、言ってみれば「その文化がいくつに区切ったか」の答えでした。空ではなく、頭の中で決まっているのです。

ニュートンが「7色」に決めた

カラフルな音符

では、日本でおなじみの「7色」は、どこから来たのでしょうか。たどっていくと、17世紀の科学者アイザック・ニュートンに行き着きます。

プリズムが分けた光

スペクトルとは、光をプリズムなどで波長ごとに分けたときに現れる、色の帯のことです。虹は、空にできた自然のスペクトルといえます。

はじめは5色だった

ニュートンはプリズムで太陽光を分け、スペクトルを観察しました。じつは最初、彼が挙げた色は赤・黄・緑・青・紫の5色だったといわれます。今の7色とは、2色も足りません。

橙と藍をあとから足した

その後、ニュートンは橙(オレンジ)と藍(あい/インディゴ)を加え、色を7つにそろえました。もとの5色に2色を足して、きりのよい数にしたわけです。虹の色は、増えたり減ったりしてきたのでした。

なぜ「7」だったのか

音楽の音階に合わせた

7という数を選んだ背景には、音楽があったとされています。ドレミの音階は7つの音でできています。ニュートンは、色の帯の幅をこの音階になぞらえ、光と音を同じ調和のもとに置こうとしました。科学者の美意識が、色数を決めた一面もあったのです。

藍は「おまけ」だった?

足された藍は、その後もあつかいが微妙です。現代の英語話者の多くは、藍を独立した色とは見ず、「青と紫のあいだ」くらいの感覚でとらえています。色の専門家でも、虹の色に藍を数えないことは珍しくありません。青とそれほど違わない、というのがその理由です。

世界の虹は、色の数がまるで違う

世界地図

ニュートンの7色は、あくまで一つの区切り方にすぎません。世界を見わたすと、虹はもっと自由に数えられてきました。

少ない色でとらえる文化

4色の世界

ロシアや中国、イスラム圏では、虹を4色とすることがあるといわれます。とくにイスラムの伝統では、水・地・火・空気という4つの元素になぞらえる見方も伝えられています。色を数えることが、そのまま世界観を映していたのです。

3色の世界

アフリカ南部、ジンバブエやザンビアに暮らすショナ人の言語では、虹はわずか3色でとらえられるとされます。日本人が7色に見る同じ虹を、3色として語る人々がいる。色の見え方そのものではなく、色を切り分ける言葉が違うのです。

5色・6色の文化

ズニ族は5色

アメリカ先住民のズニ族が話すズニ語では、虹は5色とされます。7でも6でもなく5。数え方に「正解」がないことが、よく分かる例です。

現代の欧米は6色

そして現代の欧米で主流なのは、藍を抜いた6色です。赤・橙・黄・緑・青・紫。ニュートンがせっかく足した藍が、時代とともに静かに外されていった格好です。虹の色数は、いまも少しずつ揺れ動いています。

日本が「7色」になったわけ

教科書を見る学生

では、なぜ日本には7色が根づいたのでしょうか。ここでも、鍵をにぎるのはニュートンでした。

ニュートン説の輸入

近代教育とともに広まった

日本で「虹は7色」が当たり前になったのは、近代化の流れのなかで西洋の科学や教育が入ってきたからだとされています。もともと日本でも、虹の色数はきっちり決まっていたわけではありません。7色という数字は、教科書とともにやってきた新しい常識でした。

「常識」は借りものだった

つまり私たちの「虹は7色」という感覚は、300年ほど前のイギリスの学者が、音楽になぞらえて引いた区切りを受け継いだものでした。世界を見れば、それは数ある数え方の一つにすぎません。当たり前だと思っていた常識が、じつは借りものだったわけです。

豆知識——虹をもっと知る

指を差す人

色数は文化でばらつきますが、変わらない決まりごともあります。最後に、虹にまつわる二つの豆知識を紹介します。

色の順番は世界共通

外側が赤、内側が紫

何色に数えるかは違っても、色が並ぶ順番は世界のどこでも同じです。波長の長い赤が外側、短い紫が内側。これは光の性質で決まっているので、文化によって入れかわることはありません。順番だけは、虹の絶対のルールです。

位置色(波長順)
外側赤(波長が長い)
中ほど橙・黄・緑
内側青・藍・紫(波長が短い)

その虹は、あなただけのもの

見る人ごとに違う虹

虹は、空の特定の場所にかかっているわけではありません。太陽と自分と水滴の角度がそろったときにだけ見える、光の効果です。だから、隣に立つ人が見ている虹は、厳密にはあなたの虹とは別のもの。同じ空を分け合っているようで、一人ひとりが自分だけの虹を見ています。

虹に、本当の色数はありません。「7色」という区切りは、音楽になぞらえた科学者が300年前に引いた、一本の線でした。同じ空を見上げても、数えられる色は文化の数だけある。あなたの知る七色の虹は、世界みんなの常識ではありませんでした。