フリマアプリやハンドメイドサイトで、自分の作ったアクセサリーを販売している人は少なくありません。
趣味として始めたつもりでも、対価を受け取って第三者に渡した時点で、法律上は「製品を流通させた人」としての責任が発生する場合があります。
結論:表示の「義務」はないが、説明責任は問われる
手作りアクセサリーに関わる法律と注意点を、まず表に整理しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 表示義務の有無 | 素材表示を法律で義務づける規定はないが、説明責任は問われる |
| 関係する法律 | PL法(製造物責任法)・景品表示法 |
| PL法の対象 | 法人だけでなく個人の販売者も含まれる |
| リスクのある素材 | ニッケル・カドミウムなどの金属、塗料、接着剤 |
| 海外製パーツの懸念 | 有害物質の検出例が報告されている |
| 注意したい表現 | 「アレルギー対応」「絶対安全」は根拠がないと違反のおそれ |
| 推奨される対応 | 素材や使用上の注意を記載する |
| 適用範囲 | ネット販売・フリマ・イベント販売のいずれも対象 |
ハンドメイド販売で生まれる「製造者」としての責任
趣味の延長と商取引の境界線
手作りアクセサリーは趣味の延長と見られがちですが、販売を始めた瞬間からルールが変わります。友人へのプレゼントとは違い、対価と引き換えに第三者へ提供する行為は「製品の流通」に含まれ、一定の責任が発生するのです。
販売後に「かぶれた」「壊れてけがをした」といった問題が起きた場合、個人であっても製作者が製造者や販売者とみなされ、法律の対象になることがあります。
PL法(製造物責任法)とは何か
※ PL法(製造物責任法)とは、製品に欠陥があって損害が生じた場合に、製造者が損害賠償責任を負うと定めた法律のことです。
PL法における「欠陥」には、設計ミスのような明らかな不備だけでなく、注意書きの不足も含まれます。規模にかかわらず、消費者に提供されるモノには一定の安全性が求められるためです。
表示義務と「説明責任」はどう違うのか
法律で定める表示義務と自主的な説明
アクセサリーの販売において、使用したすべての素材を法律で表示義務として定めているわけではありません。ただし、安全性に関する注意喚起や使用素材の明記は、PL法の観点から「説明義務」として問われることがあります。
つまり「書かなくても罰せられる」わけではないものの、トラブルが起きたときに「説明していなかった」ことが責任の重さを左右する場面があるということです。
「安全性に関わる部分」は説明が求められる
とくに肌に直接触れる金属や樹脂、アレルギー反応を起こしやすい成分については「アレルギー対応素材ではありません」といった一文を加えることで、一定の説明責任を果たすことができます。
素材選定や構造、使い方が安全性に直結する場面では、こうした一言の有無でトラブル時の評価が変わってくるでしょう。
素材に潜むリスクと実際のトラブル
金属アレルギーを引き起こした実例
実際に、ニッケルを含むメッキ素材で作られたピアスを購入した消費者が、数日後にかぶれの症状を訴えたケースが報告されています。製作者が素材について特に説明していなかったため、販売者への問い合わせや返金請求につながりました。
オンライン販売で購入したピアスに「アレルギー対応」と記載があったにもかかわらず、使用後に耳が腫れたという苦情が寄せられた例もあります。販売者が「自分で確認したわけではなかった」と答えたことが問題視され、返品対応と販売中止に至りました。
海外製パーツに含まれる重金属のリスク
近年、SHEINやAliExpress・Temuなどの海外通販サイトで販売されている低価格アクセサリーから、カドミウムや鉛などの有害金属が基準値を大幅に超えて検出されたという報告が相次いでいます。2023年には、国内の調査機関が一部商品から高濃度のカドミウムを検出したと発表しました。
個人がハンドメイド作品を作る際も、こうした海外製パーツをインターネットや雑貨店で入手するケースは一般的です。含有物質の安全性が明示されていないまま使ってしまうと、見た目に問題がなくても、肌に触れる部分に重金属が含まれているおそれがあります。
「アレルギー対応」と書くことの落とし穴
過剰な表現は景品表示法違反のおそれ
「絶対に安全」「肌に優しい」「アレルギー対応」といった表現は、裏付けがない場合、景品表示法違反となるおそれがあります。正確な根拠のない効能や効果を記載すると、消費者を誤認させるリスクがあるためです。
「自分は大丈夫だった」という体験談レベルの感覚で書いた一言が、購入者にとっては「保証」として受け取られてしまうこともあります。
原産国・素材表記のミスにも注意
原産国表示や素材表記についても、誤記や省略が問題になるケースがあります。とくに輸入パーツを使用する場合は原材料の信頼性が不透明になりやすく、結果的に販売者が説明責任を問われるケースもあるでしょう。
ニッケルやカドミウムを含むメッキ素材・刺激の強い接着剤・人体に有害な塗料などは、低価格のパーツやノーブランド素材に多く見られます。手軽に手に入るぶん、注意が必要だといえるでしょう。
ネット・イベント販売で今すぐできること
オンライン販売でもPL法は適用される
インターネット上で販売した商品であっても、PL法や景品表示法の適用対象になります。プラットフォームが個人取引を許可している場合でも、製作者が販売者として責任を負う点は変わりません。
ネットショップやフリマアプリで「素材:合金」「金属製」と記載されているケースは多いものの、それだけでは購入者にとって十分とはいえません。アレルギーや素材の詳細に一歩踏み込んだ説明があるかどうかで、トラブルのリスクは変わってきます。
表示が購入者との信頼構築につながる理由

すべての販売者に素材表示が義務づけられているわけではありませんが、素材・使用上の注意・お手入れ方法といった情報を積極的に記載することは、購入者との信頼構築に大きく寄与します。
フリマアプリやSNS経由の販売では、購入者との距離が遠くなりやすく、誤解やすれ違いも起こりがちです。素材表示はトラブル予防として有効な手段であり、販売規模に関係なく一定の配慮が求められる場面も増えました。
「自分の作品が誰かの肌に触れる」という意識を持つことが、表示義務の有無にかかわらず、長く販売を続けるための土台になります。小さな一文を添える手間が、思わぬトラブルを防ぎ、購入者との関係を長く保つことにつながるはずです。


