からだの話

からだの話

耳の中の皮膚は、出口へ向かって動いている——耳垢は運ばれて出ていくので、綿棒が要るのは入口の1センチまで

耳垢(みみあか)は、放っておいても外へ出ていきます。外耳道の皮膚そのものが、鼓膜のほうから出口に向かってゆっくり動いているためです。運ばれてくる耳垢を入口で受け止めるのが、綿棒の本来の持ち場ということになります。ところがその綿棒は、耳のため...
言葉と論理の話

走馬灯の「馬」はろうそくの熱で走る——死に際に見えるという光景に、この夏の玩具が名前を貸した

走馬灯の「馬」は、ろうそく一本の熱で走っています。二重になった灯籠の内側に、馬に乗った武将の切り絵が貼ってあり、炎の熱でできた上昇気流が羽根車を回す。それだけの仕掛けで、外側の紙に映った影が延々と駆けていきます。一方で「走馬灯のように人生が...
身近な心理と行動の話

デジャブは若いほど多く、年をとるほど減る——起きているのは記憶の失敗ではなく、記憶の点検

初めて入った店なのに、この棚の並びを前にも見た気がする。そう感じたことのある人は、健康な成人のおよそ4人に3人にのぼります。意外なのは、この体験がいちばん多い年代です。記憶があやしくなってくる頃ではなく、10代後半から20代前半あたりに頂点...
からだの話

耳鳴りの「キーン」は、聞こえなくなった帯域を脳が埋めている音——静かな部屋に5分いれば、健康な人にも鳴りだす

耳鳴りの「キーン」は、鼓膜が受け取った音ではありません。外に音源がないのに音の感覚だけが生じる現象で、日本聴覚医学会の『耳鳴診療ガイドライン2019年版』は耳鳴を「明らかな体外音源がないにもかかわらず感じる異常な音感覚」と定義しています。有...
からだの話

一重と二重を分けているのは、まぶたの中で皮膚を引く「枝」——同じ人でも朝と夕方で変わる

まぶたを開く力そのものは、一重の人も二重の人も変わりません。違うのは、その力が皮膚まで届いているかどうかです。上まぶたの内側には、目を開けるときに引き上げられる腱の膜が入っています。この膜から枝分かれした線維が皮膚の裏側に付いていると、目を...
からだの話

掻くと気持ちいいのは、脳がごほうびを出しているから——同じ脳が、かゆみを強める信号も送り返す

かゆみは、痛みの弱いものではありません。皮膚から脳までかゆみ専用の道があり、痛みとは別の神経を通って伝わってきます。そして掻いたときのあの快感も、気のせいではありません。かゆいところを掻いている人の脳を調べると、報酬系と呼ばれる部位が強く反...
からだの話

静電気はなぜ冬に起きやすいのか——バチッと来る人と来ない人を分けるのは、靴の底

冬にドアノブへ手を伸ばして「バチッ」と来るのは、その季節だけ体が電気を作り出しているからではありません。電気の偏りそのものは一年じゅう起きています。冬に変わるのは、たまった電気の逃げ道のほうです。空気が乾くと、行き場を失った電気が体の側に残...
言葉と論理の話

整形外科が勧める「ジグリング」は貧乏ゆすりのこと——「貧乏」の名は寒さで震える姿から来ている

会議中に前の席の人の膝が細かく揺れていると、つい目がいってしまいます。行儀が悪い、落ち着きがない——貧乏ゆすりに向けられる視線は、だいたい冷ややかです。ところがこの動き、整形外科の外来では「ジグリング」という別の名前で呼ばれ、患者さんに勧め...
からだの話

えくぼは骨でも脂肪でもなく、筋肉の分かれ方でできる——あるかないかの二択でもない

えくぼは、笑ったからへこむのではありません。笑う前から、頬の内側にしかけが埋まっています。大頬骨筋(だいきょうこつきん)という表情筋が途中で二股に分かれ、下側の束が皮膚の裏側に貼りついている。いま最も有力とされている説明は、これです。ところ...