フラミンゴのピンクは、生まれつきの色ではありません。餌の藻や小さな生きものに含まれるカロテノイドという色素が、羽や肌にたまって出る色です。その証拠に、卵からかえったばかりのヒナは灰色で、大人と同じ色になるまでには3年ほどかかります。餌から色素が取れなくなると、ピンクはだんだん白くあせていくのです。
生まれたばかりのヒナは灰色

テニスボールほどの灰色のヒナ
サンディエゴ動物園によると、フラミンゴのヒナは灰色の綿毛におおわれて卵からかえります。大きさはテニスボールほど。綿毛は灰色から白っぽい色で、あのピンクの面影はまだどこにもありません。親鳥のとなりに並ぶと、同じ鳥とは思えないほどです。
最初のくちばしと脚はピンク色
意外なことに、生まれた直後のヒナはまっすぐなピンクのくちばしと、ふくらんだピンクの脚をしています。ところがこの色は、1週間ほどで黒く変わってしまいます。大人のくちばしは途中で下向きに折れ曲がっているので、色だけでなく形も育つうちに変わっていくわけです。
大人の色になるまで3年ほど
札幌市円山動物園は、チリーフラミンゴのヒナが3年ほどかけて紅色になると説明しています。羽の生え替わりを何度か重ねるうちに、少しずつ色が増していく仕組みです。大人のピンクは、何年もかけて餌の色素をため続けた結果といえます。
ピンクのもとは何の色素?

カロテノイドという色素の仲間
色のもとは、カロテノイドと呼ばれる色素のグループです。植物や藻がつくる赤や黄色の色素で、動物はふつう自分ではつくれないため食べものから取り入れます。ゆでたエビやカニの赤も、同じカロテノイドの仲間による色です。フラミンゴの場合は、藻や藻を食べた小さな生きものを通じて体に入ります。
※ カロテノイドとは、ニンジンのオレンジやトマトの赤などのもとになる色素の仲間です。β-カロテンもその一つです。
主な成分はカンタキサンチン
京都市動物園は、羽を赤くしている色素をカンタキサンチンと説明しています。南フランスのカマルグで見つかったオオフラミンゴの羽を調べた2021年の研究でも、羽のカロテノイドの6割以上がこのカンタキサンチンでした。羽や体の組織からは、最大で6種類ほどのカロテノイドが見つかっています。
色のもとはどうやって集める?

くちばしを逆さにして水ごと吸う
フラミンゴは頭を下げ、くちばしを上下さかさまにして水につけます。前から水や泥を吸いこみ、横から押し出すのが基本の動きです。細かい餌を水ごと口に入れて、いらない水だけを外へ出す食べ方といえます。
ラメラというくしの歯でこす
くちばしのふちには、ラメラと呼ばれる細かいくしの歯のような板が並んでいます。水を押し出すときに、藻や小さな生きものだけがここに引っかかる仕組み。台所のざるで麺の湯を切るのに近い食べ方で、色のもとを効率よく集められます。
食べるものは体の大きさでちがう
サンディエゴ動物園によると、小型のコフラミンゴは藻のような細かい粒をこし取ります。体の大きな種類が食べるのは、ブラインフライ(塩水の湖にすむハエの仲間)やエビ、貝などの小さな生きものです。どれも色素を多く含む藻か、藻を食べて育った生きもの。餌の中身の違いは、のちに見る色の濃さの違いにも関わってくるところです。
親が口移しする赤いミルク

のどの奥から出る赤い液体
ヒナが自分で餌をとれるようになるまで、親鳥は「フラミンゴミルク」と呼ばれる液体を口移しで与えます。京都市動物園によると、のどの奥の「そのう」という器官から出るもので、赤い色素を含んでいます。ヒナは栄養と一緒に、色のもとも親から受け取っているのです。
※ そのうとは、鳥の食道の途中にある袋のようにふくらんだ部分です。食べたものを一時的にためておく場所として知られます。
オスもメスもミルクを出す
哺乳類の乳と違い、フラミンゴミルクはオスの親も出します。サンディエゴ動物園によると、ヒナがミルクをもらいながら巣の上で過ごすのは5〜12日ほど。両親がそろって色素入りのミルクを運ぶことで、ヒナの最初の体がつくられていくわけです。
子育て中の親は色があせる
ミルクに色素を注ぎこむぶん、親鳥の体からは色が抜けていくのです。京都市動物園は、子育て中の親鳥がオスもメスも白く色あせると説明しています。サンディエゴ動物園も、親は淡いピンクか白にまで薄くなり、ヒナが独り立ちすると色を取り戻すとしています。
種類で色の濃さはちがう?

世界のフラミンゴは6種
フラミンゴの仲間は、世界で6種。オオフラミンゴ・チリーフラミンゴ・コフラミンゴ・アンデスフラミンゴ・コバシフラミンゴ・ベニイロフラミンゴです。翼の黒と赤(ピンク)の組み合わせはどの種類にも共通で、体の色の濃さや脚の色に違いが出ます。
いちばん鮮やかなのはベニイロフラミンゴ
カリブ海周辺にすむベニイロフラミンゴ(アメリカフラミンゴ)は、サンディエゴ動物園が最も鮮やかな種類として挙げる種です。脚やくちばし、顔まで赤やピンク、オレンジに色づくのが特徴です。いっぽうアンデスフラミンゴは、6種の中でただ一つ脚が黄色い種類として知られます。
東アフリカに100万羽のコフラミンゴ
コフラミンゴは、細かい藻をこし取って食べる小型の種類です。東アフリカでは100万羽を超えるコフラミンゴが集まることがあり、サンディエゴ動物園はこれを現在知られる最大の鳥の群れとしています。湖面をうめるピンクの大群も、もとをたどれば水の中の藻の色です。
動物園では餌に色素を混ぜる

色素入りのペレットを与える
動物園で野生と同じ藻やエビをそろえるのは簡単ではありません。そこで登場するのが、色素を加えたペレット(粒状の餌)です。サンディエゴ動物園はこの餌を、フラミンゴを「ピンクに保つ」ための工夫として紹介しています。
色素が取れないと白くなる
札幌市円山動物園は、色素を取れない状態が続くと体の色はだんだんあせ、最後には白くなると説明しています。ピンクは一度ついたら終わりの色ではなく、毎日の食事で保たれている色です。動物園の色あざやかな群れは、餌の工夫の成果でもあります。
抜けた羽はすぐ色を失う
もう一つ意外なのが、抜け落ちた羽の色です。体から離れたフラミンゴの羽は、すぐに色を失うとサンディエゴ動物園は書いています。生きた鳥の羽が色を保てる理由の一つが、次の「お化粧」です。
フラミンゴもお化粧をする?

尾の付け根の脂を羽に塗る
オオフラミンゴは、尾の付け根にある尾脂腺(びしせん)から出る脂を羽に塗り広げています。この脂にもカンタキサンチンがたまっていて、塗るほど羽は赤みを増す仕組みです。研究者はこの行動を、鳥の「化粧」と呼んでいます。
※ 尾脂腺とは、多くの鳥の尾の付け根にある脂を出す器官です。鳥はくちばしでこの脂を羽に塗り、羽を整えています。
化粧がさかんなのは求愛の季節
2021年の研究によると、化粧がさかんなのは求愛のディスプレイをする時期です。地中海の地域では、10月から5月までの長い期間にあたります。ヒナがかえった後は、親鳥が化粧をする回数はぐっと減ります。
赤い個体ほど早く繁殖する
化粧には、ちゃんと見返りがあるようです。赤みの強い個体ほど早く繁殖を始め、つがいの相手としても選ばれやすいと報告されています。2011年の研究では、色の濃い個体ほど化粧の回数が多く、化粧の色素が多いほど色も濃いことが分かりました。
日なたの羽は40日で色あせた

寒波で死んだ30羽の羽で実験
2021年に発表された研究では、2012年2月の寒波で死んだオオフラミンゴ30羽の首の羽が使われました。羽を黒い厚紙に貼り、平らな屋上で40日間続けて日光に当てます。比べるために、暗い場所に置いた羽も用意されました。
赤みが6割近く消えた
40日後、日なたの羽は赤みが57.8%も減っていました。暗い場所の羽の変化は11.4%にとどまります。カロテノイドは日光で分解されやすく、日差しをさえぎるもののない湿地では放っておけば色はあせていくのです。
塗り直しで保たれるピンク
表面の色素が多い羽ほど、色の落ち方は小さく済みました。研究チームは、フラミンゴが化粧をこまめに塗り直して色を保っていると考えています。餌で羽の中に色をため、化粧で表面を補う。ピンクは二段がまえで守られている色です。
片脚で立つのはなぜ?

脚から熱を逃がさないという説
片脚立ちの理由は、まだはっきりとは分かっていません。有力なのは、片方の脚を羽の中にしまうことで脚から逃げる熱を減らすという説です。ただ暑い地域でも片脚で立つため、サンディエゴ動物園は単に楽な姿勢なのかもしれないとも書いています。
筋肉をほとんど使わずに立てる
2017年の研究では、亡くなったフラミンゴの体が筋肉を動かさなくても片脚で安定して立てることが確かめられました。両脚では同じように立たせられなかったといいます。生きたフラミンゴも、休んでいるときほど片脚での体の揺れが小さくなっていました。
灰色のヒナとして生まれ、3年かけて色をため、親になればミルクに色を分け与える。日差しに負けないよう、化粧で塗り直すことまでします。フラミンゴのピンクは生まれ持った色というより、一生をかけて食べて塗って守り続ける色なのかもしれません。
参考
- Flamingo(San Diego Zoo Wildlife Alliance)
- 御意見箱に寄せられた御質問への回答(京都市動物園)
- チリーフラミンゴ(札幌市円山動物園)
- The color of greater flamingo feathers fades when no cosmetics are applied(Ecology and Evolution, 2021)
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