海外のトイレで、「紙を流さないでください」という貼り紙を見て、とまどった経験はないでしょうか。
日本では当たり前に流している紙を、流せない国があります。この違いは、紙そのものと、下水のしくみのちがいから生まれています。
流せる国と流せない国がある理由
ちがいの要点を、先に表で確かめておきましょう。
| 問い | 答え |
|---|---|
| 日本で流せるのは? | 紙が水ですぐにほぐれ、配管も詰まりにくいから |
| 流せない国があるのは? | 配管が細く古い、紙が溶けにくいなどの事情 |
| 流さない国ではどうする? | 個室にあるゴミ箱に捨てる |
| 見分け方は? | 「流さないで」の表示やゴミ箱の有無で判断 |
どこにちがいがあるのか、たどっていきます。

日本のトイレットペーパーは「水に溶ける」
水に入れると、すぐにほぐれる
日本で紙を流せる大きな理由は、トイレットペーパーが水ですぐにほぐれるように作られているからです。日本のトイレットペーパーには、水に入れると短時間でばらばらになる、という品質の決まりがあります。だから配管の途中で固まりにくく、すんなり流れていくのです。

詰まりにくい配管とセットになっている
紙が溶けやすいことに加えて、日本の住宅の排水管は、詰まりにくい太さや角度でつくられています。溶けやすい紙と、流れやすい配管がそろっているため、ふつうに使うぶんには問題が起きにくいのです。この組み合わせが、「紙はそのまま流す」という習慣を支えているのです。
紙を流せない国の事情
配管が細く、古い街が多い
一方で、紙を流せない国には、それぞれ事情があります。歴史の古い街では、下水の配管が細く、紙がつまりやすいことがあります。新しく作りなおすのが難しいぶん、「紙は流さない」やり方が根づいてきたのです。

紙が厚く、下水でも処理しにくい
紙そのものが、日本のものより溶けにくい場合もあります。厚手でじょうぶな紙は、水に入れてもなかなかほぐれません。さらに下水を処理する設備の能力によっては、大量の紙が流れこむと負担になることもあるのです。こうした条件が重なって、「紙は流さない」が選ばれてきました。
紙を流せない国での過ごし方
個室のゴミ箱に捨てるのがマナー
紙を流せない国では、使った紙を便器に流さず、個室にあるゴミ箱に捨てるのがふつうです。ふた付きのゴミ箱が置かれていることが多く、そこに入れるようになっています。慣れないうちはとまどいますが、その土地のやり方に合わせるのがマナーです。

表示やゴミ箱の有無で見分ける
流していいかどうかは、表示やトイレの様子で見分けられます。「Do not flush(流さないで)」のような貼り紙や、便器のそばのゴミ箱は、紙を流さない合図です。迷ったときは無理に流さず、ゴミ箱を使うほうが安全です。
豆知識——同じ「紙」でもティッシュは流せない
日本でも、流してはいけない紙があります。それが、ティッシュペーパーです。
ティッシュは、水にぬれても破れにくいように、湿潤紙力剤(しつじゅんしりょくざい)という薬剤が加えられています。鼻をかんでもふやけない代わりに、水に流すとほぐれず、配管を詰まらせる原因になるのです。同じ紙に見えても、トイレットペーパーとは作りがまるでちがいます。

紙を流せるかどうかは、その国の水まわりの歴史や設備が積み重なった結果なのです。日本で何気なく流している一枚の紙の裏にも、溶ける紙づくりと、行き届いた配管の工夫があります。旅先でトイレに入ったら、紙のゆくえにもその土地の暮らしが映っている——そう思うと、見える景色が少し変わります。


