「バレンタインデー」は国によって何が違う?習慣と贈り物の文化史

文化と価値観の話
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バレンタインデーは2月14日ですが、その中身は国によって驚くほど違います。日本では女性がチョコレートを贈り、3月14日のホワイトデーにお返しをする文化が定着しています。ところが同じ「バレンタインデー」でも、欧米では男女双方が贈り物をするのが基本で、フィンランドでは恋人の日ではなく「友人の日」として広まっているのです。それぞれの文化が、同じ記念日をどう解釈してきたのでしょうか。

国別バレンタインデーの習慣早見表

主な国のバレンタインデーの習慣を比較すると、こんなに違います。

国・地域贈る方向贈り物の定番特徴
日本女性→男性チョコレートホワイトデー(3/14)にお返しあり
アメリカ・イギリス双方向花・カード・キャンディグリーティングカードの送り合いが主流
フィンランド双方向(友人含む)カード・小物「友人の日」として定着。恋人に限らない
韓国女性→男性→男性チョコ/キャンディ3/14はホワイトデー、4/14は「ブラックデー」
フィリピン双方向花・指輪集団結婚式が各地で行われる
ウェールズ双方向木彫りのスプーン「ラブスプーン」という独自の贈り物文化

日本独自の「女性→男性」の流れはどこから来た?

チョコレート会社が作ったとされる「日本式」

日本のバレンタインデーは、1958年頃から製菓会社が「女性がチョコレートを男性に贈る日」としてマーケティングを展開したことが始まりとされています。もともとバレンタインデーはキリスト教の殉教者にちなんだ記念日で、欧米では男女が互いにカードや花を贈り合う習慣でした。

日本ではさらに「本命チョコ(好きな人へ)」と「義理チョコ(職場の同僚など義理で渡す)」という独自の区分けが生まれました。また「友チョコ(友人同士で交換)」「自分チョコ(自分へのご褒美)」と多様化しており、今やチョコレート業界の最大の商機にもなっています。

ホワイトデーは日本と一部アジア圏にしかない

3月14日のホワイトデーは、日本の製菓業界が1980年代に創設した習慣です。欧米にはホワイトデーという概念はなく、韓国・台湾・中国など一部のアジア地域が日本の影響を受けて導入した形です。

韓国ではさらに面白い展開があります。バレンタインデーにチョコをもらえなかった人が4月14日に黒いジャージャー麺(チャジャンミョン)を食べる「ブラックデー」という習慣が生まれており、毎月14日に何かを祝う「14日文化」として定着しているのです。

欧米のバレンタインデーはカードが主役

アメリカでは年間10億枚のカードが動く

アメリカのバレンタインデーでは、グリーティングカードの交換が中心です。アメリカグリーティングカード協会の推計では、毎年バレンタインデーに約10億枚のカードが送られるとされており、クリスマスに次ぐ規模になります。

花束(特に赤いバラ)と箱入りチョコレートも定番の贈り物ですが、チョコレートを渡すのは男性から女性の方向が多く、日本とは逆です。また子供たちが学校でクラス全員にカードを配る習慣もあり、恋愛に限らない「親しみの表現」としての側面が強いのです。

ウェールズの「ラブスプーン」という独自文化

イギリス・ウェールズでは、木製のスプーンを手彫りして恋人に贈る「ラブスプーン(love spoon)」という文化が17世紀ごろから続いています。スプーンには幸運を表す鍵・ハート・鎖などの模様が彫られており、贈る人の手作り感が重視されます。現在でもウェールズの土産物屋では装飾用のラブスプーンが販売されており、バレンタインデーだけでなく結婚祝いや誕生日にも贈られているのです。

豆知識 — バレンタインデーの「聖バレンタイン」は複数いる

「聖バレンタイン」として記録されているキリスト教の殉教者は、実は3人以上いるとされています。その中で最もよく語られるのは、3世紀のローマで兵士の結婚を禁じた皇帝クラウディウス2世に反してひそかに婚礼を行い、処刑されたという人物です。

ただし、この話と「恋人に贈り物をする日」が結びついたのは14世紀の詩人チョーサーの作品がきっかけという説が有力です。「聖バレンタイン」の日に鳥が番(つがい)を選ぶという表現が、恋愛と2月14日を結びつける文化的な起点になったとされています。

チョコレートを贈るかカードを送るか、恋人と祝うか友人と過ごすか——バレンタインデーの形は国の数だけあります。自分の国の習慣が「当たり前」ではなく、どこかの時代に誰かが作ったものだと気づくと、2月14日がちょっと違って見えてくるかもしれません。