フラミンゴといえば、あざやかなピンク色。ところが、あの色は生まれつきのものではありません。産まれたてのヒナは、灰色をしています。
では、あのピンクはどこから来るのでしょうか。答えは「食べたもの」にあります。フラミンゴの体は、毎日の餌の色に、少しずつ染まっていくのです。その意外なしくみを見ていきます。
フラミンゴのピンクの正体

この記事の要点は、たった一つです。「フラミンゴの色は餌でできている」。細かなしくみを、このあと順にほどいていきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生まれたときの色 | 灰色〜白 |
| ピンクの正体 | 餌にふくまれるカロテノイド色素 |
| 色のもと | 藻類・ブラインシュリンプ(小さな甲殻類) |
| 大人の色になるまで | およそ2〜3年 |
| 餌を変えると | 色が抜けて白っぽくなる |
生まれたときは灰色だった

まず意外なのが、生まれたてのフラミンゴの色です。あのピンクとは、ずいぶん印象が違います。
ヒナはグレー
ピンクは生まれつきではない
産まれたばかりのヒナの羽毛は、灰色や白っぽい色をしています。あの鮮やかなピンクは、卵からもらった色ではないのです。親のとなりにいるグレーのヒナを見ても、同じ鳥だとはなかなか気づけません。
2〜3年かけて色づく
ヒナは成長とともに羽が生え替わり、そのたびに少しずつピンクがのっていきます。大人と同じ色になるまでには、およそ2〜3年。フラミンゴのピンクは、時間をかけて「染まって」いく色でした。
赤い「フラミンゴミルク」
親が作る栄養たっぷりのミルク
生まれたばかりのヒナは、親から特別な「ミルク」をもらいます。これは、のどの奥から分泌される赤い液体で、フラミンゴミルクと呼ばれます。おもしろいことに、これはメスだけでなくオスの親も分泌するのです。血のように赤いのは、やはりカロテノイドをふくむため。栄養がぎゅっと濃縮された、色つきの乳でした。子育ての最初から、フラミンゴは色と栄養を一緒に受け取っているわけです。
ピンクの正体は「食べたもの」

では、色の大もとをたどってみましょう。鍵をにぎるのは、餌にふくまれる、ある色素です。
カロテノイドという色素
※ カロテノイドとは、植物や藻類などにふくまれる、赤や黄色のもとになる色素の仲間です。ニンジンのオレンジや、鮭の身の赤みも、この色素によるものです。
藻とエビにふくまれる色
フラミンゴが食べる藻類やブラインシュリンプ(小さな甲殻類)には、カロテノイドが豊富にふくまれています。カンタキサンチンやアスタキサンチンといった色素です。エビやカニをゆでると赤くなるのと、じつは同じ仲間の色でした。
消化して羽と肌にためる
取りこまれた色素は、消化の途中で分解され、体に吸収されていきます。そして皮膚や羽に少しずつ蓄えられ、あのピンクになるのです。つまりフラミンゴは、餌の色を体の外側にためこんでいるわけです。食べた色が、そのまま見た目に出る、めずらしい鳥といえるでしょう。
逆さのくちばしでこして食べる
水ごと吸ってこし取る
食べ方そのものも、なかなか変わっています。くちばしを上下さかさまにして水や泥ごと口に含み、内側にびっしり並んだ細かい毛で、藻や小さな生きものだけをこし取ります。色のもとを効率よく集める、専用のざるのようなくちばしでした。
種類によって色がちがう
淡いフラミンゴ、濃いフラミンゴ
ひとくちにフラミンゴといっても、種類によって色の濃さはさまざまです。よく知られるオオフラミンゴは、比較的あわいピンク。いっぽう、カリブ海にすむベニイロフラミンゴは、濃い赤やオレンジがかった鮮やかな体色をしています。この差もまた、餌にふくまれる色素の量や種類のちがいから生まれているのです。
| 種類 | 色の傾向 |
|---|---|
| オオフラミンゴ | あわいピンク |
| ベニイロフラミンゴ(カリブ海) | 濃い赤〜オレンジ |
| コフラミンゴ | ピンク(藍藻が主食) |
過酷な塩湖で色をもらう
アフリカの塩湖には、コフラミンゴが数十万羽の大群で暮らしています。ほかの生きものには過酷なこの湖で、彼らが主に食べるのは藍藻(スピルリナ)です。強アルカリの厳しい水に育つ藻からも、フラミンゴはしっかりと色を受け取っていました。餌さえあれば、どんな場所でもあのピンクは守られていくのでした。
餌が変わると色が抜ける

色が餌でできているなら、餌が変われば色も変わるはずです。それがよく分かるのが、動物園にいるフラミンゴたちでしょう。
動物園のフラミンゴ
色揚げ用の専用フード
動物園では、野生と同じ藻やエビをそろえるのがむずかしいものです。そこで多くの園では、カロテノイドを加えた専用のフラミンゴフードを与えています。この工夫をやめると、羽の色はだんだんあせて、白っぽくなっていきます。あのピンクは、日々の食事で保たれている色なのでした。
まさに「食べたものでできている」
フラミンゴのピンクは、体そのものが変化したわけではありません。あくまで、食べたものの色が表に出ているだけ。「あなたは食べたものでできている」という言葉が、これほどぴったり当てはまる動物も珍しいでしょう。色が餌の記録になっている、といってもいいくらいです。
色が濃いほどモテる?

同じフラミンゴでも、ピンクの濃さには差があります。この濃淡には、じつは意味があるようです。
色は健康のしるし
よく食べる個体ほど濃くなる
たくさん食べて栄養状態のよい個体ほど、ピンクは濃くなります。逆にいえば、色のあせた個体は、うまく餌をとれていないのかもしれません。フラミンゴにとって色の濃さは、健康ぶりを外から見せる看板のようなものでした。
濃い色は繁殖でも有利
濃いピンクは、異性へのアピールにもなるとされています。健康の証しである色が濃いほど、相手に選ばれやすいという理屈です。ピンクの濃い個体ほど、餌場での争いに積極的だったという研究もあります。あざやかな色は、たくましさの表れでもあったわけです。
豆知識——フラミンゴのふしぎ

色以外にも、フラミンゴには不思議な習性があります。最後に、だれもが一度は気になる「あのポーズ」の話です。
片脚立ちのなぞ
なぜ片脚で立つのか
片脚で立つ理由は、じつはまだはっきり分かっていません。有力なのは、冷たい水に浸かる面積を減らして体温を逃がさないため、という説です。片脚のほうが体を支える筋肉の負担が少ない、という見方もあります。眠るときも片脚のままでいることが多く、よほど楽な姿勢なのでしょう。あの優雅なポーズには、寒さ対策という現実的な事情が隠れているのかもしれません。
フラミンゴのピンクは、生まれ持った色ではなく、食べ続けた色でした。湖畔をうめるあのピンクの群れは、いわば餌の色を映した鏡のような姿です。「食べたものでできている」——この言葉が、これほど似合う鳥もそういません。


