空から降ってくる白いつぶを、私たちはまとめて「雪」と呼びがちです。けれど天気予報では、みぞれ・あられ・ひょうと、いくつもの名前が使い分けられています。どれも似たようなものに見えて、気象の世界ではきちんと区別されているのです。
その境目は、どこにあるのでしょうか。カギをにぎるのは「正体」と「大きさ」です。とくにあられとひょうは、たった数ミリの差で名前が変わります。空から降る氷のちがいを、順に見ていきましょう。
みぞれ・あられ・ひょう 早見表

3つのちがいは、正体と大きさで見分けられます。下の表に要点をまとめました。細かなしくみは、このあと一つずつたどります。
| 名前 | 正体 | 大きさの目安 |
|---|---|---|
| みぞれ | 雨と雪が混ざったもの | 雨と雪の中間 |
| あられ | 小さな氷のつぶ | 直径5mm未満 |
| ひょう | 大きな氷のかたまり | 直径5mm以上 |
みぞれ——雨と雪の「あいだ」

まず、いちばん雪に近いのが「みぞれ」です。これは氷のつぶというより、雨と雪が入りまじった状態を指します。
正体は雨と雪の混合
雪がとけかけて降る
みぞれは、上空で生まれた雪が、地上へ落ちる途中でとけかけたときに現れます。空気が少し暖かいと、雪はぽたぽたと水に変わりはじめるのです。とけきる前に地面へ届くと、雨と雪がまじった「みぞれ」になるわけです。いわば、雪から雨へ移り変わるとちゅうの姿だといえます。
気象の記録では「雪」のあつかい
おもしろいのは、その分類のされ方です。気象観測では、みぞれは「雪」の仲間として記録されます。そのため、その冬はじめてみぞれが降れば、それが「初雪」としてあつかわれます。半分は雨に見えても、記録のうえではれっきとした雪の一種なのでした。
あらわれるのは気温の境目
0度前後のびみょうな寒さで
みぞれが多いのは、気温がちょうど0度あたりをさまようときです。雪になりきるには少し暖かく、雨になるには少し寒い。そんな中途はんぱな寒さの日に、みぞれは顔を出します。春先や初冬に見かけやすいのは、気温がこの境目を行き来しやすい時期だからです。
あられ——直径5mm未満の氷のつぶ

次は「あられ」です。みぞれとちがって、こちらははっきりとした氷のつぶ。パラパラと屋根や地面をたたきます。
2種類あるあられ
※ あられ(霰)とは、雲から降る直径5mm未満の氷のつぶのことです。5mm以上になると「ひょう」と呼び分けられます。
白くもろい「雪あられ」
一つめは「雪あられ」です。雪のつぶのまわりに、こおった水滴が短い時間でくっついてできます。そのため中に空気を含み、白くて不透明。指でつまむと、もろくつぶれます。気象の分類では、この雪あられは「雪」の仲間に入れられています。見た目も、雪に近い白さです。
かたく透きとおる「氷あられ」
もう一つが「氷あられ」です。こちらは水がゆっくりとすき間を埋めながらこおるため、半透明でかたく仕上がります。雪あられとちがい、分類のうえでは「雨」の仲間になります。同じ「あられ」でも、でき方によって中身も分類も変わる。空から降るつぶには、こんな細かい区別があるのです。
降る季節と、その音
おもに冬にやってくる
あられが降りやすいのは、主に冬の寒い時期です。冷たい雲から、小さな氷のつぶがこぼれ落ちてきます。雪といっしょに、あられがまじって降ることもめずらしくありません。しんしんと積もる雪とちがい、あられは地面に当たってころころと転がります。
ひょう——直径5mm以上の氷のかたまり

そして「ひょう」です。あられがそのまま大きくなったもの、と考えるとわかりやすいでしょう。ときに、思わぬ大きさに育ちます。
あられとの境目は「5mm」
ちがいは大きさだけ
あられとひょうは、じつは中身に大きなちがいはありません。分けているのは、ただ一点、その大きさです。直径5mm未満なら「あられ」、5mm以上になれば「ひょう」と呼ばれます。同じしくみでできた氷が、5mmという線を境に名前を変える。数ミリのちがいで呼び名が入れかわるのは、なんだか不思議な決まりです。
ときにゴルフボール大にも
ひょうは、大きく育つと相当な迫力になります。過去には、ゴルフボールほど、まれには握りこぶし大のひょうが降った記録もあります。これだけ大きな氷が空から落ちれば、ただごとではありません。畑の作物をなぎ倒し、車の屋根をへこませ、ときには人がけがをすることもあります。小さなあられとは、うってかわった暴れん坊なのです。
なぜ真夏に氷が降るのか

ひょうには、意外な特徴があります。降りやすいのは、冬ではなく春から初夏。暑い季節に、氷のかたまりが空から落ちてくるのです。なぜ、そんなことが起きるのでしょう。
氷を育てる「積乱雲」
夏でも上空は氷点下
カギをにぎるのは、夏に発達する積乱雲(せきらんうん)です。入道雲とも呼ばれる、あの背の高い雲のことです。地上は暑くても、雲のてっぺんは上空はるか高く、気温は氷点下まで下がっています。つまり夏の空にも、氷ができるほど冷たい世界が広がっているのです。
上昇気流が氷を大きく育てる
積乱雲の中では、強い上昇気流が吹き上げています。生まれたばかりの小さな氷は、この風に持ち上げられては落ち、また持ち上げられます。上下をくり返すうち、まわりの水滴をまといながら、氷は少しずつ層を重ねて太っていくのです。そうして5mmをこえるまで育つと、もう上昇気流も支えきれません。重くなった氷が、ひょうとなって地上へ落ちてくるのです。
豆知識——お菓子の「あられ」も空から来た

ここまで空の氷の話をしてきましたが、「あられ」という言葉には、もう一つ身近な顔があります。お米でできた、あの小さなお菓子です。
名前は空の霰からもらった
小さな形と、はじける音が似ている
米菓のあられは、その名を空から降る「霰(あられ)」からもらったとされています。もち米を焼くと、生地が小さくふくらみ、パチパチとはじけます。その小ぶりな形や、はじける音が、空から降ってくる霰のようすに似ていた。そこから、この呼び名がついたと言われています。菓子と気象、まるで別々に思える二つの「あられ」が、じつは同じ空の氷でつながっていたのです。あられ・おかきの歴史は、こちらの記事でくわしく紹介しています。

みぞれ、あられ、ひょう。同じ空で生まれた氷でも、正体と大きさによって、こうして名前が分かれていきます。とりわけあられとひょうを分けるのは、5mmというごく小さな境目でした。空から白いつぶが降るその日、それを分けているのは、ほんの数ミリという小さな物差しなのでした。

