言葉と論理の話

社会と仕組みの話

「クビ」はどこから来た言い方か——江戸時代は「暇を出す」と言っていた

勤め先をやめさせられることを「クビになる」と言います。打ち首の刑からきた言い方だと説明されることが多い言葉です。ところが辞書で古い用例をたどると、少し違う景色が見えてきます。江戸時代に奉公人をやめさせることは、ふつう「暇(ひま)を出す」と言...
言葉と論理の話

整形外科が勧める「ジグリング」は貧乏ゆすりのこと——「貧乏」の名は寒さで震える姿から来ている

会議中に前の席の人の膝が細かく揺れていると、つい目がいってしまいます。行儀が悪い、落ち着きがない——貧乏ゆすりに向けられる視線は、だいたい冷ややかです。ところがこの動き、整形外科の外来では「ジグリング」という別の名前で呼ばれ、患者さんに勧め...
言葉と論理の話

「セロテープ」と名乗れるのは一社だけ——あの透明なテープは木からできている

机の上に転がっている透明なテープ。その名を「セロテープ」と掲げられるのは、本当はニチバンの製品だけです。「セロテープ」はニチバンが持つ登録商標で、材質と品物そのものを指す一般名は「セロハンテープ」。そしてもう一つ、あの透明なフィルムはプラス...
生きものの話

ゴキブリという名前には、一文字足りない——「御器かぶり」の「カ」が消えた1884年

江戸時代の百科事典を開いても、「ゴキブリ」という虫は載っていません。そこに書かれているのは「御器噛(ごきかぶり)」。いまの呼び名より、一文字だけ長い名前です。この「カ」は、どこへ消えたのか。手がかりは、明治17年に出た一冊の用語辞典に残って...
言葉と論理の話

「あばたもえくぼ」の「あばた」は天然痘のあと——病気は消え、ことわざだけが残った

「あばた」とは、天然痘が治ったあとに顔へ残る小さなくぼみのことです。惚れた相手なら、その痕さえ笑ったときのえくぼのように見える——「あばたもえくぼ」は、そういう言い回しです。意味は誰でも知っています。ところが「あばた」のほうを実際に見たこと...
言葉と論理の話

「蜃気楼」の「蜃」とはどんな生きものか——気を吐いて楼閣を見せる大ハマグリ

「蜃気楼」の「蜃」は、空や天気を表す字ではありません。生きものの名前です。しかも大きなハマグリを指します。海の上に浮かぶ楼閣は、その貝が吐いた息が形になったもの——古代の中国はそう説明していました。三文字のうち、いまの科学に引き継がれたもの...
歴史と変遷の話

「馬鹿」の語源は決着していない——馬も鹿も、音を借りただけの当て字

「馬鹿」という字を分解すると、馬と鹿が並びます。けれど意味の上では、この二頭はどちらも無関係とされています。音を写すために選ばれただけの字だからです。では、その音はどこから来たのでしょうか。ここが厄介なところで、国語辞典の語源欄にはいくつも...
言葉と論理の話

ボクシングの階級名はなぜ鶏や羽根なのか——「バンタム」はジャワ島の港の名前

ボクシングの「バンタム級」のバンタム(bantam)は、小型の鶏を指す英語です。しかもその鶏の名前は、インドネシア・ジャワ島の港町から来ています。日本では井上尚弥選手の活躍でいちばん耳になじんだ階級名かもしれませんが、もとをたどると鶏小屋に...
言葉と論理の話

北海道の地名はなぜ読めないのか——「別」「内」「川」は、もとをたどると同じ一語

「音威子府(おといねっぷ)」「妹背牛(もせうし)」「歌志内(うたしない)」。北海道の地図には、漢字をいくら眺めても読み方の見当がつかない地名が並んでいます。読めない理由ははっきりしていて、これらの漢字が意味をまったく担っていないからです。北...