モノと道具の話

言葉と論理の話

南京錠の「南京」は地名ではなく「舶来」の印——同じ錠に「西洋錠」という別名もある

辞書で「南京錠」を引くと、別名の欄に「西洋錠」という言葉が並んでいます(精選版 日本国語大辞典)。東の都市の名を冠した錠に、まったく反対の方角の別名が付いている。どちらかが間違っていそうに見えますが、じつは二つとも間違っていません。「南京」...
モノと道具の話

安全ピンは15ドルの借金から生まれた——「安全」が指しているのは、使う人の指のこと

安全ピンの「安全」は、留めた服が外れないという意味ではありません。1849年に取られた特許の本文には、布に差し込むときに「指を傷つける危険がない」と書かれています。守られているのは、まず使う人の指のほうでした。しかも、発明した本人はこれを「...
歴史と変遷の話

ライターはマッチより3年早く生まれた——ただし線の引き方しだいで、答えは三度入れ替わる

ライターの原型が世に出たのは1823年、こすって火がつくマッチが売られはじめたのは1827年です。順番でいえば、複雑なほうが先に生まれています。とはいえ、この「3年差」はそれほど固い数字ではありません。マッチをどこから数えるかを一段ずらすだ...
言葉と論理の話

蛇口の水は、はじめライオンの口から出ていた——輸入の獅子が龍に替わり、名前だけ「蛇」で残った

日本で最初に水道の水が出てきた口は、蛇でも龍でもなくライオンでした。1887年(明治20年)に横浜で近代水道が始まったとき、道端に立てられた水栓の吐水口はイギリス製の獅子の頭だったのです。それが国産に切り替わると、獅子は龍に替わりました。そ...
歴史と変遷の話

電球を発明したのはエジソンではない——特許の要は明るさではなく「高い抵抗」、銅を減らすための工夫だった

電球を発明したのはトーマス・エジソンではありません。彼が炭素のフィラメントを光らせたのは1879年ですが、電気で線を白熱させて明かりを取り出す試みはその40年以上前から続いていました。白熱ランプとして世界で最初の特許が下りたのも、1841年...
社会と仕組みの話

道路の白いひし形は、信号のない横断歩道の予告——「50メートルと30メートル」は規定の書き方と違う

道路に白く描かれた大きなひし形は、「この先に横断歩道か自転車横断帯があります」という予告です。運転免許を持つ人なら一度は習っているはずの標示ですが、意味を答えられない人のほうが多いという調査結果が、いくつもの県で報告されました。広く語られて...
社会と仕組みの話

横断歩道の白線は、すきまも同じ45センチ——枠が消えた1992年、そのすきまが倍になった2024年

横断歩道の白線は、線の幅も、線と線のすきまも45センチで揃っています。塗ってある部分と塗っていない部分が同じ寸法なので、あの縞は等間隔に見えるわけです。自動車安全運転センターが2023年度に行った実験では、参加者の3割近くが「白線と間隔が同...
社会と仕組みの話

ホチキスはなぜ左上に留めるのか——書類の左端20ミリは、はじめから空けてある

横書きの書類はホチキスを左上に、縦書きの書類は右上に留めます。考える前に手がそう動く、という人も多いはずです。この位置は、誰かの好みで広まった作法ではありません。紙の側に「ここを留めてほしい」という空白があらかじめ確保されていて、ホチキスは...
モノと道具の話

「セロテープ」と名乗れるのは一社だけ——あの透明なテープは木からできている

机の上に転がっている透明なテープ。その名を「セロテープ」と掲げられるのは、本当はニチバンの製品だけです。「セロテープ」はニチバンが持つ登録商標で、材質と品物そのものを指す一般名は「セロハンテープ」。そしてもう一つ、あの透明なフィルムはプラス...