モノと道具の話

蛇口の水は、はじめライオンの口から出ていた——輸入の獅子が龍に替わり、名前だけ「蛇」で残った

日本で最初に水道の水が出てきた口は、蛇でも龍でもなくライオンでした。1887年(明治20年)に横浜で近代水道が始まったとき、道端に立てられた水栓の吐水口はイギリス製の獅子の頭だったのです。それが国産に切り替わると、獅子は龍に替わりました。そ...
歴史と変遷の話

電球を発明したのはエジソンではない——特許の要は明るさではなく「高い抵抗」、銅を減らすための工夫だった

電球を発明したのはトーマス・エジソンではありません。彼が炭素のフィラメントを光らせたのは1879年ですが、電気で線を白熱させて明かりを取り出す試みはその40年以上前から続いていました。白熱ランプとして世界で最初の特許が下りたのも、1841年...
社会と仕組みの話

道路の白いひし形は、信号のない横断歩道の予告——「50メートルと30メートル」は規定の書き方と違う

道路に白く描かれた大きなひし形は、「この先に横断歩道か自転車横断帯があります」という予告です。運転免許を持つ人なら一度は習っているはずの標示ですが、意味を答えられない人のほうが多いという調査結果が、いくつもの県で報告されました。広く語られて...
社会と仕組みの話

横断歩道の白線は、すきまも同じ45センチ——枠が消えた1992年、そのすきまが倍になった2024年

横断歩道の白線は、線の幅も、線と線のすきまも45センチで揃っています。塗ってある部分と塗っていない部分が同じ寸法なので、あの縞は等間隔に見えるわけです。自動車安全運転センターが2023年度に行った実験では、参加者の3割近くが「白線と間隔が同...
言葉と論理の話

「とんぼ返り」の由来——「退かない」はずの勝ち虫が、なぜ引き返すのか

「とんぼ返り」は、もともと体を一回転させる宙返りのことでした。出張先から日帰りで戻ってくるという今の使い方は、そこから枝分かれした二番目の意味です。名前のとおり、由来は虫のトンボにあります。ただし理由は「速く飛ぶから」ではありません。辞書が...
言葉と論理の話

走馬灯の「馬」はろうそくの熱で走る——死に際に見えるという光景に、この夏の玩具が名前を貸した

走馬灯の「馬」は、ろうそく一本の熱で走っています。二重になった灯籠の内側に、馬に乗った武将の切り絵が貼ってあり、炎の熱でできた上昇気流が羽根車を回す。それだけの仕掛けで、外側の紙に映った影が延々と駆けていきます。一方で「走馬灯のように人生が...
身近な心理と行動の話

デジャブは若いほど多く、年をとるほど減る——起きているのは記憶の失敗ではなく、記憶の点検

初めて入った店なのに、この棚の並びを前にも見た気がする。そう感じたことのある人は、健康な成人のおよそ4人に3人にのぼります。意外なのは、この体験がいちばん多い年代です。記憶があやしくなってくる頃ではなく、10代後半から20代前半あたりに頂点...
からだの話

耳鳴りの「キーン」は、聞こえなくなった帯域を脳が埋めている音——静かな部屋に5分いれば、健康な人にも鳴りだす

耳鳴りの「キーン」は、鼓膜が受け取った音ではありません。外に音源がないのに音の感覚だけが生じる現象で、日本聴覚医学会の『耳鳴診療ガイドライン2019年版』は耳鳴を「明らかな体外音源がないにもかかわらず感じる異常な音感覚」と定義しています。有...
言葉と論理の話

誓いは重くなるほど、偽物が出回った——「指切りげんまん」の「指切り」は、江戸の遊里に実在した作法

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます」。子どもが約束をするときの唱えごとですが、並んでいる言葉はどれも穏やかではありません。指を切る。拳で一万回打つ。針を千本飲ませる。このうち先頭の「指切り」は言葉の綾ではなく、江戸時代の遊里(ゆうり...