北海道の山に「○○富士」が多いのはなぜか — 開拓移民が見た、ふるさとの山

日本の地理と自然
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北海道の地図を眺めると、「蝦夷富士」「利尻富士」のように、富士山の名を借りた山が次々に出てきます。実はこの”○○富士”、静岡県の調査によると北海道だけで16の山にのぼります。なぜ、本物の富士山から遠く離れたこの土地に、富士の名を持つ山がこれほど集まっているのでしょうか。

北海道の郷土富士、答えはこの4つ

先に要点を整理すると、こうなります。

問い 答え
なぜ「富士」の名がつくのか 富士山と同じ円錐形の独立峰だから
なぜ北海道に集中しているのか 開拓移民が故郷の富士山を重ねて呼んだから
北海道には何山あるのか 16山(蝦夷富士・利尻富士・美瑛富士など)
代表的な山は 蝦夷富士(羊蹄山)・利尻富士(利尻山)など

「○○富士」は、富士山に似た形の山への呼び名

富士山が”美しい山の基準”だった

富士山は、独立峰でありながら山頂までなめらかな曲線を描く、左右対称に近い円錐形をしています。古くから和歌や浮世絵にも数多く描かれ、「日本一美しい山」として誰もが知る存在でした。似た形の山を見つけたとき、人々が「あの山はうちの富士山だ」と呼ぶようになったのは、ごく自然な流れだったのかもしれません。

円錐形の独立峰ほど富士になりやすい

「○○富士」と呼ばれる山には、共通する特徴があります。周囲に高い山がなく単独でそびえる独立峰であること、そして山頂に向かってなめらかに傾斜する円錐形のシルエットを持つことです。多くは火山活動によってできた山です。富士山自身も活火山であることを考えると、似た成り立ちの山が似た姿になるのも納得できます。

北海道に集中しているのは、開拓移民の”ふるさと意識”

登山をしている男性のイラスト

開拓者が新天地で見た「ふるさとの山」

明治以降、本州各地から北海道へ移り住んだ開拓者たちは、見慣れない土地で暮らす中、円錐形の山を見つけると、故郷で見ていた富士山の姿を重ね合わせたといわれています。新しい土地に「富士山」を見出すこと。それは、不安の多い開拓生活の中で、心の支えのひとつになったのかもしれません。

火山地形と、浅い開拓の歴史

北海道に郷土富士が多い理由は、開拓の歴史だけではありません。火山活動でできた独立峰の地形がもともと多いことも背景にあります。さらに、本州に比べて開拓の歴史が浅く、地名に移住者の記憶がそのまま残りやすかったことも、富士の名が数多く定着した一因と考えられています。

蝦夷富士・利尻富士だけじゃない、北海道の郷土富士

北海道の郷土富士は、蝦夷富士・利尻富士の他にもいくつもあります。例えば、美瑛富士(美瑛岳・標高1,888m)、知床富士(羅臼岳・標高1,660m)、オホーツク富士(斜里岳・標高1,545m)、増毛富士(暑寒別岳・標高1,491m)など。標高1,000mを超える独立峰の多くに、何らかの「富士」の名がついているといってもよいほどです。

本州・九州にも広がる、もうひとつの郷土富士

開いた日本地図のイラスト

郷土富士は北海道だけのものではありません。標高で見ると、それぞれの個性がよくわかります。

呼び名 本来の山名 標高 所在地
蝦夷富士 羊蹄山 1,898m 北海道
利尻富士 利尻山 1,721m 北海道(利尻島)
津軽富士 岩木山 1,625m 青森県
会津富士 磐梯山 1,816m 福島県
薩摩富士 開聞岳 924m 鹿児島県

利尻富士(利尻山)は、海から一気にそびえる独立峰のため、本物の富士山以上に裾野までの全体像が見えやすく、「日本最北の富士」として登山者にも人気があります。薩摩富士(開聞岳)は標高こそ1,000mに届きませんが、海岸からほぼ垂直にそびえる姿が美しく、地元では「東洋のマッターホルン」と呼ばれることもあります。

北海道の山に富士の名が集まったのは、移住者たちが新しい土地に故郷の風景を見出した結果でした。次に旅先で円錐形の美しい山を見かけたら、その土地の人たちがどんな思いでその山を見ていたのか、想像してみると面白いかもしれません。

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