ぶつかってきた相手が勝手に転んで大怪我、こっちのせい?—正当防衛と自招危難

社会と仕組みの話
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すれ違いざまにわざと肩をぶつけてくる、いわゆる「ぶつかりおじさん」。もし自分が大柄で、ぶつかってきた相手のほうが吹っ飛んで大怪我をしてしまったら——加害者は自分になるのでしょうか。よく話題になる割に答えを知らないこの疑問を、法律の基本的な考え方から整理します。

※ この記事は一般的な法律の考え方を解説するもので、個別の事案の結論を保証するものではありません。実際のトラブルでは状況によって判断が変わり、最終的には警察や弁護士の判断が必要になります。

責任は体格でなく「あなたの落ち度」で決まる

同じ「相手が転んで大怪我」でも、あなたがどう振る舞っていたかで結論はまるで違ってきます。まずは典型的なケースを表に整理しました。

あなたの状況責任の問われやすさ
ただ立っていた・普通に歩いていただけ原則として問われにくい
避けられたのに、あえて体を当てにいった過失や故意を問われる可能性がある
ぶつかられた腹いせに殴り返した・追いかけたこちらが暴行・傷害に問われうる
身を守るためのとっさの最小限の防御正当防衛が認められる余地がある

つまり「体が大きいから不利」ということはありません。鍵を握るのは体格差ではなく、あなたの側に落ち度があったかどうかです。

そもそも「罪に問われる」には何が必要なのか

故意も過失もなければ、原則として罪にならない

人を傷つけてしまった場合でも、罪に問うには「わざと(故意)」か「不注意(過失)」のどちらかが必要だと考えられています。あなたがただ立っていた、または普通に歩いていただけならどうでしょうか。相手が勝手に突進して転んだのであれば、あなたの行為に故意も過失も見いだしにくいといえます。これは極端にいえば、壁にぶつかって自分で転んだ人がいても、壁の持ち主が罪に問われないのと似た構図です。

体格が大きいこと自体は、もちろん「落ち度」ではありません。大柄な人が道に立っているのは何ら違法ではなく、そこへ自分から当たりにきた側の行動が原因と評価されやすいのです。

「自招危難」——自分から招いた危険は自分の責任

法律の世界には「自招危難(じしょうきなん)」という考え方があります。自ら危険を招いておきながら、その結果の責任を他人に押しつけることはできない、という発想です。わざとぶつかってきた人が転んで怪我をした場合、その怪我はまさに自分から招いた結果といえるでしょう。むしろ故意に体を当ててきた側が、暴行罪などに問われうる立場になります。

やりがちだけど危険な「やりすぎ」対応

立っていただけなら問題になりにくい一方で、こちらが何か積極的な行動を加えると、一気に立場が変わりかねません。

腹を立てて殴り返す・追いかける

ぶつかられて頭にきて殴り返したり、逃げる相手を追いかけて捕まえようとしたりすると、今度はこちらの行為が暴行や傷害として評価される危険があります。最初は被害者だったはずが、反撃が行き過ぎて加害者になってしまう——これは実際のトラブルでよく起こる逆転です。

正当防衛は「身を守る最小限」までが原則

急に襲われたときに身を守る行為は「正当防衛」として認められる場合があります。ただし、認められるのは危険を避けるためのやむを得ない範囲とされ、必要以上の反撃は「過剰防衛」として責任を問われることがあります。とっさに身構えて受け止める程度と、倒れた相手をさらに殴るのとでは、評価がまったく異なるわけです。

正当防衛とは、急に迫ってきた不正な攻撃から自分や他人を守るため、やむを得ずに行う反撃のことです。守るのに必要な範囲を超えると「過剰防衛」となり、責任が問われる場合があります。

困った顔の会社員のイラスト

豆知識——「ぶつかり」をめぐる現実

映像が「どちらが当たったか」を分ける

この種のトラブルで決定的になるのが、防犯カメラやスマートフォンの映像です。どちらが先に、どんな角度で当たったのかが映っていれば、「相手が突進してきた」という事実を示す有力な証拠になります。万一巻き込まれたときは、その場で言い合うより、まず映像が残っていそうな場所かどうかを意識するほうが現実的かもしれません。

わざとぶつかる側こそ罪に問われうる

意図的に人へ体をぶつける行為は、たとえ相手が転ばなくても暴行罪にあたると考えられています。「ぶつかりおじさん」は迷惑行為というより、それ自体が立派な加害行為になりうるということです。ぶつかられた側が泣き寝入りする必要はなく、被害として相談できる対象だと知っておくと、いざというとき落ち着いて動けます。

「大きい自分が悪いのでは」と不安になりがちですが、法律はそう単純に体格で線を引きません。大事なのは、自分から手を出さず、やりすぎないこと。そのうえで映像などの記録を頼りに、冷静に被害を主張できるかどうかです。理不尽にぶつかられたときこそ、慌てて反撃しない判断が、自分を守る最大の盾になります。