東京の「03」は、市外局番が2桁ではありません。先頭の「0」は市外局番の一部ではなく、これから国内へつなぐという合図。東京の市外局番は、たったの1桁です。
では、その1桁はどうやって選ばれたのでしょうか。地図の上での位置と、その土地にどれだけ電話があるか。市外局番はこの二つで組み立てられています。
市外局番と市内局番の桁数の組み合わせ

市外局番の桁数は地域によってばらばらですが、動かない数字がひとつあります。市外局番と市内局番を足した桁数は、日本中どこでも5桁。境目の位置だけが土地によってずれていきます。
| 市外局番 | 市内局番 | 実際の例 | どんな土地か |
|---|---|---|---|
| 1桁 | 4桁 | 東京=3/大阪=6 | 電話がとびぬけて多い |
| 2桁 | 3桁 | 横浜=45/京都=75/神戸=78 | 大きな都市 |
| 3桁 | 2桁 | 旭川=166/松本=263/鳥取=857 | 地方の中心都市 |
| 4桁 | 1桁 | 伊豆大島=4992 | 加入者の少ない地域 |
表の数字には、先頭の「0」が入っていません。総務省の数え方では0は市外局番の外にあり、そのぶん見慣れた表記とは1桁ずれます。実際の電話番号は、この5桁に加入者番号の4桁と先頭の0を足した10桁。
市外局番の一桁目は何を表しているのか

一桁目が担っているのは、おおまかな位置の表示です。総務省の説明はこうなっています。市外局番の1桁目は、北から南へいくにつれて数字が大きくなる。日本列島を縦に切り、上から順に数字を配ったわけです。
北から南へ、1から9まで
「01」は北海道と北東北。数字が増えるほど南へ下り、「09」で九州と沖縄にたどり着きます。おおよその割り当ては次のとおりです。
| 上2桁 | おおよその地域 |
|---|---|
| 01 | 北海道、青森・秋田・岩手 |
| 02 | 宮城・山形・福島、北関東、新潟・長野 |
| 03 | 東京23区とその周辺(東京MA) |
| 04 | 埼玉・千葉・神奈川と東京の多摩地域 |
| 05 | 静岡・愛知・岐阜・三重、山梨 |
| 06 | 大阪市とその周辺(大阪MA) |
| 07 | 北陸と近畿 |
| 08 | 中国・四国 |
| 09 | 九州・沖縄 |
東京が「3」なのは並び順の結果
北から数えて、北海道と北東北で1、南東北から信越までで2。三つ目の枠が東京に回ってきました。東京の「3」に深い意味はなく、上から順に配った札が3枚目だっただけです。
「01」と「09」に挟まれた縦の並び
この並びは、知らない番号を見たときの見当をつけるのに使えます。「0857」なら、頭が8なので中国・四国のどこか。鳥取市の局番です。逆に「0155」で始まれば北海道と分かります。帯広の番号です。
都道府県の境目とは一致しない
ただし、局番の区切りは行政の区切りと同じではありません。電話をつなぐ都合で引かれた線なので、県境をまたぐ場所がいくつもあります。
「06」に兵庫県尼崎市が入っている
大阪の06は、大阪市・吹田市・守口市に加えて、兵庫県尼崎市の全域を含みます。豊中市の大半や、池田市・東大阪市・八尾市などの一部も06です。府県をまたいだ一つのかたまりとして扱われています。
「03」は東京23区だけではない
東京の03も、23区でぴたりと切れているわけではありません。狛江市のほぼ全域、調布市や三鷹市の一部も03の区域に入ります。逆に、同じ東京都でも八王子市や立川市は042で、23区とは別の区域です。
番号が写しているのは地図ではなく交換機
境目がずれるのには理由があります。総務省の説明では、市外局番は地域を示し、市内局番はその地域にある「営業所内の電話交換機」を示します。番号は行政区画ではなく、電話線がどこに集まっているかを写した図なのです。
引っ越しで番号が変わる家と変わらない家
引っ越し先の電話線が前と同じ営業所につながっていれば、番号はそのまま使える可能性があります。違う営業所に移れば番号は変わる。同じ市内の引っ越しでも結果が分かれるのは、そのためです。
なぜ東京と大阪の局番はこんなに短いのか

短さの理由は、格の高さではありません。用意しなければならない番号の数です。市外局番を短くしたぶん、市内局番を長くできる。長い市内局番は、それだけ多くの電話をぶら下げられます。
市内局番ひとつにつき1万本
加入者番号は全国どこでも4桁と決まっています。0000から9999まで、市内局番ひとつが抱えられるのは1万本。この上限が、番号設計の出発点になっています。
桁がひとつ増えれば番号は約10倍
市内局番が3桁なら、単純に数えて組み合わせは1000通り。4桁になれば、その約10倍まで増えます。実際には先頭に使えない数字などの制約があるため丸ごとは使えませんが、桁がひとつ動くだけで抱えられる番号が一桁変わる点は変わりません。東京や大阪のように電話が集中する土地では、市内局番を最大の4桁まで伸ばす必要がありました。
合計5桁という上限が両端を決める
合計が5桁で固定されている以上、市内局番を4桁にすると市外局番には1桁しか残りません。伊豆大島の04992はその反対側で、市内局番が1桁しかない代わりに市外局番が4桁まで伸びています。どちらも同じ制約の裏表です。
東京と大阪は上2桁の枠を丸ごと使っている
1桁の市外局番を持つということは、その数字で始まる番号の空間をひとりで抱えるということでもあります。東京と大阪は、上2桁の「03」「06」をほぼ占有しています。
「030」と「060」を除いた枠が渡されている
031から039まで、061から069まで。これらはすべて東京MA・大阪MAのものとされます。抜けているのは末尾が0の「030」と「060」だけ。総務省は、この「0△△0」という形を、着信課金の0120のように電話会社共通の特別なサービスへ使う型として説明しています。
ただし、この形がすべて特別なサービス用というわけでもありません。静岡県御殿場市の0550のように、0△△0型でありながら市外局番として使われている番号も残っています。
2桁は横浜・京都・神戸、3桁は地方の中心都市
1桁の下には2桁の都市が並びます。横浜の45、京都の75、神戸の78。いずれも市内局番は3桁で、東京・大阪より一段小さい番号空間を持っています。
「045」と「075」に見える序列
旭川の0166・松本の0263・宮崎の0985はいずれも3桁で、市内局番は2桁です。抱えられる番号は横浜や京都よりさらに少なくなります。局番の桁数は、その土地に何本の電話が要ると見積もられたかを、そのまま写した数字でもあるわけです。
番号が足りなくなった土地はどうしたのか

電話は増え続けました。用意した番号が尽きれば、番号の形そのものを組み替えるしかありません。総務省は、そのやり方を二つに整理しています。
桁ずれと桁増、二つのやり方
市外局番と市内局番の境目をずらすのが「桁ずれ」。番号の長さそのものを伸ばすのが「桁増」です。前者は合計5桁を保ったまま境目だけ動かし、後者は電話番号の桁数を増やします。
和歌山は境目をひとつ左へずらした
平成11年(1999年)9月11日、和歌山では「0734-△△-××××」が「073-4△△-××××」になりました。数字の並びは変わっていません。区切りの位置だけが左へ動き、市外局番が3桁に、市内局番が3桁になっています。
大阪は市内局番を一斉に4桁へ伸ばした
同じ年の1月1日、大阪府と兵庫県の06地域では「06-△△△」が「06-6△△△」になりました。頭に6を足しただけの単純な操作ですが、これで市内局番の数は約10倍になっています。電話番号は9桁から10桁へ。
東京の「3」が足された日
大阪より8年早く、同じことが東京でも起きています。1991年(平成3年)1月1日、東京23区の03地域では市内局番の先頭に「3」が付けられ、番号が10桁になったとされます。
「03-3」で始まる番号が多い理由
いま東京の番号に「03-3」で始まるものが目立つのは、この一斉変更の名残です。それ以前から5で始まる10桁の番号もあり、6で始まる市内局番が使われるようになったのは2000年代に入ってからだといわれます。局番の頭の数字は、その回線がいつ生まれたかをうっすら示しています。
番号変更は2007年で止まっている
2007年(平成19年)2月25日、神奈川県の箱根町区域(0460)が10桁になりました。これで9桁の電話番号は消え、固定電話の番号は10桁にそろいます。逼迫を理由とする番号変更は、以後行われていません。
携帯と050が受け皿になった
止まった理由は、需要が固定電話の外へ流れたからです。携帯電話とPHS、050で始まるIP電話への置き換え。番号ポータビリティによる二重番号の解消や、都市部でのポケベル番号の再利用も効きました。固定電話そのものの減少も重なっています。
市外局番はいくつあり、どこまで揃っているのか

総務省は市外局番の一覧を告示として公開しています。そこに並ぶのは、日本語で読むと妙なことになる例外の数々です。
1桁の市外局番は三つある
1桁の市外局番は東京の3と大阪の6、そしてもうひとつ「4」があります。ただし4は、東京や大阪のような大都市枠として与えられたものではありません。
「04」は柏・鴨川・所沢が使っている
市外局番04は、千葉県の柏市(変更前は0471)や鴨川市、埼玉県の所沢市(同0429)などで使われています。番号が足りなくなった地域が桁ずれで流れ込んだ結果で、上2桁の04を一つの区域が占有しているわけではありません。同じ04どうしでも区域が違えば市内料金は適用されず、電話をかけるには市外局番が要ります。
天気予報の177には古い局番が要る
この事情は、天気予報の177を回すときに顔を出します。04は複数の地域で使われているため、どこの天気か決まりません。柏地区なら0471、鴨川地区なら0470、所沢地区なら0429を先に回してから177をダイヤルする必要があります。古い局番が、案内番号のなかで生き延びているわけです。
同じ局番でも区域が違うことがある
市外局番と料金の区域は、原則として一致します。ただし例外があり、鹿児島県の0997はそのひとつです。
鹿児島0997は五つの島の区域が共有
0997は種子島・屋久島・名瀬・瀬戸内・徳之島の五つの区域で共有されています。区分けは市内局番の帯で、種子島が20〜39、屋久島が40〜49というように振り分けられている形です。同じ0997どうしでも、島が違えば市外局番からダイヤルすることになります。
局番が違っても同じ区域のことがある
逆の例もあるのです。神奈川県の小田原の区域は、0465と0460という二つの市外局番を抱えています。
小田原0465と箱根0460
0465は小田原市や南足柄市など、0460は箱根町などです。局番が違うので相手にかけるときは市外局番が要りますが、同じ区域なので市内料金で話せます。藤沢市の0466と鎌倉・茅ヶ崎の0467も同じ関係にある組み合わせです。
市外局番はいまも変わることがあるのか

逼迫による変更は止まりました。ただし、番号が動く理由はもうひとつ残っています。市町村の側が動いたときです。
合併に合わせて局番をそろえてきた
市外局番が同じ区域では、市外局番を省いて市内局番からダイヤルできます。ところが合併で市域が広がると、同じ市のなかに複数の市外局番が並ぶことになる。地域からの要望を受けて統一する場合がある、と総務省は説明しています。
豊田市は三つの局番を0565に統一した
愛知県豊田市は2005年4月1日に周辺町村と合併し、同じ市内に0565・0564・0536という三つの市外局番が並ぶ状態になりました。統一されたのは2007年です。市の境界より、電話がつながる区域のほうが動きにくいことがよく分かります。
沖縄は復帰のときに空き番号を受け取った
番号が新しく必要になった例もあります。1972年の沖縄の日本復帰です。九州・沖縄に割り当てられた09のうち、どこを使うかが問題になりました。
宮崎で余っていた「098」の枠を使った
選ばれたのは、すでに宮崎県で使われていた「098」のうち、当時空いていた数字でした。沖縄本島から県外へ市外局番で直接かけられるようになったのは1972年10月から。1983年には名護市以北が0980に、1990年には那覇市を含む中南部が098に統一されています。
桁がそろい終わったのは2000年代
いまでこそ固定電話の番号は10桁で統一されていますが、そこへたどり着いたのは意外に最近のことです。長いあいだ、形の違う番号が残っていました。
市内局番のない町が2006年まであった
市外局番が6桁で、市内局番を持たない地域がかつて存在しました。最後まで残ったのは北海道の滝上町(たきのうえちょう)です。2006年3月1日に紋別市と市外局番をそろえ、同町にも初めて市内局番が付きました。
9桁の番号が消えたのは2007年
その翌年、9桁の電話番号も箱根町区域を最後に姿を消します。北海道の町に市内局番が付き、箱根の番号が1桁伸びて、ようやく全国の固定電話が同じ形になった。番号の統一は、平成に入ってからの作業だったわけです。
市外局番が料金を決めていた時代

市外局番には、地域を示すほかにもうひとつ役目がありました。通話料金を決めることです。この役目は、つい最近まで生きていました。
2024年に距離別の料金が終わった
かつては相手が遠いほど通話料が上がりました。市外局番は、その距離を測るための座標でもあったのです。
全国一律9.35円という一行
2024年1月、NTT東日本とNTT西日本は固定電話をIP網へ移しました。時間帯・距離段階別だった料金は、全国一律・全時間帯同一へ。固定電話からの通話は3分あたり9.35円になっています。東京から札幌でも、隣町でも同じ額です。
基本料金には区域の等級が残る
距離による差は消えましたが、区域そのものが消えたわけではありません。月々の基本料金には、いまも区域の規模が反映されています。
加入者5万と40万で三段階
NTT東日本・西日本の基本料金は、区域内の加入者総数によって三つの等級に分かれます。5万未満が1級、5万から40万未満が2級、40万以上が3級。市内で話せる相手が多い区域ほど基本料金が高い仕組みです。
携帯とIP電話には土地がない
いま多くの人が使っている番号には、そもそも市外局番がありません。持ち歩く電話に土地を割り当てても意味がないからです。
070・080・090と050
携帯電話とPHSは070・080・090で始まる11桁、IP電話の多くは050で始まります。どちらも地域とは結びつきません。市外局番から相手の土地が読めるという性質は、固定電話だけに残った古い作法になりつつあります。
「03」の短さは、東京が偉いから与えられたものではありません。1960年代の東京に電話が多すぎて、番号を長く取らなければ足りなかった。その結果として、頭の桁が削られただけです。つまり短い市外局番は地位の順位表ではなく、その土地がどれだけ混んでいたかを刻んだ目盛りでした。
距離で料金を測る役目は2024年に終わり、番号から土地を読む場面も減っています。名刺の隅の「03」に残っているのは、六十年前の混雑の記録です。
参考
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