信用金庫とは何か、銀行とどこが違う?

銀行の建物のイラストと「信用金庫 銀行と何が違う?」の文字 社会と仕組みの話
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駅前に並ぶ「◯◯銀行」と「◯◯信用金庫」。どちらでも口座を作れて、ATMも同じように使えます。違いは持ち主にあり、銀行は株主のいる株式会社、信用金庫は地域の会員が出資してつくる非営利の協同組織です。預金は誰でもできる一方で、お金を借りられるのは原則として会員に限られます。

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信用金庫とはどんな金融機関?

人でにぎわう商店街のイラスト

地域の人と会社が出資してつくる協同組織

信用金庫は、1951年に施行された信用金庫法にもとづく金融機関です。法律は冒頭で目的を「国民大衆のために金融の円滑を図り」と書き、協同組織による制度だと定めています。もうけを出資者に配ることより、地域の中小企業や住民にお金を回すことが本来の役目という位置づけです。

全国に254金庫・預金は約160兆円

全国信用金庫協会によると、信用金庫は47都道府県すべてにあって数は254。職員は約10万人を数えます。信金中金の研究所の速報では、2026年3月末の預金残高の合計は161.8兆円でした。一つひとつは小さくても、束ねるとかなりの規模になる業界です。

持ち主は株主か会員か

壇上に役員が並ぶ株主総会のイラスト

銀行は株式会社でなければならない

銀行法は、銀行を取締役会などを置いた「株式会社」に限っています。株を買った人が持ち主になり、利益は配当として株主に返る仕組みです。全国信用金庫協会の比較表も、銀行を営利法人とし「株主の利益が優先されます」と説明しています。

信用金庫の持ち主は会員

信用金庫には株主がいません。かわりに、出資金を払って会員になった人や会社が持ち主にあたります。信用金庫法の決まりでは、1人の会員が持てる出資は全体の10%まで。会員1人の出資の下限は法律で5,000円を下回れないとされ、実際の額は各金庫が定款で決めています。

議決権は出資額によらず1人1票

株式会社では、株を多く持つほど株主総会での発言力が増します。信用金庫法は「会員は、各一個の議決権を有する」と定めており、出資が多くても少なくても1票です。会員が多いため、実際には会員の中から選ばれた総代が集まる総代会で、決算や役員を決めるのが一般的です。

預金は会員でなくてもできる?

預金通帳とキャッシュカードのイラスト

預ける側に会員の縛りはない

普通預金や定期預金は、会員でなくても作れます。全国信用金庫協会の比較表でも、信用金庫の預金は銀行と同じく「制限なし」の扱い。給与の振込口座や公共料金の引き落としも、出資をしていない「お客さん」のままで使える仕組みです。

預金保険の守りも銀行と同じ

預金保険法は、守る対象の「金融機関」に銀行と並べて信用金庫を挙げています。金融機関が破綻しても、利息のつかない決済用預金は全額、それ以外は1人1金融機関あたり元本1,000万円とその利息までが保護されます。小さな金庫だから預金が危ない、という仕組みにはなっていません。

お金を借りられるのは誰?

銀行員が会社の人に融資するイラスト

融資の相手は原則として会員

信用金庫法は、信用金庫ができる仕事として「会員に対する資金の貸付け」を挙げています。事業資金や住宅ローンを借りるときは、まず出資して会員になるのが基本の流れ。預金は誰からでも受け入れ、集めたお金を会員である地元の事業者や住民に貸す形です。

会員以外への貸出は全体の2割まで

例外として、会員以外にも貸せる場合があります。預金を担保にした貸付や地方公共団体への貸付などで、種類は政令(信用金庫法施行令第8条)が並べています。ただし、その合計は貸出全体の20%を超えてはいけません。銀行にはこうした相手の制限がないので、ここが両者のいちばん大きな差といえます。

会員になれるのは地区に縁のある人

会員の資格も法律で決まっています。その金庫の地区に住んでいる人、地区に事業所がある人、地区で働いている人などです。住まいは隣町でも、職場が地区内にあれば会員になれます。

大きくなった会社は会員を「卒業」する

卒業証書と筒のイラスト

従業員300人超かつ資本金9億円超で外れる

信用金庫は中小企業のための金融機関なので、大企業は会員になれません。法人なら、常時使う従業員が300人を超え、しかも資本金が9億円を超えると資格を失います。9億円という数字は法律の本文ではなく、政令の側で決めている金額です。

卒業した会社にもしばらくは貸せる

地元の信用金庫と二人三脚で育った会社が、大きくなった途端に借りられなくなっては困ります。そこで施行令は、こうした会社を「卒業会員」と呼び、決められた期間内なら貸付を続けてよいとしています。業界ではこれを「卒業生金融」と呼び、信用組合にはない仕組みです。

営業の範囲は定款で決めた地区

段ボールに荷物を詰める引っ越し準備のイラスト

地区の外では会員を集めない

それぞれの信用金庫は、営業する地区を定款(団体の基本ルール)で決めています。会員の資格がこの地区に結びついているため、遠く離れた土地で融資先を探すことはできません。地元で集めたお金を地元に貸すという循環が、制度の形そのものに組み込まれています。

引っ越すと会員でなくなることも

瀬戸信用金庫の「出資金についてのご説明」には、住まいも勤め先も地区の外に移ると会員の資格を失い、法定脱退になると書かれています。本人が望まなくても自動的に抜けるという意味。転勤や引っ越しのあとで、出資金の払い戻しの知らせが届くことがあるのはこのためです。

地方銀行も地元密着だが株式会社

地元に根ざしている点では、地方銀行も変わりません。ただ地方銀行は銀行法の銀行で、組織は株式会社です。株主は全国どこにいてもよく、貸す相手にも地区や会員の縛りはありません。地元を大事にするかどうかは経営の方針で、信用金庫のように法律が決めているわけではないのです。

出資金は預金とどう違う?

窓口で職員に相談する人のイラスト

出資金は預金保険の対象外

会員になるために払う出資金は、預金ではありません。瀬戸信用金庫の説明書きも「預金保険法による保護の対象外」と明記しています。もっとも信用金庫法は、会員の責任は出資額が限度と定めています。万一のときに失うおそれがあるのは出資した分までで、それ以上の負担を求められることはありません。

配当は毎年同じとは限らない

利益が出た年には、出資額や利用の度合いに応じて配当が出ます。信用金庫法が、この二通りの配り方を認めているためです。配当率は決算をもとに総代会が決めるので、年によって変わります。

払い戻しには1年以上かかることも

出資金は、思い立った日にすぐ引き出せるお金でもありません。瀬戸信用金庫の場合、金庫に引き取りを頼むと、請求から6か月を過ぎたあとに来る事業年度末に払い戻されます。最長で約1年6か月かかることがあると、説明書きにはっきり書かれています。

信用組合とはどこが違う?

小さな会社の建物のイラスト

根拠になる法律が別

名前が似ている信用組合も、組合員が出資する非営利の協同組織です。ただ根拠になる法律が違い、信用組合は中小企業等協同組合法などに、信用金庫は信用金庫法にもとづいています。目的も、信用組合は組合員どうしの助け合いをより前に出しています。

銀行・信用金庫・信用組合を並べると

全国信用金庫協会の比較表をもとに、三つを同じ項目で並べました。自分の口座がある金融機関の列を、上から順に追ってみると違いがつかみやすくなります。

項目銀行信用金庫信用組合
根拠の法律銀行法信用金庫法中小企業等協同組合法など
組織株式会社(営利)会員の協同組織(非営利)組合員の協同組織(非営利)
事業者の加入条件なし従業員300人以下または資本金9億円以下従業員300人以下または資本金3億円以下(業種で異なる)
預金制限なし制限なし原則組合員。組合員以外は総預金の20%まで
貸出制限なし原則会員。卒業生金融あり原則組合員。卒業生金融なし

信用金庫は、預金の面では銀行に近く、貸出の面では信用組合に近い。表を縦に見ると、ちょうど両者の中間に立つ金融機関だと分かります。

信用組合は預金にも組合員の縛り

いちばん目立つ差は預金の扱いでしょう。信用組合は預金も原則として組合員から受け入れ、組合員以外の預金は総預金の20%までに抑えられています。信用金庫が誰からでも預金を集められるのとは対照的です。

「金庫」の名は国の金融機関にならった

ダイヤル式の金庫のイラスト

始まりは1900年の産業組合法

信用金庫の源流は、1900年(明治33年)の産業組合法で生まれた信用組合です。1917年には都市部向けの市街地信用組合ができ、1943年には単独の市街地信用組合法も作られました。ところが1949年の中小企業等協同組合法で、会員以外の預金を扱えないなどの制約が再び強まります。

「信用銀行」「庶民銀行」案は見送られた

中小企業や勤労者のための金融機関を求める声が高まり、1951年に信用金庫法ができました。全国信用金庫協会の「信用金庫の生い立ち」によると、名前を決める段階では「信用銀行」「庶民銀行」といった案も出ています。結局「銀行」は使わないことになり、当時の政府系の「庶民金庫」「恩給金庫」「復興金融金庫」にならって「金庫」が選ばれました。

「銀行」も「金庫」も勝手に名乗れない

銀行法は、銀行でない者が名前に銀行を示す文字を使うことを禁じています。信用金庫法にも似た決まりがあり、ほかの法律で認められた機関を除き、お金を貸す業者は「金庫」を名乗れません。看板の二文字は飾りではなく、どの法律に従う組織かを示す目印です。

6月15日は信用金庫の日

信用金庫法が公布・施行されたのは1951年6月15日です。翌1952年6月20日、東京・神田の共立講堂で開かれた第1回全国信用金庫大会で、この日を「信用金庫の日」とすることが宣言されました。法律の誕生日が、そのまま業界の記念日になったわけです。

通帳やATMは同じに見えても、看板の「銀行」と「金庫」は誰のための組織かという設計図の違いを背負っています。預けるだけならどちらでも変わりはなく、借りる段になって初めて会員かどうかが意味を持つ。財布の中のキャッシュカードに書かれた名前は、そのどちらでしょうか。

参考

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